和楽器バンド、世界的に評価される理由は? 和と洋を掛け合わせた無二のクリエイティブを分析

和楽器バンド、世界的に評価される理由は?

 こんな彼らの独特な活動が他の国に広まらないはずがない。YouTubeで公開されている映像は海外からのアクセスも多く、世界中のリスナーからコメントが書き込まれている。また、2016年には米国の大手コンサート制作会社「ライブ・ネイション」からオファーを受け、ニューヨークのアーヴィング・プラザで単独公演を実施。アメリカツアーを追ったライブDVDでも、異様な熱狂に包まれたライブの様子を見ることができる。このように、これまで台湾やアメリカ4都市の500~1200人規模の単独公演を成功させている。また、『軌跡 BEST COLLECTION+』に収録される台湾人歌手ジェイ・チョウの人気曲「東風破」の日本語カバーは、現地ファンからの要望によって実現したという経緯もある。和と洋、どちらの良さも壊さず、それどころかお互いの魅力を増幅している和楽器バンド独自のサウンドは、海外、特に欧米のアーティストが逆立ちしても真似できるものではない。最近の楽曲では「オキノタユウ」のような和のメロディを基調としたバラード曲も人気が高く、日本を含めた東洋の色が濃いエキゾチックな映像も相まって、我々日本人が想像する以上に海外リスナーを強く惹きつけているのだろう。

和楽器バンド「オキノタユウ」MV

 その一方で、彼らの音楽を“メタル”と位置づけているアメリカメディアがあったり、様々な解釈がなされている点も興味深い。BABYMETAL、DIR EN GREY、マキシマム ザ ホルモンといったバンドがそうであるように、欧米のリスナーやメディアは既存の音楽の模倣ではなく、そこに全く新しい解釈を加えた日本の音楽を好む傾向が昔からある。そう考えてみると、国内同様、和楽器バンドが海外でも多くのファンを生むことは必然だったのかもしれない。もし、彼らが欧米のメタルフェスに出ることになったら……なんてことを想像するだけで軽く興奮してしまう。彼らの音楽性と高い技術をもってすれば、決してこれはただの夢物語ではない。

 すでに大きな成功を収めている和楽器バンドだが、個人的には国内のロックシーンではまだまだ評価が追いついていないと感じている。メタルの要素が強い楽曲もあり、そっち方面のリスナーに受け入れられる素地はあると思うし、若いロックリスナーのアンテナにももっと引っかかっていいはずだ。

 今のフェス全盛の音楽シーンにおいて、独自の世界観を構築し、どのバンドとも交わることのない姿勢や音楽性が彼らのことを知る機会を狭めている部分はあるのかもしれないが、彼らのようにオリジナルなスタイルを持つバンドこそ多くの人の目と耳に届くべきだと思う。

■阿刀 "DA" 大志
75年生まれ。PIZZA OF DEATHにて宣伝制作を10年以上務めた後、フリーランスに。現在は執筆業、BRAHMANやMOTHBALLといったバンドのプロモーターなど、音楽に関わるあらゆる分野で雑食的に活動中。

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