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中村一義の楽曲にはなぜ“突き抜け感”がある? 『ERA』再構築ライブ発表を機に楽曲分析

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 日本テレビ系アニメ『エンドライド』のエンディングテーマであるニューシングル「世界は変わる」を8月10日に配信リリースした中村一義が、2017年2月18日に東京・新小岩の江戸川区総合文化センターで、『エドガワQ2017〜ERA最構築〜』と題するライブを行なうことを発表した。

 この日、42歳の誕生日を迎える中村の地元・江戸川区で行なわれる同公演は、2000年リリースのアルバム『ERA』を「再構築」した2部構成になる模様。それまでほぼ一人で作り上げてきたレコーディングスタイルから一転、細野晴臣をはじめ、後に100sを結成する池田貴文や玉田豊夢、さらに岸田繁(くるり)や真島昌利(クロマニヨンズ)ら多数のゲストを迎えて制作された『ERA』は、中村にとってターニングポイントとなった作品。それが17年の月日を経てどのようなカタチで鳴らされるのか、大いに期待が高まるところだ。そこで今回は、彼の代表曲を振り返りながらソングライティングの魅力に迫りたい。

 まずは1997年にリリースされた記念すべきファーストアルバム『金字塔』から、「犬と猫」「永遠なるもの」を聴いてみよう。どちらもシングルカットされたこの2曲は、「中村一義」という存在を日本のロック史に深く刻み込んだ代表曲である。「状況が咲いた部屋」と名付けられた自宅の一室でデモを制作し、それをもとにほぼ全ての楽器を一人で演奏し作り上げたこの時期の楽曲は、ドラムのタメやギターのピッキング、歌の息遣いに至るまで全てが有機的に絡み合い、まるで曲そのものが生き物のようにうごめいている。リッケンバッカーのギターやヘフナーのバイオリンベース、ラディックのドラムなど、ビートルズが使っていた楽器を用い、まるで彼らが乗り移ったかのようなフレーズを随所に散りばめていたのも印象的だった。

 「犬と猫」は、プリンスの「New Position」を思わせるリズムボックスがブレイクした後、<どう?>と叫ぶハイトーン・ボイスが今聞いても強烈なインパクトを放つ。サビ始まりで、コード進行は<B – F#onA# – EonG# – EmonG – B/BonD# – EonB/B – E – B – D#7onA#>と進む。半音で下降していくベースラインと、後半のつんのめるようなドラムのフィルがポイント。メロディはビートルズの弟バンドとしてデビューし人気を博したグループ、バッドフィンガーの「No matter what」を彷彿させる。続くセクションは、<G#m – E – B – EonB/B – G#m – E -F#onA# – F#sus4/F#7>。シンプルなコード進行だが、やはりベースがルートを避けることで浮遊感ある響きを作り出し、ファルセットで歌われるシンプルなメロディの美しさを際立たせている。また、この部分のギターバッキングは、90年代に活躍したスコットランド出身のホワイトアウトの「No Time」のリズム感にインスパイアされたものだろう。

 「永遠なるもの」は、スモール・フェイセスの「Afterglow (Of Your Love)」を思わせる導入部からサビへとなだれ込む。まるでモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」のように舞い踊るメロディが印象的で、コード進行は<D/F#7 – Bm/D7 – G/A – Bm・BmMaj7/Bm7 – F#7 – Bm/E7 – G/A>という、「カノン進行」(参照:SEKAI NO OWARI楽曲分析 http://realsound.jp/2015/10/post-4922.html)の応用型。この<I – III7 – VIm – I7 – IV – V – VIIm – VIImMaj7 – VIIm7>というパターン(セカンダリードミナントコードIII7、半音下降のクリシェVIIm – VIImMaj7 – VIIm7)は、中村の楽曲の中でしばしば使われるもので、彼のトレードマークといってもいいだろう。ここはキーがDだが、Aメロで3度下のBに移調し、<B/BMaj7 – B7 – EmonG – F#sus4/F#>と展開。ベースは3小節目で入ってくるのだが、Emに対して短3度のGをあて、次のF#sus4へ半音で降りていく。Bメロで再びキーDに戻り、<GonB – DonF# – EonG# – Asus4/A>と進む。ベースはずっと3度をキープし、ドミナントコードでようやくルートに落ち着く。このふわふわ、もやもやした感じが、サビの「突き抜け感」を強調しているのだ。ちなみに展開部では、<C/G – D – C/G – D>というコード進行に対し、ミクソリディアン・スケールのダイアトニック・コードC(VII♭)が用いられている。メロディは、ルート音レに対して短3度であるファでブルージーな雰囲気を出し、他のセクションとの強烈なコントラストを付けていて、<悪者が持つ孤独が、みんな、解るかい?>という歌詞をより強く印象付けている。

      

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