兵庫慎司の「ロックの余談Z」 第16回
Theピーズ初武道館に向け、盟友たちが“エール” 兵庫慎司のARABAKIスペシャルライブレポ
12.シニタイヤツハシネ〜born to die
次のゲスト名をまともにコールしないはるに対し、ステージソデから「ちゃんと紹介しろおー!」という叫びがまず響き、それに次いでトモ登場。「俺だけ扱いが違う!」とはるをなじり、「おもてなしのオーラを感じない!」とオーディエンスもなじる。今ははるトモアビさんで武道館童貞三兄弟だけど、ピーズが武道館やったらあとはトモだけになる、どうする? というはるの問いには、「今日が俺の武道館だー!」と絶叫。意味がわからない。でもおもしろい、いつどこでいかなる時に観ても、この人は。前日の自身のステージでも、「はかまだ卓がギターのトラブルで急遽フラカン竹安のSGを借りた」という一点を延々いじって爆笑とってたし。
そしてクハラカズユキを呼び込み(彼に至っては名前も呼んでもらえなかった。はるの紹介、「ちっこいモヒカン」でした)、ツインドラム・ツインボーカルで「シニタイヤツハシネ」。後半でトモ、「♪シニタイヤーツハーシネー」のリフレインにのせて、「6月9日までは長生きしようぜ!」と絶叫。そして曲のシメの「ジャーン!」に合わせてジャンプしながらクラッカーのでっかいやつを発射するが、見事にタイミングがずれる。
13.生きのばし〜14.焼めし
トモが去り、キュウちゃんが残って4人編成で「生きのばし」をプレイ、そしてはるが「ありがとー! ラストー! Theピーズ、行って来まーす! 天国で会おうぜ!!」と叫んで、ラストの「焼めし」に突入。
曲が始まると、コータロー以外の出演者全員、あとフラカンのグレートマエカワ&ミスター小西もステージに登場。みんなで大いにピーズの3人を盛り上げる……と書きたいところだが、ノボリを持っているグレートとかはいいとしても、ほかは、ギターもしくはマイクなしでステージに出されてもどうしていいかわからないみたいな、なんというか、バラエティ対応力の低い方ばかりで、笑顔だけどどこか間がもたない感を漂わせながら手拍子していたりして、その不器用さも含めて「ああ、ピーズの仲間たちだなあ」という説得力があったのでした。あ、もちろん「東洋一間のもつミュージシャン」トモさんを除きます。
最後にはるが「ほんとありがとうございました!」と、真剣にオーディエンスに感謝の意を伝え、この濃密でハッピーな時間は終了した。
さあ、これであとは6月9日の日本武道館を待つばかり。と思ったら、1年半ぶりのニューシングル『異国のブラボー』をリリースすることが、この『ARABAKI』の2日後に発表になった。5月3日から配信開始、6月7日に盤で全国発売。ここまでこのテキストを書いて、ふとTwitterを見て知ったところです、私も。2曲目にやった「ブラボー」は、このシングルの収録曲です。
それから、同じく6月7日にベストアルバム『ブッチメリー SIDE C (2003-2005 SELECTION』が、かつて所属していたキングレコードからリリースされることも、すでに発表になっている(ファンはご存知でしょうが『SIDE A』と『SIDE B』は2001年に出ている)。
Theピーズ知らない、という人や、知ってたけど興味ない、という人にまで来いとは言わない。いや、来てくれるならうれしいが、そこまでは望まない、正直。しかし、これまでの人生で一度でもTheピーズにひっかかったことがある人、ピーズの曲に目を覚まされたり、横っ面をひっぱたかれたり、救われたりしたことのある方は、ぜひ武道館に足を運んでいただきたいと強く願う。そういう人が集まれば、それだけで満員になるだろうと僕は思っているので。
(撮影=河上良)
■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「CINRA」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。