THE ORAL CIGARETTES 山中拓也の発言に込められた意図 全国ワンマンツアー初日公演を見て
そして2つ目は、「感情なんて表裏一体」という言葉。この日は、音源とは大幅に異なるアレンジで披露された曲があったほか、セットリストに関して「このタイミングでこの曲が登場するの?」と思うような意外性の感じる采配があった。サウンドの調子や演奏シーンが変わるだけで、耳に馴染んでいたはずのあの曲が全く違うもののように聴こえてしまう。この現象は先に引用した言葉「感情なんて表裏一体」のメタファーともいえる。
観る側からすると、自分の価値観を抉られるような思いのする場面が何度もあった。演る側からしてみたらおそらく、肉体的にも精神的にも消耗するようなハードな構成なのだろう。彼らはオーディエンスへ「各々が思うように自分の感情を持って帰ってもらえたらと思います」という風に伝えていたが、それはステージに立つメンバー側も同様。『Kisses and Kills』というアルバムをトリガーとし、どれだけ奔放な演奏ができるかどうかーーということが本ツアーにおける鍵になっていきそうだ。それを踏まえて考えると「めちゃめちゃのびのびと、自由にやらせてもらってます」と話していたこの初日公演は、良いスタートダッシュになったのではないだろうか。ツアーは来年3月17日・横浜アリーナ公演まで続いていく。
(写真=Viola Kam(V’z Twinkle))
■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。
■関連リンク
THE ORAL CIGARETTES オフィシャルサイト