弓木英梨乃が見せた、プロデューサーとしての資質 遊佐未森、Negiccoとの共演をレポート
2ndステージでは、弓木英梨乃が今度はNegiccoがパーソナリティーを務める「ネギネギレディオ」に悩みを投稿して、Negiccoの音声による「ねぇバーディア」の曲紹介へ。そしてステージにNegiccoが登場して、弓木英梨乃らによる演奏で「ねぇバーディア」を歌った。ソウルのテイストが濃い「ねぇバーディア」にも、弓木英梨乃たちの演奏はしなやかに対応してみせた。
弓木英梨乃はNegiccoのライブにも行っており、一緒にライブをするのが夢だったということで、感無量といった雰囲気。ところが、同じステージに立ったとたんに「自分に自信がない」と言いだし、Negiccoに「私たちもそう」と励まされて、「自信ない系女子」談義になる一幕もあった。
弓木英梨乃が「なんか曲でもやります?」と言った後も会話が脱線しながら続いたが、「(4人の)チームワークを見せつけるぞ!」ということになり、Negiccoもマラカスなどを手にして、弓木英梨乃のアコースティック・ギターの伴奏による「矛盾、はじめました。」へ。弓木英梨乃のソリッドなストロークとともに歌われた「矛盾、はじめました。」は、オリジナルのアレンジと大きく雰囲気の異なるものだった。
弓木英梨乃が「Negiccoに入りたい」と言うと、「Negiccoはもともと4人いた」という話になり、弓木英梨乃が「なんで辞めたんですか?」と言いだして脱線する場面もあったが、とにかく4人でやることに。4人のユニット「ゆみねぎ」として、バンド演奏をバックにして、KIRINJIの「Mr.BOOGIEMAN」をカバーした。歌って踊る弓木英梨乃が見られたのは、この日の2公演でこのときだけだ。
歌い終わると、弓木英梨乃があっさり「では脱退します」と言って再びギターを抱え、バンドによる生演奏で「光のシュプール」へ。「Negicooは3人のハーモニーが素敵」と言う弓木英梨乃のアレンジにより、1960年代ガールズ・ポップ・グループ風のアレンジで演奏された。アレンジャーとしての弓木英梨乃の才能が光った1曲でもあった。
ゲストとのコーナーが終わると、渡辺シュンスケがキーボードで弾く「星に願いを」をバックにして、弓木英梨乃とバンド・メンバーがストーリーに戻って語り合う「宇宙に向かってうたおう」のコーナーに。そのメドレーでは、デヴィッド・ボウイの「スターマン」や坂本真綾の「うちゅうひこうしのうた」も歌われた。
弓木英梨乃のファンキーな資質が全開になったのが「CCSC」。5拍子の楽曲で、しかも歌以外の演奏パートになるとファンクに変貌し、痛快なほどだった。かと思うと、「決戦は火曜日」はヘヴィメタルのようなハードな演奏によるインストルメンタル。最後の「Good Night」は、渡辺シュンスケのキーボードのみを伴奏にした歌から、メロウな演奏へと展開していった。
ライブ中、弓木英梨乃は楽曲ごとにアコースティック・ギターとエレキ・ギターを持ち替えていた。ときにアーシーで、ときに繊細、ときにファンキーで、ときにハード。そんな弓木英梨乃のミュージシャンとしてのさまざまな資質を音楽で体感させながら、ゲストとのトークでフランクな人柄をも見せたのが弓木英梨乃の「弓木流 vol.2」だった。
(撮影=矢沢 隆則)
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter