阪本奨悟が届けたファンに対する真摯な思い ワンマンツアー追加公演を振り返る

 そして歌われた「下手くそなLOVE SONG」は、作詞がTEE、作曲が杉森夕栞という他作家からの提供曲。阪本の作る、ちょっと頼りない“むっつり系”男子とはまた違う、“壁ドン系”男子が主人公の歌詞で、アコギを持たずにハンドマイクでパワフルに歌う姿が印象に残った。

 ここからは、阪本の弾き語り。ルーパーを使って自分の声をリアルタイムで次々と重ねたり(阪本曰く“分身の術”)、ギターのボディをパーカッションのように叩いたり、ギターのリフやコードを重ねたりしていく姿は、まさにオープニングで流していたエド・シーランのようだ。手始めに、オーディエンスの中から2人選んで名前を聞き、それを歌詞に組み入れた小曲を披露して会場を暖めた後、下積み時代に歌っていたという「Treasure」を演奏。後半はまるでゴスペルのように、分厚いコーラスをループさせながら熱唱した。

 しっとりとしたエレピの音色がフィーチャーされた失恋ソング「会いたくて」、柔らかなグルーヴが心地よい「スクランブルドリーミング」を経て、いよいよライブは後半戦。メンバー紹介を経ての「Please me!!」は、疾走感溢れるアレンジがThe Whoを彷彿とさせるライブの定番曲で、フロアからは自然にシンガロングが巻き起こった。さらに「人生のピーク」では、オーディエンスが一斉にタオルを振り回すなど一体感を増していく。そんな光景に思わず阪本も「最高!」と叫んだ。

 本編ラストは、女性への応援歌とも言える「bloom 〜心の花〜」。鳴り止まぬアンコールに応えて再びステージに現れた阪本は、弾き語りで「アスファルトに咲く花」を披露。バンドを呼び込み、「とっても大事な曲をお届けします」と紹介してデビュー曲「鼻声」を歌い、すべての公演を終えた。

 終演後、会場出口で観客ひとり一人を見送った阪本。ファンに対する真摯な思いが、最初から最後まで詰まったライブだった。

(写真=木村泰之)

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

■セットリスト
『阪本奨悟 ワンマンツアー 2018 SPROUT~綿毛の宴~』【追加公演】
9月29日(土)東京・ラフォーレミュージアム原宿

01.夏のビーナス
02.しょっぱい涙
03.I Never Worry ~虹の向こうへ~
04.オセロ
05.カラカラな心
06.下手くそなLOVE SONG
07.Treasure
08.会いたくて
09.スクランブルドリーミング
10.Please me!!
11.自分らしく生きていたい それだけなんだけど
12.人生のピーク
13.bloom ~心の花~
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EN1.アスファルトに咲く花
EN2.鼻声

■関連リンク
阪本奨悟 オフィシャルサイト

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