姫乃たま『First Order』インタビュー
姫乃たまが乗り越えた、アイドル活動の葛藤 「やりたくないことをやるのが仕事だと思っていた」
「CDを買うのって楽しいな」って感じてほしい
——姫乃たまさんはご自分を「売れないアイドル」と言いますが、僕とジョルジュの制作のトチ狂った忙しさといい、ライターとしての売れっぷりといい、もはや単なる「地下アイドル」ではないですよね。売れているのでは?
姫乃:売れてないですよ! ちょうど一昨日、河井克夫さん(漫画家)と話していて、「サブカル漫画家の定義は漫画家以外に仕事をしていることだ」と言われたそうで「それだな」と! 私もライブだけしているわけではないので、売れてない感がありますよね。雑務とか余計な仕事が多いのは売れてない証拠じゃないですか?
——事務所に入る気はないんですか?
姫乃:嫌じゃないけれど、特にメリットがないんですよ。お話はあるんですけど、話してみると「お手伝いできることはないです」と向こうから断られたり(笑)。
——とはいえ、ライター仕事は多いですよね?
姫乃:単価が低いし、使い勝手がいいから忙しいんじゃないですか?
——身も蓋もないですね……。『First Order』への音楽ジャーナリズムからの反応はどんなものでしたか?
姫乃:良かったです、僕とジョルジュより良かった! 僕とジョルジュは誰がいるのかわからないのがハードルになっていたんだと思います(笑)。今回は、ずっと私が使ってきた芸名ですから。デモを送ったらTKDさん(DJ、漫画原作・構成者)からの反応が良くて、博報堂の人が雑誌に広告を載せてくれました。
——その反響を受けつつ、2017年2月7日には渋谷WWWでワンマンライブ『アイドルになりたい』を開催しますが、どんなライブになりそうですか?
姫乃:不安です。でも、チケットを売り切りたいですよね。強気でいきますよ! 実際に思ったより売れてるんで!
——強気ですね!
姫乃:ソロで地味なので、今回は映像もゴリゴリ入れるし、舞台装飾も凝りたいです。振り付けもがんばっています、今までなかったぐらいに。僕とジョルジュも出るし、来てくれた人が楽しんでくれるような仕掛けをしていこうと思います。
——タイトルが『アイドルになりたい』なのはなぜでしょうか。小西康陽さんがプロデュースした林未紀さんの「アイドルになりたい。」(2007年)へのオマージュでしょうか?
姫乃:森川美穂さんのアルバムが「おんなになあれ」というタイトルで、すごくいいなと思って。それに匹敵するタイトルにしようとして、『アイドルになりたい』にしたんですよ。アルバム・タイトルも最初は『アイドルになりたい』だったんです。でも、CDよりチケットのほうが締め切りが早くて、印字したチケットを見たら「違うな」と感じたんですよね。小西さんのこともネットで知ったし、岸野雄一さんが「レコードコンビニ」をしていて、常盤さん(常盤響。林未紀『アイドルになりたい。』のアート・ディレクター)も近くにいるので「同じタイトルにするのもなぁ」と思って変えました。アイドルに抵抗がある人もいるので、広く届くようにしました。
——そうなると、どんな層に『First Order』を聴いてほしいですか?
姫乃:あんまり音楽を聴かない人に聴いてほしいですね。「音楽を聴くの楽しいな」「CDを買うのって楽しいな」って感じてほしいです。特殊仕様だからジャケットが手で折られているのは気づいていたけれど、ホッチキスも手作業なんですよ。iTunesでダウンロードするのではなく、CDで買いたくなるものを作れたのが良かったと思います。中身もいいと思います! 2月も来てくれ〜!
——ワンマンライブの話になると口調が変わってますよ! 楽しみにしています!
(取材・文=宗像明将)
■リリース情報
『First Order』
発売:2016年11月23日(水)
価格:¥ 2,592
<収録曲>
1. 来来ラブソング
2. ねえ、王子
3. マジで簡単なコネクション
4. DSK019
5. 愛はさかあがり
6. 拝啓ジョーストラマー
7. 静かに静かに
8. 言いたいことがあるんだよ
9. おかえりのうた
10. そういうこと
11. さよならのワルツ
12. 人間関係
13. くれあいの花