Taku Inoueと北谷光浩に聞く、『サマーレッスン』楽曲制作秘話「音楽で補強するのが仕事」

『サマーレッスン』楽曲制作者インタビュー

 PlayStation®VR専用ソフト『サマーレッスン』初のCDアルバム『ドラマ&ミュージックアルバム サマーレッスン ~未来はいま~』が7月18日にリリースされた。同ゲームはプレイヤーが夏休み中に女の子たちの家庭教師となり、キャラクターとのコミュニケーションを楽しめるVRキャラクター体験ソフトで、宮本ひかり(CV:田毎なつみ)、アリソン・スノウ(CV:阿部里果)、新城ちさと(CV:畑中万里江)といった、個性豊かなキャラクターとのシチュエーションが配信されている。

 同アルバムには、ドラマパートやボーカルソング、サウンドトラックなど全27トラックを収録。リアルサウンドでは今回、ミュージックディレクターのTaku Inoueと北谷光浩にインタビューを行い、同作の音楽面や作家としての2人の個性に迫った。『アイドルマスター シンデレラガールズ』や『塊魂 ノ・ビ〜タ』、DAOKOへの楽曲提供などで次々に名曲を生み出してきた井上と、その側で薫陶を受けてきた北谷が、音楽作家として大事にしていることとは。(編集部)

「ナムコには“やってやろう”感のある人が多い」(Taku Inoue)

Taku Inoue(左)と北谷光浩(右)。

ーー個人的な印象なんですけど、井上さんは音の置き方がすごく綺麗な人というか、無駄な音が鳴っていない人で、北谷さんはジャズっぽいコードやフレーズが多い人だなと思っていて。改めて、お二人のルーツや現在のベースになっている音楽について聞かせてください。

Taku Inoue:僕は小学校6年生の時に聴いたX JAPANですね。

ーーまた意外な。

Taku Inoue:そこからLUNA SEAを聞くようになり、ギターのSUGIZOさんがソロでクラブミュージックを作っていたのに影響を受けて、ドラムンベースを聴くようになったころから聴く音楽が変わってきました。そこからドラムンベースやヒップホップのようなサンプリングミュージックを聴くようになって。

ーーああ、たしかにドラムンベース的なトラックはこれまでの曲でも多いですね。あと、先ほど話した“音の置き方”についてはどうでしょう?

Taku Inoue:知識としてはいろんなものを通ってはきましたけど、自分のなかではサンプリングが好きなことが大きいと思っています。ちょっとノイズが乗った汚い音を綺麗に配置してるものが多いかもしれませんね。ドラムンベースやヒップホップも、それに近い音の鳴りをしていたりもするので。

ーー北谷さんはどうですか?

北谷光浩(以下、北谷):僕は小さいころからゲームが好きで、ゲーム音楽をピアノで弾きたいと思ってピアノを小学校くらいから習っていたんですよ。最初に習い始めたのはクラシックだったんですけど、楽譜を弾くというよりは自分の思うように弾くほうが好きだったので、大学入学以降はジャズに転向しました。いま自分が作っている音楽は、先ほど言っていただいたように、ジャズが中心にあるのは間違いないですね。テンションコードをとりあえず入れないと気が済まなくて、9度や13度をひたすら入れちゃったり(笑)。

Taku Inoue:心配になるよね、テンションコード入れないと。僕もちょっとわかるかも。

ーーちなみにそんなお二人がゲーム音楽の作り手を目指したのは、どういうきっかけがあったんですか?

Taku Inoue:僕は『塊魂』の曲を聴いたのがきっかけですね。大学院を卒業するにあたって、楽器メーカーの営業を中心に就職試験を受けてたんですが、あのゲームが衝撃的すぎて、ナムコだけはサウンド職で受けようと思ったんです。面接でもひたすら『塊魂』が好きだと話していた記憶があります(笑)。

北谷:自分はゲーム音楽が好きだったことがもちろん大きかったんですけど、そもそも音楽だけじゃなくて、ゲームを作りたいという欲望もあったんですよ。

Taku Inoue:プログラムを自分で書いて作ったってこと?

北谷:プログラムも書きましたし、『RPGツクール』を使ったり、大学時代は同人ゲームの音楽を作ったりしていました。なので、できればゲーム会社に入ってサウンドを作りたいと思い、コンポーザーとプログラマーの両方で面接を受けていたら、結果的に受かることができました。

ーーお二人はどんな関係性なんですか?

Taku Inoue:会社で席が隣同士だったり、部署が部活っぽい雰囲気なので、部内の交流も多くて、昼飯を一緒に食べたりしてましたね。

北谷:サークル感ありますね。

ーー採用ページもサウンドチームだけ部活感がありましたもんね。ちなみにお互い出自も違うわけですが、それぞれどういうクリエイターだと思っていますか?

Taku Inoue:そうですね……北谷が入ってきたときは、「ガチでジャズができるやつがやっと来てくれた!」と思いました。ジャズを聴くのは好きなんですけど、作るのはまた別で。でも、ジャズっぽいピアノソロが欲しい場面もあったりするので、早速『ポッ拳  POKKÉN TOURNAMENT』でピアノソロを頼んだ記憶があります。

北谷:まだ研修中のときですよね。

Taku Inoue:そうそう。結構早い段階で仕事を頼んだりしたので、最初からそういうイメージを持っていたんですけど、今回の『サマーレッスン』を含め、色んな仕事で一緒になるようになって、「なんでもできる人なんだ」と思わされました。しかも、個人としての芯もしっかり持っているので、こいつは売れっ子になるなという予感がしています。

北谷:恐縮です。井上さんのことは、会社に入る前からアイマス(『アイドルマスターシンデレラガールズ』)楽曲で知ってましたよ。「Romantic Now」(赤城みりあ/CV:黒沢ともよ)を聴いて「なんて良い曲を書くんだ……」と。あんなにめちゃくちゃ可愛い曲なのに尖ってて、言葉のハマりもすごく気持ちいいですし。冗談抜きで、井上さんはクラブサウンドという括りのなかでは一番かっこいい曲を書く人だと思ってますから。自分は割と色んなジャンルをカバーできているような気がしていたんですけど、井上さんの曲に関しては、どうやって作るのか本当にわからなくて。

ーーあの曲はなんというか、井上さんの中にある“バンナムイズム”というか“神前暁イズム”みたいなものを感じました。

Taku Inoue:意識したわけではないですけど、今考えると確かに神前さんのラインにある曲かもしれないですね。

ーーゲームサウンドを作るにあたっては、極力黒子に徹するタイプと、作家としての個性をガンガン出して遊び心を入れる人がいると思うんですが、お二人はどうですか?

Taku Inoue:ナムコの面々に関しては、先輩方含め「やってやろう」感のある人が多いです、とはいえ絶対仕様に沿ったものにはするんですけど。逆に言えば、仕様に沿ってさえいればなんでもできるのが、ゲームミュージックの楽しいところだと思います。

北谷:自分も大体似たような感じですね。ゲームをより良く演出することを目的にしつつ、そのための手段は別に問わないというか。

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