SILENT SIRENが“てっぺん”に登るために選んだ道ーーブレない信念で挑んだ東京体育館公演

SILENT SIRENは“てっぺん”を目指す

 SILENT SIRENはファンとの距離感を大切にしてきたバンドだ。ファンクラブをはじめ、ミート&グリートやリリースイベントなど、直接触れ合う機会を大事にしてきた。日本武道館、横浜アリーナへと人気が拡大しようともそのスタンスを変えなかった。

 この日、そうしたサイサイとサイファミらしい関係性を象徴する場面があった。

 それは『Dream on!』にちなんで、「サイファミの夢をサイサイが叶える」という企画だった。サイサイのイベントを機に知り合い、結婚することになった男女2人をステージに呼び込み、目の前で生演奏のプレゼントを贈った。楽曲は「ハピマリ」。2015年に、とある一組のサイファミカップルのプロポーズを後押しするために作られたウエディングソングである。演奏中、たくさんのサイファミカップルの写真がスクリーンに次々と映し出されていく光景も印象的であった。ファンと直接の交流があったからこそ生まれた楽曲が、こうしてまた多くのファンの幸せを招いてることの証明でもあった。

 レーベルを移籍しても、そうしたファンとの距離感を変えないこと、バンドのスタンスを変えるつもりはないことを、リーダーであるひなんちゅは終演後に自身のブログに綴っている。

 捲き起こるアンコールの中、スクリーンに映し出された「重大発表」は新曲とメンバーによるセレクションアルバムのリリースという嬉しい知らせであったものの、「レーベル移籍」には場内騒然とした。「ガールズバンド史上最速の武道館公演」であったり、「読者モデル出身」という経歴も相俟って、何かと派手に見られがちな彼女たちだが、実際は地道な活動で築き上げてきたからこその結果である。良い楽曲と良いライブ……バンドとして当たり前のことを当たり前のように自分たちで作り上げてきた。そして、それを支えるレーベルを含めた制作チームがいた。そのことをサイファミはみんな知っていたからだ。

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 そんな中、初披露された移籍第一弾シングル曲「フジヤマディスコ」はファンキーなギターのカッティングとスラップベースが印象的な、ちょっと古めかしいディスコサウンドを感じる中毒性の高いナンバーだった。サイサイ節直球のハッピーソングでもなければ、王道ロックナンバーというわけでもない。新たなスタートを切るこのタイミングで、インパクトのあるタイトルを含め、あえて変化球を持ってきたことに、現在のバンドとしての自信と余裕を感じた。それは同時に、環境が変わろうと、何が変わろうともブレることのないサイサイの揺るぎない信念にも思えた。

「富士山って、誰でも知ってるじゃない? そんな存在になりたいし、そのてっぺん登って、いい景色を見たいし、みんなにもいい景色を見せたいなと思っています」

 すぅが力強く口にした。2015年1月、初めて日本武道館に立ったとき、彼女は「根拠のない自信でここまでやってきた」と語っていた。あれから2年、横浜アリーナ公演、海外ツアーなど、彼女たちはバンドを着実にアップデートしてきた。あのときの「根拠のない自信」は「確固たる自信」に変わっているはずだ。それが如実に表れていたライブだったし、だからこそのバンド名表記変更とレーベル移籍であるように思う。この日、最後の最後に過去最大規模となる『5th ANNIVERSARY SILENT SIREN LIVE TOUR 2017 『新世界』』も発表された。ファイナルは日本武道館2Daysだ。Silent Sirenあらため、SILENT SIRENとともに“いい景色”が見られる日は、そう遠くないはずだ。

(写真=SATOSHI HATA)

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

SILENT SIRENオフィシャルサイト

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