シングル「お義父さん」リリースインタビュー
はなわ「お義父さん」誕生の裏にあった感動秘話「家族に実際起きた話をリアルにさらけ出した」
お笑い芸人のはなわが、奥さんの誕生日にプレゼントした楽曲「お義父さん」が今、話題になっている。この曲は2016年3月、奥さんへのサプライズプレゼントとして作られたもの。その後、単独ライブで初披露すると大反響を呼び、2017年3月4日(奥さんの誕生日)にそのライブ映像をYouTubeに上げたところ、わずか20日間で再生回数100万回を超えることとなった。「なんど聞いても泣けます」「最初は楽しくて、途中驚いて、最後は涙が」など、動画にはたくさんのコメントが付き、彼の芸人仲間やタレントもSNSに感想を書き込むなど、感動の輪は広がる一方だ。
上のコメントにもあるように、最初は「ほのぼのとした家族ソングかな?」と思いきや、奥さんとその父親の、意外なエピソードが明かされていき、最後には感動的なメッセージが待っている。そんな見事な曲構成も、聴きどころの一つとなっている。
今回、この楽曲「お義父さん」の音源リリースが決定したと聞き、制作秘話などを聞こうとはなわ本人を訪ねたところ、「後日談」としてさらに驚き&感動のエピソードを語ってくれた。そしてインタビュー後半では、彼の“コンポーザー/ベーシスト”としての側面にも迫った。(黒田隆憲)
「このタイミングで聞かせられたのも、本当に良かった」
ーーはなわさんの新曲「お義父さん」は、元々は奥様の誕生日プレゼント用に作ったものだったそうですね。
はなわ:実を言うと、ずっと前から嫁さんにプレゼントする曲を作りたいなと思っていて。何度かチャレンジしてきたんですけど、うまく出来なくて断念してたんですね。
ーー今回の曲は、すぐに作れたのですか?
はなわ:いや、やっぱりなかなか出来なくて。ただ嫁さんに向けての曲を考えていたんですが、普通のラブソングにしても面白くないなと思って、それで色々悩んでいたんですよね。そこで、10年来の知人でもある寺岡呼人さんにアドバイスをもらって、ブラッシュアップをしていき、完成することが出来たんです。
ーー歌詞はどのようにしてつくったのですか?
はなわ:うちの嫁さんはとにかく「天然ボケ」なので(笑)。そのうち「嫁さんってどういう生き方をして来たんだろう」みたいになって、お義父さんは嫁さんが生まれてすぐ家を出て行ったというエピソードも加えて……歌詞としてまとめる時には、お笑いの歌にするか、ちょっと泣かせる系の歌にするか、結構悩んだんです。色々試行錯誤したことを覚えています。
ーーじゃあ、歌詞に書かれていない「天然ボケ」エピソードもたくさんあるんですね(笑)。
はなわ:最初はこの5倍くらいの長さだったんですよ(笑)。それをなんとか絞り込んで、形にまとめ上げました。
ーー実際に、奥さまの前で歌った時の反応はどうだったのですか?
はなわ:うちの嫁は、泣いたりするのをすごく恥ずかしがる人なので、「歌は嫌だ」ってずっと言ってたんです。「お涙頂戴的な、歌とかは絶対やめてほしい」って。それでいざ本番になり、僕がギターを持って嫁の前に現れたもんだから、「やめてやめて!」みたいな感じになっちゃって。でもまあ、場の空気も読んで、嫁もようやく聴く体制になったんですけど、「この歌は、智ちゃん(妻)のお父さんに宛てた歌です」って言った途端、「え、言ってなかったことがあるんだけど!」って言い始めて。
ーーえ?
はなわ:これから歌う前に、変なこと言われたらどうしよう? と思って焦りますよね(笑)。なので、聞こえなかったことにして歌い始めたんですよ。そうしたら、歌の途中くらいから嫁が号泣し始めて。こんなに泣いているところは見たことがなかったので、僕も感極まって泣きながら歌いました。子供たちはすごく驚いていたんですけど。
ーーそうですよね……。
はなわ:それで、その場は無事に終わったんですけど、その後に嫁さんが「実は……」って言い出して。1週間くらい前に、親戚から連絡が来て、嫁のお父さんが末期ガンになっていると。「智子に会いたがっているらしいんだけど、会う気ある?」って聞かれたそうです。嫁はちょっと悩んだけど、僕や家族に迷惑をかけるかもしれないと思ったのか、(会うのを)断ったそうなんですね。その数日後に僕が、こんな歌を歌ったものだからビックリしたらしくて。
ーーええ。
はなわ:「このタイミングで、こんな歌を歌ってもらったということは、会いに行ったほうが良いのかな」って嫁さんに言われて。それで、スケジュール調整しながら行く日を決めました。僕らが住んでいる佐賀市から車で2時間くらいのところに住んでいたので、嫁と二人で車に乗って向かったんです。
ーーはなわさんも初めてお会いするわけですよね?
はなわ:もちろん会ったことなかったし、「どんなお義父さんなんだろう、すげえ怖かったらどうしよう」って思ったんですけど、会うなりものすごく歓迎してくれたんです。まあ、病気なので辛そうではあったんですけどね。新しい家庭があり、その方と2人で住んでいて。それで、途中までは穏やかに話していたのですが、急にお義父さんが「俺のこと、恨んだだろう?」と言って泣くんですよ。そしたら嫁さんも泣いちゃうじゃないですか。さらに関係ない俺が一番泣いて(笑)。
ーーいや、そうなりますよね。聞いてるだけで僕も泣きそうです。
はなわ:その後、長男の柔道の試合が福岡であった時も、一度見に来てくれて。そこで、今度は嫁の姉とも再会するわけなんですけど、嫁の姉は、歌詞の中でも書いたようにヤンチャな人だったので(笑)、大丈夫かなと少し心配してたのですが、時の流れってすごいなと思ったのは、みんなで普通に会話をしていたんですよね。子供たちも、「おじいちゃんに初めて会えた」って喜んでいました。
ーーこの曲、単独ライブでも披露したそうですね。
はなわ:そうなんです。嫁への歌だし、単独ライブで歌うつもりはなかったんですけど、マネージャーが「あんな良い曲なんだから、アンコールだったらいいじゃないですか」って言ってきて。僕の単独ライブって基本的に「お笑い」ですから、こんな曲やってもどうなんだろう……と不安でもあったんですけど、まあ、せっかく作ったんだし、アンコールで歌ったんですね。そしたらものすごい反響で。ライブハウス会場にすすり泣く声が、「こんなの初めてだな」っていうくらい漏れてきて。ライブが終わって、お客さんを送り出す時も、みんな目を真っ赤にしながらその曲のことばかり話してくれるんですよね。
ーーそういう反響も、今回のリリースのきっかけになったわけですね。
はなわ:ええ。ただ、自分の家族に実際起きた話をリアルにさらけ出している歌なので、僕だけで決められることじゃないなと。歌の中に出てくる人たちに、ちゃんと許可を取ってから出そうと思って、それでようやく今回リリースが実現して。レコーディングでは、曲作りでもアドバイスをいただいた、寺岡呼人さんにプロデューサーとして入っていただき、アレンジを考えていただきました。
ーーYouTubeでの反響もすごかったみたいですね。
はなわ:そうなんです。自分でも驚いています。SNSのパワーってすごいんですね。今まで、どこかでちょっと疑ってたんですけど(笑)。
ーー奥様へのサプライズバースデーから、今回のリリース実現までの間にも、そんなドラマティックなことがあったのですね。それにしても、「歌の力」というものに、改めて驚かされました。ある意味、何人もの人たちの人生を変えたわけですよね。
はなわ:本当にそう思います。
ーーもし、はなわさんが歌を作っていなかったら、お義父さんは二度と娘さんやお孫さんたちにお会いできなかったかもしれないわけですし。
はなわ:そうなんですよ。このタイミングで聞かせられたのも、本当に良かったと思います。お義父さんの体も、だいぶ弱ってきていますしね。きっと、これまで過去をずっと引きずったまま生きてきたと思うんですけど、最後にこうして和解ができたのは良かったんじゃないかなと思いますね。