2018年はさらなる飛躍へ 気鋭のプロデューサー Kaytranadaへの期待

Talib Kweli『Radio Silence』

  今度はベテランラッパー、Talib Kweliのニューアルバム『Radio Silence』よりAnderson .Paakをフィーチャーした「Traveling Light」。Kaytranadaはフリーダウンロードだった2015年の『Fuck The Money』に引き続いての起用となりました。その前作ではファンキーエレクトロの秀作「Butterfly」をモノにしていましたが、今回のブーンバップな「Traveling Light」も(Rick RossとYummy Binghamが参加したゴスペル調の「Heads Us Eyes Open」と共に)アルバムのベストトラックといえる会心の一撃。ぐいぐいと聴き手を引き込んでいくAnderson .Paakのパフォーマンスもど熱いアップリフティングな4分30秒は、どこかKanye West作のクラシック「Get By」(2002年)を彷彿させるものがあります。KaytranadaやAnderson .Paakはもちろん、Mos Def、Q-Tip、Robert Glasper、Slick Lick、Spike Lee、Dave Chappellらが登場するミュージックビデオも必見。

Talib Kweli "Traveling Light" feat. Anderson .Paak (Official Music Video)
Ivan Ave『Every Eye』

 最後は『Low Jams』(2014年)や『Helping Hands』(2016年)といったMndsgnとのコラボ作で知られるノルウェーはオスロ出身のラッパー、Ivan Aveの新作『Every Eye』から「Steaming」。ここではKaytranadaとDam-Funkの共同プロデュースという夢のタッグが実現しているわけですが、これがクレジットから掻き立てられる音像を裏切ることのない素晴らしい仕上がり。メロウでありながらもスピリチュアルでスペイシーな広がりを持つサウンドスケープは、アルバムのトータルイメージを決定づける計8曲のMndsgn制作曲(こちらも軒並みハイクオリティ!)と絶妙な調和を織り成しています。お互いの持ち味が有機的に絡み合ったからこそ生まれ得た力作。

Ivan Ave - Steaing

■高橋芳朗
1969年生まれ。東京都港区出身。ヒップホップ誌『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』の選曲も手掛けている。

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