多人種が参加するストリートダンスの祭典、『HOUSE OF EXILE』に見る真のミックス文化

真のミックス文化の誕生

 今年の『HOUSE OF EXILE』のラストを飾ったのは、ダンスバトルの決勝戦だった。対戦したのはハウスとヒップホップを軽妙にブレンドして踊るドレッドロックのジャングルと、ヴォーグ・シーンで活躍するフィンランド出身の女性ダンサー、インシー。

 インシーはいつもの凝ったコスチュームの代わりにシンプルな花柄のTシャツとグリーンのパンツ姿。メイクもせず、ブロンドの髪も無造作に束ねただけ。ストリートダンス・バトルに殴り込みをかける意気込みの表れだ。だが、アメリカン・ヒップホップ・ファッションをまとうことはせず、あえて自身のテイストを守ったように見える。バトルではヴォーグをうまくストリートダンス化し、パントマイムの要素も加えたしなやか、かつ強靭な踊りで健闘した。

 バトルは接戦となり、審査は難航したが、軍配はジャングルに上がった。2人はお互いの健闘をたたえて固くハグし合い、ジャングルは1万ドルと書かれた大きな小切手を感無量の表情で頭上に掲げた。

 最初にカラー・ブラインドとは「人種の違いを意識しないこと」と書いた。実はこのフレーズ、マジョリティ側によって「自分は人種差別主義者でない」ことを示すために使われることが多く、マイノリティ側には厭われる。人種・民族ごとの外観と独自のカルチャーが自身のアイデンティティの礎を成すことから、「人種や民族の違いをあえて意識」した上で、個々の独自性を活かし、お互いを認め合うことこそが必要と考えるからだ。

 同時にニューヨークのような多人種社会では、お互いの文化は自然と混じり合っていく。他者の文化を外観の模倣ではなく、内面に取り入れ、自身の文化と違和感がなくなるまで撹拌する作業を重ねる。そこから真のミックス、フュージョン、マッシュアップ、ハイブリッドが生まれる。すると次世代がそのミックス文化を土台に、さらなる新しいミックス文化を生み出す。最初に踊ったEXPGネクスト・ジェネレーションズは日系の血を引く子供も含め、全員がまさにハイブリッド・カルチャーの真っ只中で踊り、育っている。こうしたことからも分かるように、毎年ニューヨークで開催される『HOUSE OF EXILE』は日本とアメリカ、さらには世界中のダンスシーンをつなぐ架け橋となっているのだ。

(取材・文=堂本かおる/写真=坂本琢哉)

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