DISH//は5人新体制で“完全体”になったーー『2017 Spring Tour 実食会』最終公演レポート

「DISH//が5人になって良かったなって毎回のライブで思わせるんで、これからもよろしく」(北村匠海/Vo,Gt)
「この5人でずっと活動して、いろんな景色を見たい」(小林龍二/Rap,Ba)
「5人になったことを受け入れられない人にも認めてもらえるよう、めげずに最高のドラムを叩き続けます」(泉大智/Dr)

北村匠海

 今年1月1日の武道館公演で元カスタマイZのドラマー・DAICHI(泉大智)の加入を電撃発表し、スラッシャー(DISH//ファン)を大いに驚かせたDISH//。新体制の“5人のDISH//”のお披露目ツアーとなったのが、この3~5月にかけて行われた『2017 Spring Tour 実食会』だ。ツアー中盤から気管支肺炎で出演を見合わせていたギターの矢部昌暉もファイナルの神奈川県民ホール2デイズ公演で復活、晴れて5人のステージを拝めることになった。

 この2日間は構成が異なり、5月5日は5周年記念5大企画のラストを飾る「Delivery DISH//~インディーズベスト添え~」の発売を記念して、ロビーで歴代“つなぎ”コスチュームの展示が行われたほか、ライブでもインディーズ時代の楽曲を中心に披露。結成当時からのファンが涙ぐむようなシーンも多々あったという。対して取材当日の5月6日には“2017年のDISH//”を見せるセットリスト&構成で攻めていた。オープニングはご当地ネタで「東京VIBRATION」の替え歌「横浜VIBRATION」だったが、「タオル回す準備できてますかーーー???」と叫んだDJ・橘柊生のまさに全身を使ってのアクションや、全員でたたみかけるように回す歌パートであっという間にホール全体が熱気に包まれる。

小林龍二
矢部昌暉

 2曲目の「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」(H Jungle with t カバー)ではメンバー&スラッシャーがきれいに揃ったヘドバンをきめ、続く「It's alright」では楽器を演奏しながら踊る彼らならではのダンスロックバンドスタイルで盛り上げる。バンドスタイルでパンキッシュに煽る「ら・ら・ら」(大黒摩季カバー)、フロントマンの北村匠海がギターを置き熱く歌い上げる「皿に走れ!!!!」、5人のダンスで魅せる「ザ・ディッシュ ~とまらない青春 食欲編~」など、前半はメンバーも客層も若い彼らならではの全力感で進んでいく。

 そんな空気から緩やかにシフトチェンジしたのが「僕にとってはスラッシャーがまさにそういう存在です」という昌暉の言葉で始まった「僕の太陽」。キラキラのシンセサウンド×四つ打ちのリズムにスラッシャーへの思いが詰まった言葉が並ぶこの曲以降は、寸劇コーナーを挟んで、2ndアルバム『召し上がれのガトリング』の、メンバーが作詞・作曲を手掛けたナンバーを中心にした構成に。

 楽器経験のほとんどないメンバーで結成しデビューした彼らは、当初は企画色のかなり強いグループだったことは周知の事実。しかし結成からの5年半で楽器や機材の使い方を習得し、昨年発表のシングル『HIGH-VOLTAGE DANCER』からは実際に演奏しながら踊るスタイルを確立。『召し上がれの~』ではそれぞれが作詞・作曲までを手掛けるというウルトラCをきめて見せたことを思い返す。明るさと勢いがはじけるようなおなじみの楽曲群とは異なり、ここから美メロが切ない「My memory」(メンバー全員で作詞)、ブリティッシュな香りが漂う「No One Else」、ソウルフレイバーの「Loop.」(柊生が作曲、作詞にも参加)と、現在の彼らのモードを反映させたややしっとり感のあるサウンドが広がっていく。

 ちなみに合間の寸劇コーナー「万年!皿組」は、4人の通う恵比寿学園に大智が転校生としてやって来るという設定でスタート。龍二の私物のDSを勝手にモンハンをプレイしながらステージに現れた大智は、ブルゾンちえみのパロディや匠海とともに“恋ダンス”を披露するなど、なかなかの暴れっぷり。さらに続くソロ曲「D・A・I・C・H・I」では、鼓笛隊のようにスネアを抱えて客席に降り、歌いながらのドラムを披露。客席を大いに沸かせていた。

橘柊生
泉大智

 この一連の流れを見ていて、大智がこのバンドに加入したのはある意味必然だったのだろうと感じた。カスタマイZ時代からドラムが叩けて歌えるのはもちろん、役者としての実績もあり、ダンスの心得があることもEBiDANのフェス『EBiDAN THE LIVE』(2015年には超特急の「Secret Express」を歌い踊った)などで実証済み。EBiDANイチのエンタテイナー集団であるDISH//に、これほどピッタリな人材はそうはいないはずだ。

 元々EBiDANの中でも器用なメンバーが選出されているDISH//だが、ここ数年での成長は特に著しい。DJタイムでは絶妙な流れで神奈川県民ホールをダンスフロアばりに盛り上げ、曲によっては流麗なピアノも披露した柊生。龍二の作り出すグルーヴは、大智という相方を得てより力強いものになった。ギターの腕をめきめきと上げ、丁寧なコーラスで歌にも厚みを出せるようになった昌暉。何よりもフロントマンの匠海が、ウェットさを孕んだ独特の歌声をしっかりコントロールできるようになったことが大きいと感じた。

 匠海が作詞に参加した「モノクロ」前のMCで、「自分たちで作詞作曲をするようになって、音楽に対する僕らの意思が曲にも乗っかってきてる」と語った匠海。彼らの意思が反映された世界観を表すかのように、バックのスクリーンに流れていたモノクロの映像が<ねえ その右手 握らせて キミのココロがモノクロだから>の箇所から鮮やかなカラーに変わり、客席から小さなどよめきが漏れる。

 本編終盤では2010年代の「イケナイ太陽」的ダンスチューン「愛の導火線」、各メンバーがソロ演奏を披露した「TENKOUSEI」、スラッシャーの大きな歌声が会場に響いた「I Can Hear」がたたみかけるように放たれ、ラストの「FLAME」では客席のあまりの熱狂ぶりに柊生がペットボトルの水をかけたりとフェスばりのテンションで終了した。

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