『ONE OK ROCK 2017 “Ambitions” JAPAN TOUR』レポート

ONE OK ROCK『Ambitions』ツアーに見た、“人間臭いカリスマ”の魅力

「ロックバンドにすがって自分から逃げる時代は終わりました。僕たちがこのステージで歌ってさいたまスーパーアリーナを埋め尽くす時代がきたということは、音楽を受け取る側も何かしら変わらなければいけないと思う」(Taka)

 ONE OK ROCKがこれほどまでに高い人気を集めるのは、彼らが“人間臭いカリスマ”だからなのかもしれないーー最新作『Ambitions』を聴き、それを携えたツアー『ONE OK ROCK 2017 “Ambitions” JAPAN TOUR』を見たうえで、そう強く思わされた。

 『Ambitions』は、ONE OK ROCKにとってこれまでのなかで最も“可能性”の詰まったアルバムだ。英詞の割合も多くなり、サウンドはUSのエモーショナルでポップなスケール感を獲得するなど、彼らの音楽が届く射程距離を世界規模まで広げた。そして、日本語詞が少なくなった結果として、短いワンセンテンスがより際立ち刺さる構成になった歌詞、グローバルになりながらもどこか日本らしさの残るサウンドは、これまでの聴き手を魅了しながら、さらに深いところへ連れていく。バンドとファンの相互に新たなきっかけをもたらした作品といえるだろう。

 そんな『Ambitions』を携えたツアーは、直前の1月に北米ツアーを、7月からはワールドツアーを予定するなか、日本全国を隅々まで回るように32公演が行なわれた。今や世界的なバンドになった彼らが一つひとつの都市を丁寧に訪れるというのは、彼らの規模感では異例ともいえるが、それでも全国のファンに直接会いたい、一人でも多くの人に自分たちの音楽を届けたいという気持ちの表れだろう。WANIMAやReN、Suchmosといった期待の若手から、Mr.Childrenのような大先輩、海外からのゲストとしてFall Out Boyを招聘するなど、ジャンルの垣根を飄々と超えてくる幅広い共演陣のブッキングも、彼らにしかできない離れ業だ。

 ツアーが終わったいま、改めて筆者が見た3月25日のさいたまスーパーアリーナ公演をもとに、そのパフォーマンスについて振り返ってみたい。共演相手は、ONE OK ROCKが現在海外でリリースする際のレーベル<Fueled by Ramen>にかつて所属した先輩バンドであり、2013年に4年の活動休止期間を経てカムバックしたFall Out Boy。「This Ain't A Scene, It's An Arms Race」「Thnks Fr Th Mmrs」などの代表曲で会場の温度を一気に引き上げたり、「Dance, Dance」で観客を踊らせ、「I Don't Care」ではキャッチーなサビで爽快なシンガロングが響き渡るなど、シーンの先輩としての風格も見せつつ、結成から16年が経ったいまもなおフレッシュなサウンドを響かせてくれていた。

撮影=浜野カズシ

 先輩の強烈なパフォーマンスが先に行なわれたあとに、ONE OK ROCKの演奏がスタート。冒頭、シリアスなメロディの「Ambitions -Introduction-」から激しいキメの応酬へと移り変わり、Takaが<This is the end of you and me>と歌って「Bombs away」が始まる。『Ambitions』と同じ立ち上がりだが、彼らの表現力がその緊張と緩和をより効果的にもたらし、会場全体に「とんでもないライブが始まった」という高揚感が伝播する。新旧の楽曲が織り交ぜられたセットリストは、過去の楽曲をよりスケールアップして見せつつ、彼らの現在形をしっかりと提示していた。

 この公演におけるハイライトを順に挙げるとすると、まずは序盤の「Taking Off」と「Cry out」。ここ数年でスケールアップしたONE OK ROCKを象徴する2曲は、海外ツアーでも人気の楽曲だ。サビのシンガロングは全世界のファンが共通して楽しめるくらい、シンプルに削ぎ落とされながらもキャッチーなフレーズと、Tomoya(Dr.)とRyota(Ba.)による分厚いリズム、Toru(Gt.)の強烈なギターサウンドでさいたまスーパーアリーナが大きく揺れる。そして中盤の「69」は、『人生×僕=』(2013年リリース)からの1曲。元来強いメッセージ性をもつ曲だが、着実に夢を叶え、大きくなった今のONE OK ROCKが<この時代に生まれる事が出来たからこそ何かをぶっ壊す必要があって 新しい何かを築いてその何かを今度は誰かがまたぶっ壊して前に進んで行く必要がある気がする>と歌うことは、楽曲とバンドのスタンスにより深みをもたらす。

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