ももいろクローバーZは新たな始まりを告げたーー有安杏果卒業と4人のこれから

ももクロ5人体制ラストステージを見て

 ここまでの14曲を5人だけで突っ走ってきたももクロだが、ついに終わりが近づいてきた。ここから有安に向けて、メンバー4人が一人ずつメッセージを贈っていく。その詳細はすでにさまざまなメディアで公開済みの「全文書き起こし」に譲るが、個人的には高城れにが腕を骨折した際に有安が高城をサポートしたことが心の支えになったこと、佐々木彩夏の「ももクロを辞めてよかったと思うぐらいの人生を送ってほしいし、私たちはあのとき辞めなきゃよかったと思ってもらえるぐらい輝いていたい」という発言、玉井詩織の「年も近くて血液型も一緒なのに、性格は正反対。でも、自分にないものを持っている杏果を見て、密かにああなれたらと思っていた、よきライバルでした」という告白が印象に残っている。また、百田による「本当は10周年は5人で迎えたかったです」という本音がこぼれると、場内からはモノノフたちのすすり泣く声が一斉に聞こえてきたのも印象的だった。

 4人が有安にメッセージを贈ると、彼女へのサプライズとして贈る曲「新しい青空へ」をプレゼント。これには有安も驚いた様子で、4人は有安を囲んでそれぞれの思いが綴られた楽曲を歌っていく。途中、高城が泣き崩れてしまう場面もあったが、そんな彼女に有安は優しい微笑みを贈る。さらに曲の後半には、有安のソロ曲「ありがとうのプレゼント」の一節がフィーチャーされ、百田の合図で会場中から大合唱が沸き起こる場面もあった。

 場内一面が有安のイメージカラーである緑色に染まる中、メンバー4人から花束を受け取った有安が最後の挨拶。4人への感謝の言葉、そしてスタッフやモノノフへの感謝の気持ちを伝える中で、彼女は「ももクロは“奇跡の5人”と言われるけど、私はあまりそんなことを思ったことなくて。この4人と、モノノフさんで5人だと思ってます。だから10周年も、20周年も、この4人のことをよろしくお願いします」と気持ちのこもったメッセージを伝え、ステージから去っていった。

 有安が退場したのと同時に、ステージ後方のスクリーンに映されていた5人の写真から有安の写真のみ消え、ここから“4人のももクロ”がスタートすることとなる。百田が「4人でたくさんの人に笑顔を届けられるグループでいたいと思います。私たち4人には、その覚悟があるよね」と気持ちも新たに宣言すると、場内には聴き覚えのある“お約束のあの曲”が流れ始める。そう、ももクロに対しての重大発表があるときにはおなじみの、松崎しげる「愛のメモリー」だ。ステージに突如現れた松崎は「愛のメモリー」に乗せて、5月23日に東京ドーム公演が決定したことをメンバー4人、そして場内のモノノフたちに伝えると、それまでのしんみりした空気から一変、会場は再び熱い熱気に包まれた。

 玉井の「皆さん、私たちと一緒に走り続けてくれますか?」との問いかけに、大声援で応えるモノノフたち。最後は「あの空へ向かって」を、4人になったももクロで初パフォーマンスしてライブを終えた。そしてステージからの去り際、百田が「今日は気持ちをぐちゃぐちゃにしてすみません。『ずっとついてこい!』とは言いませんが……」と気持ちを伝えようとすると、そこに高城が「そんなことは言えねえ! ずっとついてこい!」と勢いよく割って入り、最高の笑顔で「4人のももいろクローバーZ」のスタートを切ることとなった。

 この日のライブは有安杏果のラストステージではあったものの、筆者には「5人のももいろクローバーZ」のラストステージという印象が強かった。派手な演出が控えめで、またステージセットも極力シンプルな構成だったのも、そういった印象に拍車をかけたのは間違いない。そして、ライブタイトルにある「OPENING」の文字は2018年最初のライブという意味と同時に、ここから新たなももいろクローバーZが始まるという意味も込められていたのではないか。そう思わずにはいられないくらい、前向きさを前面に打ち出した内容だったと思う。

 終演後には東京ドーム公演と同日の5月23日に、「5人のももクロ」の証を残すかのように初のベストアルバムが発売されることもアナウンスされている。結成10周年イヤーとなる2018年はまだ始まったばかり。今後もパワーダウンを感じさせることなく、いや、さらにパワーアップしたももクロが我々に最高の笑顔を届けてくれることだろう。

(文=西廣智一/写真=キングレコード / EVIL LINE RECORDS)

■セットリスト
『ももいろクローバーZ 2018 OPENING 〜新しい青空へ〜』
2018年1月21日 幕張メッセ国際展示場9〜11ホール
overture 〜ももいろクローバーZ参上!!〜
01. Z伝説 〜終わりなき革命〜
02. 未来へススメ!
03. ゴリラパンチ
04. 仮想ディストピア
05. 白い風
06. 行く春来る春
07. ツヨクツヨク
08. words of the mind 〜brandnew journey〜
幕間
09. BLAST!
10. DECORATION
11. 行くぜっ!怪盗少女
12. 灰とダイヤモンド
13. 走れ! -Z ver.-
14. モノクロデッサン
15.新しい青空へ
16. あの空へ向かって

オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる