メジャーデビューシングル『Garage』リリースインタビュー
台湾出身バンド・noovy、挫折から生まれた絆「僕らなんてどうでもいいのかなと思ってた」
リン・ユーチュンが所属する台湾最大手のマネジメント会社<EeLin>が主催する大型オーディション『EeLin STAR』を勝ち抜いたメンバーによって結成された台湾出身の4人組ボーイズバンド・noovy。日本でのメジャーデビューをかけて来日し、半年間共同生活をしながらライブ会場限定のSingle CDを1000枚 、mini Album CDを3000枚売るプロジェクトに挑戦した彼らが、記念すべきメジャーデビューシングル『Garage』を完成させた。この作品には、夢を追って日本にやってきた彼らのこれまでの足取りや、活動への思いが綴られた3曲を収録。それぞれの歌詞を紐解いていけば、彼らのことがより身近に感じられる作品になっている。待望のメジャーデビューを控えてふたたび日本にやってきた4人に、作品について訊いた。(杉山仁)
「最初は応援してくれていた大人たちも、誰も見てくれないような状況に」
――前回取材をさせてもらったとき(https://realsound.jp/2017/03/post-11770.html)は日本でのメジャーデビューをかけてライブ限定作品を1000枚売り切るチャレンジ中でしたが、3月13日に見事目標を達成し、いよいよメジャーデビューとなります(最終的には、ミニアルバム3000枚も販売達成)。まずはこの経験を改めて振り返ってもらえますか?
Shawn:そもそも、僕らは日本に来ることが決まった時点で、台湾でのオーディションに選ばれてからもう2年経っていたので、その間結果が出せないでいる状態を「申し訳ないな」と思っていました。そんなときにちょうど日本に来ることが決まったので、僕たちにとってはやっと一歩を踏み出せるという気持ちだったんです。
――みなさんが自信を持つきっかけになったんですね。
Shawn:「(日本語で)♪扉を開けた~」という感じです(笑)。最初は、日本のみなさんは僕らのことなんて誰も知らないはずなので、「1000枚も売れるわけないよ……」と思っていました。でも、売れたらワンマンライブができるというご褒美が待っていたので、その結果によって自分たちの運命が大きく変わるようなミッションだと思って挑戦することにしたんです。
――目標を達成した瞬間、みんなでどんな話をしましたか?
Mark:面白いエピソードがあるんですけど、僕らは日本語がまだ上手くないので、毎回MCを事前に用意していたんですよ。その日はライブ後に1000枚達成するんじゃないかと思ってそういうMCを用意していたら、はじまる前にすでに達成してしまって……。それで、「MCをどうしよう!?」ってすごく困ってしまいました(笑)。
Shawn:なので、自分たちができる日本語で、感謝の言葉を精いっぱい言いました。 ファンの人たちは僕たち以上に不安だったと思いますし、泣いて喜んでくれる人たちもたくさんいて、その瞬間を一緒に迎えられたのが本当に嬉しかったです。
Hank:やっぱり、ファンの人たちと一緒に作り上げた結果なので。本当に温かい気持ちになりました。
――その後は、一度台湾に帰ったそうですね。戻ってみて改めて感じる台湾の魅力や日本の魅力などもありましたか?
Mark:日本にいるときはいつもミッションに追われて気を張っていたんですけど、台湾に帰ってからは、朝起きて「今日は何にも予定がないぞ!」という日ができたので、「本当にやることはない? 大丈夫かな?」と、追われている感じがまだ残っていました(笑)。でも、日本での結果があったからこそ、台湾でも色んな媒体さんに取材をしてもらったりして、台湾の活動にも勢いがついていきました。
JK:そういえば、台湾に帰ってからワンマンライブを2回やらせてもらったんですけど、そこにも日本のファンの人たちも駆けつけてくれたり、台湾の人たちも前よりも沢山の人が来てくれたりして、ステージに立った瞬間に本当にビックリしました。
Mark:日本に来る前は、僕らの台湾のコアファンは20人か30人ぐらいだったんです。「今回は50人ぐらい来てくれたら嬉しいな」と思っていたら会場が満員になって、日本からも30人ぐらい駆けつけてくれて……その様子を見た瞬間、本当に胸がいっぱいになりました。
JK:それに、日本のファンと台湾のファンが、僕らのライブを通じて仲良くなってくれたりもして。そういう風景を見られたのもすごく嬉しかったですね。
――以前には「日本と台湾の架け橋になりたい」という話をしてくれていましたが、実際にそういう存在になりはじめているんですね。今回日本でのメジャーデビューシングル『Garage』がリリースされますが、今はどんな気持ちですか?
Shawn:昨日も日本での取材が7つ入っていて、「メジャーデビューは違うなぁ!」と思いました(笑)。
JK:でも、プレッシャーも少し感じています。メジャーアーティストとしてこれから本格的にやっていかなければいけないと考えると、意識のうえでもパフォーマンスのうえでも、もっと頑張っていく必要があると思うので。
Hank:台湾から来たバンドが日本で活躍している例はまだあまりないので、もっと頑張っていきたいですし、日本語ももっと上手くならないといけないな、と思っています。
――渋谷O-nestでのワンマンのMCも、すごく上手いと思いましたよ。
Shawn:(日本語で)いえいえ、まだまだ頑張ります!
――今回は衣装が学生服になっていますが、これはどんな風に決まったんですか?
Shawn:僕たちは他のバンドと比べると親近感があるのが特徴だと思っていますし、つねに謙虚な気持ちで、初心者の頃の気持ちを忘れないようにしたいので、色々な案が出た中で学制服を着ることにしました。日本のインストアライブでは、この衣装で演奏する予定ですよ。台湾には学生がずっと制服を着るような文化がないので、少し不思議な気分ですね。
――さて、今回の作品にはみなさんの結成からこれまでの歩みを振り返るような楽曲が収録されているので、1曲ずつ詳しく話をきかせてください。リード曲の「Garage」は初期からある楽曲で、結成当初のエピソードが盛り込まれているそうですね。歌詞を改めて見てみたとき、どんなことを思い出しますか?
Shawn:「Garage」は僕らが結成してから一番最初にできた曲で、色んなことを思い出します。長いストーリーになりますけど、いいですか?(笑)。(日本語で)聞いてください。ダカダカダカ……(とドラムロールを表現する)。
Mark:僕以外はもともと台湾の大きなオーディションで選ばれた3人なので、結成したばかりの頃はみんな楽器もできなかったし、僕だけ経験者で、何から手をつければいいか全然分からない状態でした。僕はそれまで2つバンドをやっていましたけど、未経験の人と組むのは初めてだったんです。しかも、4人は出会ったばっかりで、どうやってコミュニケーションを取ればいいのかも分からなくて悶々としていました。
Hank:その頃は4人それぞれに悩みを抱えていました。僕はギターにまだあまり興味を持てていなくて、「モデルや演技をする方が楽しいじゃん」って思っていたし、生活の中心が、バンドよりも通っている(日本で言う堀越学園のような芸能系の名門)学校の方に傾いていて……。
Shawn:僕の場合は、その学校に入学する前にオーディションで選ばれたので、実際は僕だってこの先どうなるのか全然分からなかったのに、学校ではみんなに「きみは僕らとは違う。エリートなんだ」と仲間外れにされてしまって……。それで、学校に行くのも辛かったし、バンドでは先が見えない中でひたすら練習する日々が待っていたしで、「これから僕の人生はどうなっていくんだろう……」とすごく不安を感じていました。
Mark:いざはじめてみると、みんな思ったよりも演奏ができなくて、ちゃんとしたバンドになるまでには時間がかかりそうだな、と思っていましたね。それに、HankとShawnは台北にいて、僕とJKは台中の学校に通っていたんです。だから、僕らは往復5時間かけて練習のために台北まで通わなければいけなくて。そこで先の見えないバンド練習をして、また台中まで帰ってくる生活はすごく辛かったです。でも、そのときみんなで助け合ったことで、バンドの絆が生まれて、お互いに本音も言えるようになりました。
JK:でも、そうしている間にオーディションで選ばれた同期のモデル達はCMを筆頭に大きな仕事がどんどん決まっていって……。最初は応援してくれていた大人たちも、そっちに目が行ってしまうようになってしまって。僕たちのことは誰も見てくれないような状況でした。そのときは、「もう僕らのことなんてどうでもいいのかな」と思っていましたね。
Shawn:(日本語で)事務所のトイレの掃除もしました……。