Flower、『THIS IS Flower THIS IS BEST』全曲レビュー前編(DISC1)

 Flowerが9月14日にベストアルバム『THIS IS Flower THIS IS BEST』をリリースした。同作はこれまで彼女たちがリリースしてきたシングル表題曲を、現体制で再度新録したものや、人気カップリング曲などを多数収録。CDだけで2枚組26曲、DVDも含めると4枚組の超大作だ。今回リアルサウンドでは同作をDisc1、Disc2に分け、全収録楽曲のレビューを行う。第一回となる本稿では、メンバーがDisc4に収録されているドキュメンタリー映像のインタビューで「自分たちが世界観を出していかなければいけない段階」と語るタイミングでのベストアルバムについて、シングル表題曲を集めて新体制で収録したDisc1の楽曲面におけるグループの歴史と、新録曲での進化を紐解いていきたい。

「Still (version2016)」

 グループ結成のきっかけとなった『VOCAL BATTLE AUDITION 3』の合宿審査・最終ライブ審査課題曲であり、彼女たちのデビューシングル表題曲。プロデュースは松尾潔が手掛け、作曲を川口大輔、編曲を中野雄太が担当するという盤石の布陣で制作された。ほぼ同時期にデビューとなったE-girlsとの差別化を図ったこともあってか、この段階から楽曲面でR&B色の強い大人の雰囲気を醸し出しており、のちの活動の大きな指針ともいえるものに仕上がっている。

「SAKURAリグレット (version2016)」

 1stシングルに引き続いて松尾潔がプロデュースを行ない、前作でアレンジを務めた中野雄太が作編曲を担当した「SAKURAリグレット (version2016)」は、四つ打ちのビートに和を感じさせるメロディーラインと、ガット・ギターによるスパニッシュな音色が混ざりあい、春ソングにも関わらず切なさや空しさの感情を多分に含んだ1曲。4年と少しの時間を経て新緑された今回のバージョンでは、鷲尾伶菜のボーカルがキャリアを重ねたことで、艶やかさが増したことを感じさせてくれる。

「forget-me-not ~ワスレナグサ~ (version2016)」

 彼女たちにとって初のTVアニメタイアップ曲となった3rdシングル表題曲。クラシック音楽などに造詣の深い三橋隆幸が作曲を、EXILEの「Ti Amo」や「Lovers Again」といった名曲を生み出したJin Nakamuraが編曲を手掛けている。特徴的なシンセサイザー音がクセになるイントロから、徐々に盛り上がっていく展開で、ファルセットで歌い上げる箇所も多く、Flowerとしても新境地といえる楽曲だ。

「恋人がサンタクロース (version2016)」

 松任谷由実の名曲を、松尾潔と盟友・Maestro-Tこと豊島吉宏が大胆にもダンサブルなトラックに生まれ変わらせた、Flowerにとって初めてのカバー表題曲。E-girlsも過去の名曲たちをカバーし、ライブ定番曲として家族で来場するファンたちを盛り上げており、グループとしてのひとつの共通性を見出すことができる。

「太陽と向日葵 (version2016)」

 Flowerにとってキャリア史上最も大きな転機といえるのがこの楽曲。Hiroki Sagawaのヨナ抜き音階をベースとしたオリエンタルなサウンドと、作詞家・小竹正人が初めて彼女たちに提供した抒情的な歌詞が見事にマッチし、現在のFlower像を形作るきっかけとなった。

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