XXXTentacion、lil peep、tofubeats……新たな波を感じる“グランジ・ラップ”5選

 Vince Staples『Big Fish Theory』

Vince Staples「Big Fish」

 ゴリラズのアルバム『ヒューマンズ』にも「Ascension」でフィーチャリング参加していたヴィンス・ステープルズが、2作目のアルバム『Big Fish Theory』をリリースしている。

VINCE STAPLES『Big Fish Theory』

 彼はカリフォルニア出身の24歳。正直、ここまで紹介してきたXXXTentacionやLil Peep、Smokepurppと彼を一緒に括るのは乱暴かとは思う。もっとオーバーグラウンドな存在だし、世代も上だ。「グランジ・ラップ」という括り方はそぐわない。しかし新作アルバムを聴いてみたらすごくよかった。もちろんヒップホップではあるのだけれど、トラックはデトロイト・テクノからエレクトロニカに至るサウンドのテクスチャーを基盤にしていて、とても洗練されている。

 ゲスト陣にはデーモン・アルバーンやケンドリック・ラマーやジャスティン・バーノンが参加。リード曲には選ばれていないが、ジャスティン・バーノンが参加した1曲目「Crabs in a Bucket」が特に素晴らしい。

tofubeats『FANTASY CLUB』

tofubeats『FANTASY CLUB』

 最後はtofubeats。リアルサウンドの読者には改めて出自を紹介する必要もないだろうが、彼が5月にリリースしたアルバム『FANTASY CLUB』がとてもよい。そして、その新譜をこの記事で紹介してきたXXXTentacionやLil PeepやSmokepurppやVince Staplesの文脈に位置づけると、いろいろとピンとくるポイントがあるように思えるのだ。特に「SHOPPINGMALL」の歌詞。

tofubeats「SHOPPINGMALL」

<何かあるようで何も無いな
ショッピングモールを歩いてみた
最近好きなアルバムを聞いた
とくに 話す相手はいない>

 この曲が射抜いているどこか茫漠とした空虚さは、不思議と通じ合うものがあるように思える。

 ちなみに。XXXTentacionは5月に公開した「Gospel」で、Keith Ape、Rich Chiggaとコラボレーションしている。

XXXTentacion「Gospel」

 Keith ApeはKOHHもフィーチャリングで参加した「It G Ma」で一躍名を上げた韓国人ラッパー。そしてRich Chiggaは弱冠17歳、インドネシア・ジャカルタ出身のラッパー。アジアとUSで当たり前に国境を超えているのにも時代を感じるし、日本でもこのあたりの動きに刺激を受けた若い世代が出てきそうな予感がする。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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