バンドじゃないもん!「歌うMUSIC」に詰まった歴史 日本青年館公演を終え次なるステージへ

バンもん!「歌うMUSIC」に詰まった歴史

 「歌うMUSIC」が終わると、その余韻を味わう間もなくスクリーンが降りてきて、『ミニバン!』に収録されたメンバーのソロ曲のMVがワンフレーズずつ流された。そして、再びスクリーンが上がると、オケによるソロ曲メドレーが始まった。

 再びスクリーンが降りてバンド演奏が始まると、スクリーンのCGでバンドメンバーが紹介された。そして、スクリーンが上がったときに驚愕したのは、ステージにいきなりセットが登場したからだった。

 「ピンヒール」では、鈴姫みさこが最初のドラムを叩く瞬間、確実にエクスタシーが存在する。楽器を持たない恋汐りんご、七星ぐみ、大桃子サンライズの動きは、アカシックの理姫が書いた歌詞のドラマを描きだしていく。そして、最後の望月みゆのシャウトは長く、そのまま彼女はその場に座りこんだ。

 銀テープが一気に噴出したのが「キメマスター」。照明も凝っており、日本青年館ホールでのライブへの並々ならぬ気合いを感じさせた。

 不安になるほど2階席が揺れた「タカトコタン-Forever-」に続いて、本編ラストはクリスマスということで「雪降る夜にキスして」。再びミラーボールが会場を照らしだした。

 アンコールで最初に演奏されたファンクナンバー「YAKIMOCHI」で、粘っこいリズムやブラスが再現されていたのも生のバンド演奏ならでは。鈴姫みさこと楠瀬タクヤによる突然のドラムセッションは、予想外の見せ場だった。

 ダブルアンコールの「青春カラダダダッシュ!」でこの日のライブは終了。集合写真の撮影時には「歌うMUSIC」が流れていた。そして、バンドじゃないもん!のメンバーとバンドメンバーが一列に並び、つないだ手を上げて終わり……というときに、バンドじゃないもん!は会場のファン同士にも手をつなぐことをうながし、会場全体でつないだ手を上げた。バンドじゃないもん!の「良いお年を!」という声とともに、スクリーンは降りていった。

 2017年は、バンドじゃないもん!にとってひとつの転機だった。その最たるものは「オリコン戦争」からの離脱を宣言したことだろう(参考:音楽ナタリー)。『Q.人生それでいいのかい?』が5,555枚限定で、しかも発売当日までタイトルすら発表しなかったのは、そうした姿勢を体現したものだった。オリコンチャートという指標を彼女たちは捨てたのだ。一方では、2018年4月15日の中野サンプラザを皮切りにホールツアーを行うことや、それに先駆けてライブハウスツアーを行うことも発表された。

 2018年、バンドじゃないもん!がどんな指標を提示し、それを実現するためにどんな活動をしていくのかを楽しみにしたい。中野サンプラザのキャパシティは2,222人。バンドじゃないもん!は必ずソールドアウトしようとするだろうし、それはきっと実現するはずなのだ。

(写真=笹森健一)

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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