モーニング娘。’18、新曲は“つんく♂流ダンスミュージック”に トラップ取り入れたサウンドを分析

モーニング娘。'18『Are you Happy?』(Morning Musume。'18[Are you Happy?])(Promotion Edit)

 これまでのモーニング娘。によるEDM曲は、サウンドプロダクションの面ではEDMを踏襲しつつ、細やかなコード展開でJ-POP的なフックも保っていた。しかし、この「Are You Happy?」では、コードの展開の少ないパートが多い。Aメロに至っては、完全にワンコードで、それに呼応するように歌詞もミニマルに、同じ言葉のリフレインが多様されるようになっている。この曲の斬新さは、コード、歌詞、ビートといった様々な面で反復を軸にした、ダンスミュージック的な手法に起因するものだ。

 「Are You Happy?」がEDM/ダンスミュージックの方法論を通してトラップを解釈しているのに対して、「A Gonna」はもっと現代的なヒップホップ/R&B系のトラップへの意識が感じられる。特にイントロからAメロで展開されるサウンドの構成は、上述したトラップの特徴をほぼ網羅している。

モーニング娘。'18『A gonna』(Morning Musume。'18[A gonna])(Promotion Edit)

 また、この曲は「A Gonna」と書いて関西弁の「えーがな」と読ませるタイトル、2018年の日本を予見したような〈責任者が無いならば 組織である意味がない〉という歌詞など、つんく♂独自の言葉のセンスも光っている。今もっとも旬なトレンドであるトラップを、つんく♂流・モーニング娘。流に解釈した一曲と言っていいだろう。

 つんく♂の独特な作家性がかなり大胆に打ち出されたこの2曲が、以前のEDM路線のように今後のモーニング娘。の方向性を決定づけるものなのかはまだ分からない。ただ、ここから20周年以降の“新生モーニング娘。”が始まるのは間違いないだろう。これまで一部のメンバーに極端に偏っていた歌割が、ダンスミュージックの匿名性の下でかなり平等にならされているのも象徴的だ。これまでの歴史を踏まえつつ、新たに引かれたスタートラインとも言うべき作品がこの『Are you Happy?/A gonna』と言えるのではないだろうか。

■青山晃大
1983年生まれ、三重県津市出身。フリーランスの音楽ライター。「ザ・サイン・マガジン・ドットコム」「Qetic」「CROSSBEAT」他で執筆しています。

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