森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.101
aiko、エレカシ、RADWIMPS、三代目JSB……トップアーティストたちの新作から見える現在地
切なさと愛らしさが充満したaikoの2年ぶりのフルアルバム、31年目を迎えたエレファントカシマシの渾身の新作、ボーカリストのソロ作を含む三代目 J Soul Brothersの3枚組ニューアルバムなど、J-POP、ロックを中心に各ジャンルを代表するアーティストがこぞって新作をリリース。トップアーティストたちの現在地が見える、魅力的なニューアイテムを紹介します。
aikoの2年ぶりのアルバムのタイトルは『湿った夏の始まり』です、と聞いただけでもう切ない。気温も湿度も高く、ぜんぜんスッキリしないけれど、この湿り気と熱気のなかじゃないと感じられない、かけがえのない気持ちがあるーーそれは彼女が生み出すラブソングそのものだ。シングル「恋をしたのは」「予告」「ストロー」を含む本作でもaikoは、恋愛のなかにしか生じない繊細で狂おしい感情を、独特のブルーノート感に溢れたメロディとともに丁寧に紡ぎ出している。個人的ベストトラックは「愛は勝手」。ジャズとソウルを行き来するようなオーガニックなサウンドのなかで、思うようにいかない愛の行方を美しく描き出すこの曲からは、彼女のソングライティングの深まりがはっきりと伝わってくる。
31年目を迎えてまたもや覚醒。やはりエレカシは不世出のロックバンドである。オールタイムベスト『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』を中心にした30周年アニバーサリーを駆け抜けたエレカシ。「Easy Go」(テレビ東京 ドラマ25『宮本から君へ』主題歌)、「風と共に」(NHK『みんなのうた』)などのタイアップ曲を含む本作『Wake Up』で彼らは、世間とか常識みたいなものに抗い、自分自身の意志で生きようとする決意をダイナミックに響かせている。<もう一度 ここからスタートだ>と宣言するアッパーチューン「Wake Up」から、自らの生を全うしたいという切実な思いを綴った「オレを生きる」まで、すべての楽曲に溢れんばかりの情熱が漲っているのだ。エレカシの激しさをポップに彩る村山☆潤のアレンジも見事。
2018フジテレビ系サッカーテーマ曲となったRADWIMPSの新曲「カタルシスト」は、ドープかつエッジーなトラック(ドラムンベース的要素も少し)のなかで<ただ願うだけ 君の夢が咲き誇るまで>という前向きなラインを高らかに響かせるナンバー。基軸になっているのはヒップホップだが、高揚感溢れるサビのメロディを加えることで、リスナー(とサポーター)を力強く鼓舞するアンセムに結びつけている。「HINOMARU」というタイトルを冠したカップリング曲は、ノスタルジックな旋律、壮大なスケール感を備えたアレンジとともに、この国に脈々と根付く精神、それを受け継ぐ者としての誇りを歌い上げた勇壮な楽曲。ロックバンドの枠を軽々と超えるサウンドメイクも印象に残る。