TURTLE ISLANDインタビュー
『橋の下世界音楽祭』主催者・TURTLE ISLANDが語る、海外と日本のフェスの違い
「必要なこととして生まれた『お祭り』」(愛樹)
ーー海外のフェスやフジロックを経験して、橋の下に生かされたことは?
愛樹:まず、俺たちは震災のこと、原発のことを思って。それを思ったときに、それを問題として軌道修正しようと考えてたら「何十年もかかって軌道がズレてきたことを修正していくなら、自分たちの文化ーー踊り方や歩き方、ライフスタイルそこから見つめ直していかなきゃと。思い出さなきゃならない」と考えましたね。例えば阿波踊りを観たときに、なんでかよくわかんないけど涙が出たり自然に盛り上がったりするのかとか。海外のものでも消化され自分のものになったものは、盛り上がりでも大きく違うと感じています。
ーー日本人だからかどうかわかんないけど、橋の下に行ったら“これは絶対に楽しい”っていうのが肌でわかるよね。
竹舞:本当に自分たちの心が動かされるフェスを追求すると、橋の下みたいなフェスになるんです。私たちも一番突き動かされる。やっぱり地元で、地元の人たちとやってるっていうのは大きいのかもね。
愛樹:興行としてのフェスティバルか、地元で仲間たちとつくるお祭りなのかっていうのは、同じような「フェスティバル」って名前をつけたとしても、全く別ものだっていうのはある。あくまでも俺たちは、興行とかイベントを企画としてやってるのではなくて、今まで暮らしてきていろんなことが起こった上で、必要なこととして生まれた「お祭り」だから。ずっと前から祭りをやりたかったけど、震災をきっかけに何かしたいと思ったとき、いま俺たちが愛知でデモをやるのはリアルな感じがしなかった。「だったら俺らはなにをやるのかな」って考えたとき、お祭りだった。「いろんな人が来て心と魂を浄化する」みたいな、そういうポジションだと思っています。
ーー橋の下は今後も続けていくの?
愛樹:もう、一生やろうと思ってます。地元で昔からあるお祭りってあるじゃないですか? 自分たちなりに、ああいうものと同じような神事だと思ってるので。でもあんまり思想を全面に掲げないようにはなるべく心がけてます。もちろん思想はありますが、それは根底にあれば勝手に表れてくるだろうし。それよりも自分たちを浄化するようなものにしたい。ライブって小さな祭りじゃないですか。ハードコアとかパンクって特に。1回1回やるときにホワイトアウトしてみたいな……ああいう感覚しか信用してないし、きっとそういったものをずっと求めてるんだと。根源はGIGにある。そういうことをお祭りとしてやりたいなと。
ーータートルアイランドの動きもそうだよね。橋の下がタートルアイランドがやっていると考えると、すごく“そうだよな”ってなる。
愛樹:そうですね(笑)。
ーーそれにしても、投げ銭であんなにデカい祭りになっているのは凄いよ。
愛樹:街でたまに会ったやつとかに「実はあのとき金が無くて投げ銭払えなかったんで、いま払います」とか、関係ないときに払ってくれたりすることもあって、うれしいです。
ーーそれを心意気として感じられる人間が橋の下に来るんだろうね。子どもがゴミを拾ってくると「ぬ」っていう橋の下だけのお金がもらえるシステムもいいよね。あれ見てたら大人はゴミを捨てなくなる。
竹舞:その循環はありますよね。フェスが終わったあとのゴミがひどかったりするあの感覚がどうしても私たちにはわからないし「そこはできないんだね?」って思ってしまう。
愛樹:橋の下は祭りなんだけど3日間の生活だから。本当はもうちょっといろいろやりたいんだけど。
ーーマッサージ屋があったり、朝にはヨガをやってたり、朝までやってる飲み屋があったりもするね。
竹舞:その人たちがやれることを、その場でやってるという。
愛樹:みんながゴミを持ち帰る、それだけが答えではないし正解でもないんだけど、あるひとつの選択肢として実践してみたいというか。アナーキズムじゃないけど、こういう社会の中で生きてて本当にアナーキーっていうのはなかなか難しいじゃないですか。でも、なるべくそれに近い社会の中に在りながら「自立した自分たちの」っていうものを、ああいう祭りの中で実践してみたいっていうのはあります。橋の下は太陽光発電を使用してるんですけど、出店してる店舗も年々自家発電が増えてきて。発電機はうるさいから禁止にしたんです。静かな環境なので。それでバッテリー貸し出したりしてもやってたんですけど、結構みんな自分でマイバッテリー持ってきたりとかやり始めて。あれも段々そのうちパンクスが「廃バッテリー屋」とかやり始めて、バッテリー売ったりとかするんじゃないかな(笑)。
ーー江戸時代みたいになんでも商売になって職人になっていくみたいな感じだね。あぶれる人間がいないっていう。
愛樹:そういうのが本当の意味で豊かっていうことだと思う。
ーー誰もが存在していられるというね。
愛樹:そこですよね。
竹舞:今年は特に次が見えた感じですね。いままでやってきて、4年目で冷静に土台をつくってきたことがなんとなくわかってきて。愛樹君が各部署に今回はこうしたいってことを伝えると、そこでもう自立してできるようになったのが、5年目の今年でした。もちろんびっくりすることもたくさんありましたけど。電気の線を張ったあとに、そこを通れないようなでっかい山車ができちゃったり(笑)。
愛樹:設計書がないからジャムセッションとかインプロみたいな感じ(笑)。それが面白いっすよね。
竹舞:みんなで考えるのが橋の下の面白いところですね。
ーーだから上手く行くんだね。みんなが合わせようとするから。
愛樹:うまくいかせるしかないって思いですね。生き延びるしかないってのと同じです。
ーー最後に、5月26日に出た新作『洒落頭』についても訊いていい?
竹舞:今回はTURTLE ISLANDの中でも「パンク歌舞伎」をやったときのメンバーで録ったんですけど、ベースには篠ちゃん(T字路s / Cool Wise Man)に参加してもらいました。
ーーライブ録音の曲はパンク歌舞伎のライブだけど、パンク歌舞伎はどのぐらいやってるの?
愛樹:3年やって2年休んで、この前4回目やって。使命感だけで毎年やるみたいにはならないよう。今年はどうだ?やれそうか?やりますか!と、なったらやるみたいな感じで。
ーーパンク歌舞伎をやろうと思ったきっかけは?
愛樹:いま70歳の原智彦さんっていう役者でパンク歌舞伎の主催の人がいるんですけど、その人がもともとロック歌舞伎スーパー一座っていうのを、30年ぐらい名古屋の大須演芸場でやってて。それが終わる解散前最後の演目をたまたま観に行って。そしたらメチャメチャ面白くて。
ーー歌舞伎をやりながらの音楽は、ロックなんだ。
愛樹:そうですね。元ボ・ガンボスのどんとが、ローザルクセンブルクの頃に原さんと一緒にやってて。77年くらいの時代にロンドンで1カ月間、自分で箱を勝手におさえて、勝手に行って、勝手に宣伝して、勝手にやったら、結構客が来て。アムステルダムとかでもやってたみたいです。
根木:80年代のロンドンのパンク雑誌に結構出てるらしいです。
愛樹:原さんは本当はやめようと思ってたみたいだけど、舞台終わりに俺らのCD渡したら、次に会ったときに「あれ、聞いたぞ! やめようと思ったけど、やっぱりやろうか」って。それで、ロック歌舞伎から「パンク歌舞伎にしよう」みたいなことを言い出して、俺らが演奏を担当することになりました。曲はもともとある曲を使ったり、稽古しながらそれを見たりして、そのストーリーと自分たちにいま起こってることと、原さんが思ってることと、そういうのを全体的に引き寄せ考えながら、半年ぐらいかけて曲を作りました。
竹舞:今まで私たちがやってた演奏と違って、このセリフのときにこの音を出すとか、何かに合わせて演奏するっていうのを初めてやって。もう5年ぐらい経ちますけど。
ーー新しいアルバムに関して言いたいことは?
竹舞:音源はいつもね、足跡というか。
愛樹:俺、本当はCD作るの嫌なんすよ。めっちゃ嫌なんすよ。みんなが作りたいって言うのと活動費の経済的理由で一応やるけど(笑)。
根木:愛樹は最初にタートルで一緒に始めたときとか、「根木ちゃん。死ぬまでずっと一緒にやってくけど、あんまりプロモーションしないで」って(笑)。
愛樹:フジロックにプロモーションしたのを知ったときも俺めっちゃ怒って「そういうのやらないでほしい」って(笑)。今回は芝居の中で作ったんだけど、なるべく芝居をやるときも芝居のために曲を作るみたいなことはやりたくなかった。芝居をやりながら、自分たちの日常で起こっていることを摺り合わせて、その間のギリギリの落としどころを見つける、という感じでいつもやってます。それを感じてもらえる作品になってると思います。
■TURTLE ISLAND / 亀島楽隊
1999年20世紀末 豊田市にて結成。幾多のメンバーチェンジを繰り返し、現在は和太鼓、篠笛、あたり鉦、シタール、タブラ、馬頭琴、ジェンベ、ドゥンドゥン等各国の様々な土着楽器とギター、ベース、SAXなど西洋楽器を使い 日本のお囃子やチンドン等 日本やアジア、モンゴロイドのGROOVEと、パンクやロック、レゲエサウンドから民謡、各国土着音楽まで勝手雑多に飲み込んだ極東八百万サウンド。
日本、アジア近辺の土着ズンドコビートと独自の世界観や節回しを磨きつつ自分たちのルーツ、遺伝子、細胞、魂の踊る音楽を模索追及しながら国内外で活動中。
■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST
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