「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第37回 『MTV Unplugged: KinKi Kids』
KinKi Kids、アンプラグドで露わになった音楽の根幹 『MTV Unplugged: KinKi Kids』レポート
電源を最低限しか使わない演奏スタイル「アンプラグド」。多くの有名アーティストのアンプラグド・ライブを企画してきたMTVの番組『MTV Unplugged』に、CDデビュー20周年を迎えるKinKi Kidsが初出演を果たした。2017年5月31日の豊洲PITで、その貴重な『MTV Unplugged: KinKi Kids』の収録を見られたのはわずか800人ほどだ。
ステージの両脇には赤いカーテンが垂れ、さらにステージには20個ほどのライトが星のように輝いていた。そして、ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」のアンプラグド音源が会場に流れる中、吉田建を中心としたバンドメンバーが登場。ストリングスが調弦する音は、さながらクラシックのコンサート前のようだった。そこにパーカッションが鳴りだして、大歓声の中、KinKi Kidsが登場した。
1曲目の「ボクの背中には羽根がある」では、フルートの音色がフォルクローレを連想させた。アンプラグド編成ならではの幕開けだ。松本隆作詞、山下達郎作曲によるデビュー曲「硝子の少年」では、哀愁に満ちたアコースティック・ギターに導かれるかのように、ふたりのボーカルも艶を増していく。KinKi Kidsとストリングスのみによるパートも緊張感に満ちていた。アンプラグド編成といっても、音の厚さはエレクトリック編成に負けていない。
安藤裕子作詞作曲による「道は手ずから夢の花」では、「硝子の少年」から一転して音数の少ない伴奏とともに、オリエンタルなメロディが歌いあげられた。「愛されるより 愛したい」は、管楽器がリードしていくラテン・アレンジに。こうした意外性もアンプラグドならではのものだ。吉田美和作詞、吉田美和・中村正人作曲による「ね、がんばるよ。」は、アンプラグド向けに作られた楽曲のようにすら聴こえる。ミディアム・ナンバーの「薄荷キャンディー」では、アコースティック楽器の音色とともに、堂本光一と堂本剛のボーカルが伸びやかに響いた。
中盤はアルバムからも選曲し、堂本剛が「どうぞたくさん泣いてください」と言った後に歌われたのは「月光」。間奏とアウトロにソプラノサックスが入る以外は、ストリングスのみによる伴奏で歌われ、堂本光一と堂本剛のボーカルは聴く者にせつせつと迫るものがあった。「Love is... 〜いつもそこに君がいたから〜」もアンプラグド映えするミディアム・ナンバーだ。
吉井和哉作詞作曲による「薔薇と太陽」は、パーカッションと管楽器の響きによって熱いラテン歌謡となっていた。伊達歩(伊集院静)作詞、筒美京平作曲による「やめないで,PURE」でも、管楽器が歌謡曲の雰囲気を醸しだす。その「やめないで,PURE」の終盤で堂本光一と堂本剛がアコースティック・ギターを抱えると、吉田拓郎作曲の「全部だきしめて」へ。エレキ・ギターとアコースティック・ギターの絡み合いも心地良かった。
そして終盤は、堂本剛作詞、堂本光一作曲による「愛のかたまり」、「もう君以外愛せない」というバラード2曲で締めくくった。
ここまで音楽面について書いてきたが、随所に堂本光一と堂本剛によるMCも入り、ファンに向けたフランクで軽妙なトークも聞かせた。堂本光一と堂本剛がファンからの声をいじることもあれば、お互いにツッコミ合うことも。ライブ中は感極まって泣いているファンもいたが、MCになると笑い声が絶えず、話芸とも呼びたくなるレベルのものだった。しかも、編集するポイントを意識して、急に真面目なトークに戻ったりもするので、ファンが笑ってしまうことも。そんなKinKi Kidsとファンの交歓を見られたことも収穫のひとつだった。最終的にMCがどう編集されるのかは、7月17日の放送を楽しみにしてほしい。