レキシ、電気グルーヴ、岡崎体育、ヤバT……兵庫慎司が“アーティスト写真”について考える

レキシら傑作アー写はなぜ生まれる?

 そういうことを30年近く前からやって来たオリジネイターもいる。そうだ、電気グルーヴだ。デビュー時こそヒップホップ風の衣装と撮られ方だったが(そう、電気って最初は“テクノ”よりも“ラップ”的な捉えられ方だったのです)、CMJKが脱退してまりん(砂原良徳)が入り、3人でポストや電柱になる有名な写真を撮ったあたりから、本当にこの人たちは、アーティスト写真で、ありとあらゆることをやって来た。

 白人モデルになる、『電人ザボーガー』のマシン・ザボーガーと大門豊になる、明治の政治家風、似顔絵(水木しげる版も似顔絵描きのおじさん版もあり)」などの凝っている方向のもの、多数。逆に「アーティスト写真なんてなんでもいい」というポリシーに則っての“雑なやつ”方向の傑作も多数。フェスに出た時にテントサイトでアウトドアチェアに座って撮っただけのやつや、「一緒に写真撮ってください」と女子高生にせがまれて、それをそのままアーティスト写真にした、なんてシロモノすらあった。

 個人的に特に好きなのはーー確かあれ『VOXXX』(2000年。まりんが脱退し、石野卓球とピエール瀧のふたりになって最初のアルバム)の時のツアーポスター用か何かに撮ったんじゃないかと思うがーー赤マントとスニーカーしか身にまとっていないふたりが、ビルの屋上で身構えているやつだ。もう時効だろうから書いちゃうが、あれ、ロッキング・オン社やアミューズなどが入っている渋谷のオフィスビル、インフォスタワーの屋上です。当時、僕も、雑誌の撮影でよく借りていて、いろんなバンドをあそこで撮っていたのだが、電気のスタッフから「あそこで撮りたいんです」と相談され、ビルの管理室を紹介してあげた。で、ああいうことになったのを、あとで知ったのだった。ちなみにその頃は、許可さえ取れば屋上での撮影ができたのだが、後に「テナント以外には貸しません」というルールが設けられた。電気があんな写真を撮ったから、ではなく(たぶん知らないと思う)、単に依頼が多すぎて面倒になったのだと推測します。

レキシ「GET A NOTE」MV(YouTube ver.)

 なお、レキシの『S & G』の「G」の方、「GET A NOTE」のMVが、7月11日に公開された。「GET A NOTE」は、言うまでもなく鬼太郎のトレードマークが下駄だから、だが、MVはさっき書いたとおり、そこからもうひとつ発想を転がして「日本史縛り」に着地している。ただ、その結果、「全身全霊を賭してふざける」ことが身上のレキシのキャリアの中でもいろんな意味でトップクラスのそれにもなっていて、なんかもう「わかりました、好きにやってください」としか言えない感もあります。

 とりあえず、活動スケジュールを鑑みると、そろそろニューアルバムの時期なのではと思う。そのあたりまで含めて、ひき続き、期待しています。

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「SPICE」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。

■リリース情報
レキシ 3rdシングル『S & G』
発売中
価格:【初回限定盤】1,500円(+税)/CD+DVD+金箔押しジャケット
【通常盤】1,000円(+税)/CD

<CD収録曲>※初回限定盤・通常盤共通
1.GET A NOTE(フジテレビ系TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』エンディング主題歌)
2.BANASHI
3.SEGODON(NHK大河ドラマ『西郷どん』パワープッシュソング)

<初回限定盤DVD収録内容>
『ライブドキュメンタリーすんのか~い、せんのか~い』
※2017年10月1日に大阪城西の丸庭園で開催した単独野外公演の初だしライブドキュメンタリー映像。
※iTunes Store、レコチョクなどの主要ダウンロードサイトでも配信中。

■配信情報
iTunes Storeレコチョクmoraなどの主要サイト含む定額制音楽サービス(サブスクリプション)にて配信中。

■関連リンク
レキシ オフィシャルサイト
『S & G』特設サイト

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