欅坂46が初ワンマンで示した「坂を登り続ける」覚悟
「私たちは坂を登り続ける」ーー平手友梨奈は有明コロシアムに集まった9000人の前でそう言い放った。結成から1年4カ月、デビューからわずか8カ月余り。欅坂46が12月25日に有明コロシアムにて開催した初のワンマンライブは、メンバーのパフォーマンスに帯びた凄み、これまでデビューから丹念に積み上げてきたグループコンセプトをひしひしと感じさせるとともに、「ここからまたスタートする」という気概に満ち溢れたものであった。
2016年、欅坂46はアイドルシーンを席巻した。デビューシングルの『サイレントマジョリティー』は初週で約26万枚を売り上げ、女性アーティストのデビューシングル初週売上歴代1位を記録。その3カ月後にはメンバーが総出演&初主演を務めるドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)がスタートし、ドラマ主題歌となった2ndシングル『世界には愛しかない』、3rdシングル『二人セゾン』では3作連続の初登場1位を記録。大晦日にはデビューから僅か8カ月で『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出演を果たした。
彼女たちが異例の紅白出場を成し遂げられたのは、単純な記録的セールス面だけではない。1stシングル『サイレントマジョリティー』から緻密に練られたコンセプト作りが功を奏したのは明らかだ。グループの支柱とも言えるコンセプトは、ライブ1曲目に披露した「大人は信じてくれない」にも受け継がれている。<いいことなんかない 退屈な毎日さ>と平手が吐き捨てるように歌い始め、ステージの前にはゆらゆらと炎が上がり、一心不乱に頭を激しく上下に振るメンバー。エレキギターが鳴り響くロックサウンド色の強いこの曲で1stワンマンライブの幕を開けるとは、何とも心憎い。
顔に前髪がかかった状態の、アンニュイな表情を覗かせる平手が「有明コロシアム、かかってこい」とドスの利いた声で客席を煽り、そのままダンスチューン「語るなら未来を…」へ。白と黒を基調とした大人びた演出の中、キレのあるダンスを披露していく。「サイレントマジョリティー」で示された、大人や世間からの抑圧に立ち向かうイメージは「大人は信じてくれない」「語るなら未来を…」といった、クールな側面を持つ楽曲に色濃く継承されている。
同じ坂道シリーズである乃木坂46において、生駒里奈がグループ初期のセンターを務めたように、欅坂46では平手が1stから3rdシングルまでのセンターを張っている。都市開発中の渋谷で撮影された「サイレントマジョリティー」のMVは、その都市の風景を真空パックするかの如く映し出しているが、平手の初のソロ曲「渋谷からPARCOが消えた日」も街の時代背景を刻みつけた楽曲である。この曲はタイトルが表すように、現在閉鎖となっている渋谷PARCOを歌ったもの。MVと同じ真っ赤なスーツで客席通路に現れた平手は、スタンドマイクを前に艶っぽく歌唱する。ステージ中央には長方形の巨大スクリーンが設置されていたのだが、画面いっぱいに平手の鋭い眼光が映し出された時にはカメラワークさえもコンセプト演出の中にあるのか、と感服するばかりであった。
欅坂46には、いくつかのユニットが存在する。デビュー前の『お見立て会』時からすでに組まれていた小林由依、今泉佑唯のフォークデュオ“ゆいちゃんず”は、欅坂46におけるグループユニットの先駆け的存在と言える。2人はアカペラによる「渋谷川」で美しいハーモニーを会場に響かせた後、ギター演奏に乗せたパフォーマンスを続けた。1stシングル収録のこの曲はイベント出演時には必ずと言っていいほど披露してきた楽曲だが、その場数の経験値からか、出だしのアカペラも堂々としたものであり、続く「ボブディランは返さない」ではムーディーな雰囲気を醸し出していた。
平手、長濱ねる、ゆいちゃんずの計4人からなるユニット“てちねるゆいちゃんず”の「夕陽1/3」では、スクリーンに校舎が夕陽のオレンジに染まる様子が映し出され、それをバックに無邪気な笑顔で歌い踊る4人がいた。続けて、欅坂46メンバー全員での歌唱曲「制服と太陽」が歌われた。「夕陽1/3」と同じテーマの“スクールライフ”、<Let’s get started>と繰り返される歌詞、そしてラストに集合写真のようにピースサインを浮かべる様子は、イノセントな気持ちを呼び起こさせた。