忘れらんねえよ、這い上がり続けたバンドの現在地ーー兵庫慎司が日比谷野音ワンマンをレポート

忘れらんねえよ、這い上がり続けた“現在地”

 2017年4月2日、『ワンマン ワンワン! ワンマン! 野音でワオーン!』と銘打って、単独ライブとしては自身過去最大キャパの日比谷野外大音楽堂に挑んだ忘れらんねえよ。直前まで柴田隆浩(Vo/Gt)がTwitterで「あと2時間で野音ワンマン前売りおしまい! かけこみかもん!」と宣伝していたり、当日券が出ることが告知されたりしていたので、「完売はさすがに厳しいか」とも思ったが、当日券が好調だったようで席がすべて埋まり、立見も出るソールドアウト。

 忘れらんねえよは、大きく言うとふたつの場として、この日比谷野音ワンマンを位置づけた。と、観終わって思った。

 ひとつは、これまでライブハウスや各地のフェス、イベントなどでやってきたことを、同じように徹底的にやる場として。いつものように柴田、オープニングで[Alexandros]の「ワタリドリ」をSEにして客席中央から登場、「ドロス風のみなさんが俺をステージまで運んでくれるそうです!」とスタッフたちに抱えられ、飛行機ポーズで客席一周してからオンステージ(ちなみに「ドロス風」というのは、スタッフ達が黒いロングカーディガンを身に纏っていた)。いつものように柴田+梅津拓也(Ba)+サポートのマシータ(Dr)でSEXジャンプをキメてから演奏開始。「日比谷野音、神聖なる聖地で下ネタのコール&レスポンスってダメじゃないですか?」と言いながら、いつものようにオーディエンスと「サンキュー!」「SEX!」の掛け合いをやる。

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 後半ではいつものように柴田が恋ダンスを踊り(ただし終わると同時にスモークが出たのは「いつものように」じゃなかった。曰く「これこそね、特効のムダ遣いってやつですよ」)、いつものようにフラワーカンパニーズから借りてきた「ヨサホイコール」でオーディエンスをあおる。

 「ばかばっか」で柴田が「客席頭上を運ばれて会場後方までビールを買いに行ってイッキ」を見せるのも、いつもどおり。アンコールの「忘れらんねえよ」で「みんなスマホ出して!」と叫び、客席が左右に揺れるスマホの光とシンガロングで埋まったのもいつもどおりだったし、翌日に柴田がその映像を貼ってツイートしたのもいつもどおりだった。

 なお「客席後方にビール買いに行ってイッキ」は、柴田によると「ほんとはこれ、野音じゃやっちゃダメらしいんだよ」とのこと。特別に許可をとるべく、がんばって交渉したと思われる。つまり、障壁があっても「いつもどおり」を貫いた、ということだ。

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 そして、もうひとつは。若さもコネも知名度も恵まれたルックスも何ひとつ持っていない、スターでないどころか一般人よりも低い低い位置で生息する、真性非リア充な地べたからスタートして、じわじわと這い上がってきたバンドの到達点として、だ。言い換えれば、そんな場であるがゆえの、歓喜や感慨や祝祭に満ち満ちた時間として位置づけた、ということだ。

 1曲目、「下北のちっちゃなライブハウスからやって来ました、忘れらんねえよです!」という雄叫びから3人だけでスタートした「バンドワゴン」では、歌詞の<高速道路のその先に でかいステージがある でかいステージがある いつかたどり着ける>を「たどり着けた!」と変えて歌った。2曲目以降は、昨年から今年にかけてライブを支えてきたサポート・メンバー、爆弾ジョニーのロマンチック☆安田(Gt/Key)とLEGO BIG MORLのタナカヒロキ(Gt)のどちらかが(曲によっては両方が)加わった。18曲目「まだ知らない世界」以降は、忘れらんねえよのプロデュースも手がける松岡モトキも、何度もギターで参加した。

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