アルバム『IN LOVE』インタビュー
FUKIが語る、デビューからの成長と変化「迷っている人たちに対して歌を通して答えをあげたい」
2015年のデビュー以来、あらゆるシチュエーションで芽生える想いを、繊細に掬い取るリアルなラブソングで共感を集めてきたFUKI。昨年8月には自らの人生観と向き合ったライフソングを詰め込んだアルバム『LIFE DIARY』を作り上げ、「LOVE=LIFE」であるという答えを導き出したことで表現の幅を大きく進化させた。
そんな歩みを経て、今回リリースされた3枚目のオリジナルフルアルバム『IN LOVE』では、愛する相手への感謝の思いを軸に、人生を彩る様々な愛の形をこれまで以上に深みのあるラブソングとして表現し尽くすことに成功している。先行配信されていた「星が降る夜」「大切なひと」「あと少しだけ」をはじめ、クリス・ハートのカバー「I LOVE YOU」、傳田真央から提供を受けた「サヨナラ、あいしてる。」など多彩な魅力を放つ10曲に加え、AbemaTVで放送中の恋愛リアリティーショー『私の年下王子さま Winter Lovers』テーマ曲や挿入歌として話題を呼んでいる初期楽曲「キミじゃなきゃ」「ホンモノの恋、はじめませんか?」らのリマスター音源もボーナストラックとして収録された本作は、愛を歌い続けるFUKIの“これまで”と“ここから”を新旧ファンへと鮮烈にアピールすることになるはずだ。
その仕上がりに大きな手ごたえを感じているFUKI本人に、制作にまつわる話をじっくりと聞いた。(もりひでゆき)
ラブソングを歌い続けてきたすべてが詰め込まれている
ーーFUKIさんにとって3枚目となるフィジカルアルバム『IN LOVE』が完成しました。今回の制作はいかがでしたか?
FUKI:2ndアルバム(『LIFE DIARY』)のときは時間的な部分でけっこうドタバタしたんですけど、今回は順調にじっくりと制作できたと思います。歌に関して気に入らないところがあればもう一度録り直せる時間もありましたし。いつも以上に入念に作ることができましたね。
ーー仕上がったものに関して、率直にどんな感想を抱いていますか?
FUKI:いいアルバムになったなって思います。今回は全曲がラブソングになっているので、1stアルバムの『LOVE DIARY』に近い雰囲気はあるんですよ。ただ、2枚目の『LIFE DIARY』を経たことで、そこに“ライフ”という要素をしっかりプラスできたかなとは思っていて。ライフソングとラブソングをちゃんとドッキングさせることができたというか。
ーーどの曲でも人生の中で不可欠な愛というテーマが深みをもって表現されている印象がありますよね。薄っぺらいインスタントなラブソングじゃない。
FUKI:「好き」という一言では表すことができない、心の裏側の気持ちまで書けるようになったというか。歌い方も含め、そういう深みみたいなものを感じてもらえるんじゃないかなと思います。
ーーそういった表現の変化は意識せずとも楽曲に落とし込むことができましたか?
FUKI:いや、そこはやっぱり意識したとは思いますね。普通に書いていくと率直なラブソングになることが多くて。もちろんそれはそれでいいんだけど、『LIFE DIARY』を経て気づいた部分を意識的に盛り込んでいけば、より広がりのあるラブソングになっていきますからね。そこは結構考えました。だから今回は作詞にすごく時間がかかったんです。特に「あと少しだけ」や「In Love」は、何百冊とある歌詞ノートを見返しながら、何日も何日も頭を悩ませて書きましたね。
ーー何百冊の歌詞ノートってすごいですね。歌詞は日々、メモしている感じですか。
FUKI:そうそう。日記みたいに書いてる日もあるし、そのときに思ったことを殴り書きしてる日もあったり、書き方は全然バラバラ。暴言がずらーっと書いてあったりもするから絶対他人には見せられないんですけど(笑)。その中から「これは使えそうだな」っていうフレーズを引っ張ってきて、そこに今の自分の感情を乗せて歌詞にしていく感じですね、基本的には。
ーー本作には様々なタイプのラブソングが収録されていますが、アルバム全体を通して何かメッセージしたいこともありました?
FUKI:LOVE=LIFEなんだよってことはもちろんなんですけど、そこに加えて「ありがとう」っていう気持ちの大切さは表したかったかもしれないですね。相手やシチュエーションによって「一緒にいてくれてありがとう」「今までありがとう」「生まれてきてくれてありがとう」みたいにいろんな形はあるけど、家族や友達、恋人という大切な人に対しての感謝は忘れちゃいけないなって思うんです。それが私にとってのLOVEってことでもあるので、そういう感情をアルバムから受け取ってもらえたらいいなっていう想いはありました。
ーー感謝あってこそのラブ、感謝あってこそのライフであると。
FUKI:そうそう。私の場合、「好き」という感情の前にはまず「感謝」があると思っているので。そういう考え方は昔からあまり変わってはいないんですけど、それを今回はより純粋に曲に落とし込めたような気はしますね。
ーー楽曲のほとんどはこれまで同様、プロデューサーでもあるEIGOさんとの共同作業で作られていますね。
FUKI:はい。今回は私が歌詞を先に渡して、そこにメロディをつけてもらった曲が多かったかもしれないですね。全体としてのバランスを考えながら、「次は別れの曲を書いてみようか」みたいな相談をしながら制作を進めていって。必要なピースをひとつひとつ集めていく感じでした。
ーー曲のテーマに加え、トラックの方向性に関してもFUKIさんの意見やアイデアが大きく反映されているんですか?
FUKI:そうですね。「この曲はバンドサウンドにしよう」とか「この曲はBruno Marsの『Versace On The Floor』っぽい雰囲気にしよう」みたいなことはEIGOさんと一緒に話しながら決めていきましたね。結果、本当にバリエーションに富んだラインナップになったし、デビューからラブソングを歌い続けてきた私が表現できる今のすべてが詰め込まれているので、日常の中のいろんなシチュエーションで聴いてもらえる作品になったと思っております(笑)。
ーーアルバムを聴かせていただいて感じたのは、聴き手ごとにいろんな受け取り方ができる曲が多いなということで。例えば「星が降る夜」は片想いソングではあるけど、付き合っているときに抱く感情のようでもあって。
FUKI:片想いの曲として書いてはいるんですけど、それに限らず、違ったシチュエーションに当てはめても聴いてもらえるようにはなっていますからね。そういう歌詞にしようっていう意識はないんですけど、広がりを持って受け止めていただけるのはすごく嬉しいです。
ーー「あと少しだけ」なんかも、別れの歌だけど悲しさだけに包まれている感じではないから違った聴き方もできますし。
FUKI:あ、そこに関しては意識しました。「あと少しだけ」は別れという部分にフォーカスして作ったわけではなくて、好きだった人に対して「ありがとう」と思える気持ちを歌いたかったんです。だから単純に悲しいだけの歌にはしたくなかったというか。今誰かと付き合っている方は、この曲を聴いて相手のことを、より大切にしようって思ってもらえるとも思うので、いろんな共感の仕方があるんじゃないかな。
ーーFUKIさんの楽曲は、なかなか言葉にできない感情を繊細にすくいとってくれるものも多いですよね。説明できない感情を明確な言葉で代弁してくれているというか。だからこそ聴き手が「そうそう、これこれ!」って強い共感を覚えるんでしょうね。
FUKI:言い方が合っているかわからないですけど、私は迷っている人たちに対して、歌を通して答えをあげたいなっていつも思ってるんですよ。「あ、自分が思ってたことはこういうことだったんだな」みたいに共感してもらえる曲を作りたいっていう。だから自然とそういう書き方をしているのかもしれないです。しかも、どの曲も私の実体験がベースになっているので、みなさんが私の曲に共感してくださっているのであれば、そういう部分が影響しているのかなとは思います。