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栗本斉の「温故知新 聴き倒しの旅」第12回

ハワイアンとJ-POPの見事なコラボレーション ハワイ日系移民150周年記念カバーアルバムを聞く

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『ALOHA & MAHALO J-songs meet Hawaiian』

 ハワイ日系移民150周年を記念し、アルバム『ALOHA & MAHALO J-songs meet Hawaiian』が発表された。本作は、新旧の日本の名曲をハワイのアーティストがカバーするというもので、誰でも知っているメロディが15曲収められている。

 ハワイに住む日系人は、純血と混血を合わせると30万人を超えるという。ハワイ全体の人口が140万人程度だから、その割合は非常に高く、日系人なくしてはハワイの政治や経済、文化は成り立たないともいわれている。実際、現在のハワイ州知事は日系人のデービッド・イゲが務めているし、ハワイに観光に行って日系人と触れ合わないことはまずない。音楽シーンにおいてもそれは例外ではなく、みなさんよくご存知のウクレレ奏者であるジェイク・シマブクロを筆頭に、ハーブ・オータ&ハーブ・オータJr.親子やオジー・コタニといったウクレレやスラックキー・ギターの名手もいるし、ハワイアンAORの先駆者であるアウディ・キムラなど、レジェンド級のミュージシャンは多数いる。伊藤由奈やmelody.といったJ-POPシーンでヒットを飛ばした日系人アーティストもいる。

 逆にいえば、ハワイのミュージシャンにとって、日本の音楽を歌ったり演奏したりすることもそれほど珍しくはない。有名なところだと、ハワイのトップアーティストのひとりであるケアリイ・レイシェルは、夏川りみのヒットで知られる名曲「涙そうそう」を「カ・ノホナ・ピリ・カイ」というタイトルを付けハワイ語詞でカバー。この曲はハワイで大ヒットし、2004年度の「ハワイにおけるグラミー賞」といわれるナ・ホク・ハノハノ・アワードでは、ソング・オブ・ジ・イヤーに輝いている。他にも多くのハワイのアーティストが、日本の曲をカバーしている。

 今回リリースされた『ALOHA & MAHALO J-songs meet Hawaiian』は、そういったハワイと日本の関係性を知ってから聴けば、さらに奥深く感じることだろう。選ばれた楽曲は、日本でも国民的なヒットといわれるものばかりで、おそらくハワイの日系人たちも耳にしているはずだ。加山雄三の「お嫁においで」、荒井由実の「卒業写真」、The BOOMの「島唄」、平原綾香の「Jupiter」、秦基博の「ひまわりの約束」と、60年代から直近の大ヒットまで世代も50年に渡っているのが面白い。いつの時代にも日本からスタンダードな名曲が生まれていることの証明にもなっている。

 そして、これらの名曲群をカバーするのが、ハワイ在住の実力派ミュージシャンたちだ。ジナイ、ベン・ヴェガス、カムエラ・カホアノ、ルーシー・リンチといった現在のハワイの音楽シーンを牽引するシンガーソングライターが中心だ。ソウルやゴスペルを得意とするミンディ・スモークスタックや、ジャワイアンと呼ばれるハワイ産レゲエのアーティストであるキース・バトリン、ウクレレの天才少女として騒がれたこともあるタイマネといったアーティストも参加している。そして、ラストを飾る美空ひばりの「川の流れのように」を歌うのは、ナ・ホク・ハノハノ・アワードで何度も受賞している大ベテランのメルヴィーン・リードだ。いずれもハワイのポップスを追いかけている音楽ファンなら、思わず納得のラインナップではないだろうか。

 彼らはハワイ語と英語をミックスした歌詞で、J-POPの名曲群を歌うが、違和感がないだけでなく、名曲たちが本来持つメロディの美しさをさらに際立たせ、ハワイ特有のゆったりとした空気感を歌い方やアレンジに取り込むことによって新たな魅力を醸し出している。まさに、ハワイと日本の見事なコラボレーションといってもいいだろう。ハワイ日系移民150周年を記念するには、申し分のないクオリティの作品に仕上がっているのだ。

 ただ、この『ALOHA & MAHALO J-songs meet Hawaiian』はあまり堅苦しいことを考えずに、リラックスしながら聴くのが本来の楽しみ方。少し寒い季節になってきたが、だからこそ常夏の島ハワイに想いを馳せつつ、日本の名曲カバーを存分に味わってみてはいかがだろうか。

■栗本 斉
旅&音楽ライターとして活躍するかたわら、選曲家やDJ、ビルボードライブのブッキング・プランナーとしても活躍。著書に『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special -more 160 item-』(ラトルズ)がある。
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■リリース情報
『ALOHA & MAHALO J-songs meet Hawaiian』
発売:2018年11月21日
価格:¥2,500(税抜)
1. Mele O Ka Moku(メレオ カ モク)  島唄
2. O’ Jupita(オ ジュピタ)  Jupiter
3. E Ku’u Leo(エクウ レオ)  メロディー
4. A HUI HOU KĀUA(ア フイ ホウ カウア)  また逢う日まで
5. Ka ʻŌlelo Paʻa A Ka Pua Nānālā(カ オレロ パァァカ プァ ナナラ)   ひまわりの約束
6. He Mau Makani Au(へ マウ マカ二 アウ)  千の風になって
7. Ka Wā ʻŌpio(カ ワ オピオ)  少年時代
8. Pua Sakura(プア サクラ)  さくら(独唱)
9. Ki’i Ki’i O Ka Puka(キイキイ オカ プカ)  卒業写真
10. He Leka(ヘ レカ)  手紙~拝啓 十五の君へ~
11. He Mele O Ke Aloha Iki(ヘレ マイ クウ ヴァイネ マレ ホウ)  小さな恋のうた
12. Hele Mai Kuʻu Wahine Male Hou(ヘレ マイ クウ ワイネ マレ ホウ)  お嫁においで
13. Ke Aka O Ka Wā ʻŌpio(ケ アカオ カ ワ オピオ)  青春の影
14. Ho’olohe’o Olivia(ホオロヘ オ オリビア)  オリビアを聴きながら
15. Me Ke Kaheʻana O Ke Kahawai(メ ケ カへ アオナ ケ カハヴァイ)  川の流れのように
 

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