『はたらく細胞』『ゴクドルズ』『すのはら荘』…今期アニソンは“作品を引き立てる歌詞”にも注目
毎クール様々なアニメが放送され、それと同時に誕生するアニメソング。しかしサウンド主眼のレコメンドは数あれど、アニメソングならではの“歌詞”を中心に注目・紹介したレビューは数少ないのではないだろうか。そこで本稿では、特に歌詞を中心にフォーカスを当てて今期のアニソンをレコメンド。作品の世界観をさらに引き立てる、言葉の力がキラリと光る楽曲をご紹介していこう。
「ミッション!健・康・第・イチ」(『はたらく細胞』)
作品の基本情報をもとに書かれた、いわゆる“王道オープニングソング”は当然のことながら数多く登場。そのなかでも今期の代表格であり、キャラクターソングとしての役割も兼ね備えているのがこの曲ではないだろうか。王道であるがゆえにアプローチとしては非常にオーソドックスなものであり、通常はそこまでインパクトの残るものにはならないことが多いのだが、ことこの曲に限ってはAメロ中盤の〈細胞 さぁいこう〉がメロディラインを含めた響きも合わせて、非常にクリティカルなパンチラインとして機能。アニメファンを作品世界に引きずり込む役割を果たす。そう。このフレーズが発明された瞬間、この曲は“勝ち”だったのだ。
加えて〈酸素酸素〉と〈迷子迷子〉のように韻を踏んでの軽妙な言葉遊びも、コミカルなサウンド感とうまくハマってリスナーに楽しさを与えてくれている。ちなみにこの曲を手がけたゆうまおは、久方ぶりに30分モノのアニメ主題歌を担当。前述のような言葉遊びを楽曲の主線から脱線させずにうまく織り込んでくるのは昔からの作風なので、興味を持たれた方は過去の秀作にも手を伸ばしてみてはいかがだろうか。
「ゴクドルミュージック」(『Back Street Girls-ゴクドルズ-』)
のっけから「そのブラス聴いたことあるよ! そこちゃんと“仁義”切ったの!?」と突っ込んでしまったこの曲。しかしそれは、ただの出オチでは終わらない伏線でもあった。音だけで聴けばベッタベタなアイドルソングにとらえられるナンバーであり、〈盃〉や〈契り交わして〉、〈永遠の誓い〉といった言葉からはウェディングの光景を連想することだろう。が、そこに〈心臓(ハート)を撃ち抜きたいの〉〈犯人(ホシ)たちが騒ぎ出す〉などと文字情報が提示されたらどうだろうか。そのうえで“あの”ブラスに「仁義切らせていただきます!」とのセリフが入ってきたら、どう感じるだろうか。そう、不穏さしかないのである。
このダブルミーニング性をキャッチーなメロディとうまく組み合わせ、歌詞を読めば一発で腑に落ちるようなバランスで提示した大石昌良の、言葉の匙加減の素晴らしさに改めて拍手を送りたい。それにしても、オーラスの〈パーリラパリラパリラ ハイハイ!〉のフレーズ、とんでもなく攻め込んでるように感じてしまうのは、筆者だけ?