ぼくのりりっくのぼうよみが見せた、シンガーとしての可能性  初ワンマン詳細レポート

 

「ライブアクト」としてはこれから

 今回のライブで、ぼくりりは自身の楽曲の独自性とシンガーとしてのポテンシャルの大きさを十分に見せつけた。一方で、デビューから1年での初ワンマンライブ、しかもまだ18歳ということからもわかるようにライブアクトとしての場数はまだまだ少なく、それゆえにステージ上での立ち振る舞いには「伸びしろ」が感じられる部分が多々あったのも事実である。たとえばライブ終盤では少し息切れしているような感じもあり、フルセットのライブを一人でこなす(大勢のバンドをバックに揃えているわけではないので自身にかかる負荷は自然と大きくなる)ためには今後フィジカル面での強化が必須となってくるはずである。また、ライブのクライマックスだった「Sunrise(re-build)」における「曲入りを繰り返し間違えて歌えなくなってしまい最終的にはオーディエンスにヘルプを頼む」という展開は、ファンの温かさに助けられて「ライブらしいハプニング」っぽくなってはいたものの、本来的にはプロとしてやってはいけないレベルのミスだと思う。さらに、楽曲が表現するシリアスなメッセージとMCでの脱力した佇まいのギャップに関しても、今後取り扱うテーマの深さや重さが増していく中で早いうちに整理する必要があるのではないかと感じる(このあたりに関しては「飄々としている」という形で好意的にとらえる向きもあると思うが、個人的には楽曲が放っているディープな空気が曲間のMCによってスポイルされてしまっている印象を受けた)。

 この日のライブでは来年3月から全国ツアーが始まること、そしてツアーファイナルは今回の会場よりも大きな赤坂BLITZで実施されることが発表された。1か月弱の間に計8カ所を回るこのツアーは、ぼくりりの地方のファンへのお披露目であるのと同時に彼にとっての「ライブアクトとしての武者修行」という役割も果たすはずである。彼がユニークな感性を持った稀有な表現者であることは紛れもない事実であり、今時点で存分に表現されているしなやかなキャラクターにステージへ立つことに対する「覚悟」が加わった時、シーンの歴史が一つ塗り替えられることになるかもしれない。来年リリースの『Noah’s Ark』、そして全国ツアーを経てそんな瞬間に立ち会えることを楽しみにしたい。

 

(写真=平田 浩基)

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

■オフィシャルサイト
http://bokuriri.com/

関連記事