くるりのベスト盤に感じた、音楽を生み出すことへの真摯さーー9月14日発売の注目新譜5選

DAOKO『もしも僕らがGAMEの主役で/ダイスキ with TeddyLoid/BANG! 』(SG)

 “テクノロジーを駆使するミレニアム世代の女子高生ラッパー”としてメジャーシーンに登場したDAOKOのトリプルAサイドシングル。「もしも僕らがGAMEの主役で」は、気鋭のトラックメイカー・小島英也(ORESAMA)との共同作曲による楽曲。80sエレポップ風のサウンドの中で示されるのは、バーチャルとリアルの関係が変貌し続ける現在と、そのなかで生きる意義を捉え直そうとする意志。シリアスなテーマを極限までポップに描くセンスはまさに彼女の真骨頂と言えるだろう。「ダイスキ with TeddyLoid」は鋭利なビートを軸にしたヒップホップ・トラックとともに<自己満足はやめて、大好きなことを貫け。最初の動機を蘇らせて、やりたいことをやろう>というメッセージを放つ精神的アッパーチューン。楽曲の進行とともにウィスパーからストロングボイスへと変化する声の表現も強く心に残る。そして「BANG!」はクラップを活かしたサウンドメイクと<全部嘘だけど愛してくれる?><ねぇ、アタシと死ねるの?>という小悪魔的フレーズがひとつになったアイドル風ラブソング。まったく表情が違う3曲だが、すべてがDAOKO。本当に底知れぬ表現フィールドを持ったアーティストだと思う。

DAOKO「もしも僕らがGAMEの主役で」

Flower『THIS IS Flower THIS IS BEST』(AL)

 デビュー5周年を記念したベストアルバム。EXILE、三代目J Soul Brothersなどと同様、ボーカルダンス・グループの特性を活かしたダンサブルな楽曲が中心だが、ひとつひとつの楽曲にフォーカスを当ててみると、大衆音楽としてのわかりやすさと音楽的な個性、そして、女性らしい繊細さ、上品さを感じさせる鷲尾伶菜のボーカルを活かしたサウンドメイクが共存していることがわかる。松尾潔のプロデュースにより、R&B的なブラックネスと歌謡的な情緒性がバランスよく体現されたデビュー曲「Still」、シンプルな4つ打ちのビートとドラマティックなメロディ、<心に嘘はつけない 溢れる愛しさが 胸をしめつけても>という川村結花の歌詞がひとつになった「forget-me-not」(アニメ『機動戦士ガンダム AGE THE BEST』)など、ポップスとしての豊かなパワーを持った楽曲が数多く並んでいるのだ。「恋人がサンタクロース」(松任谷由実)、「やさしさで溢れるように」(JUJU)などのカバー曲も幅広いリスナーを広げる効果を発揮。本当にLDHは隙のない仕事をしていると思う。

Flower「他の誰かより悲しい恋をしただけ」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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