太田省一『ジャニーズとテレビ史』第十七回:KAT-TUN、3人体制での出演番組
KAT-TUN、逆境で見せた「たくましさ」 田口脱退表明後の出演番組から読み解く
KAT-TUNが5月1日の東京ドーム公演をもって、充電期間に入った。田口淳之介の脱退により3人になった彼らだが、グループの将来を見据えていったん個人の活動に専念することを選択した。
もちろん田口の脱退は本人の決断を尊重せざるを得ないとは言え残念なことだし、充電を経ていつどのようなかたちでグループが再出発するのかもまだ明らかではない。しかしいまはいったんそのことは置いておこう。何よりも田口が脱退を表明した昨年秋からここまでのKAT-TUNが逆境とも言えるなかで見せた姿は、とても魅力的なものに感じられたからだ。
それについてはやはり、この3月まで放送されていた『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』(『タメ旅』)(TBSテレビ系)の存在がひとつ大きかったように思える。
この番組は、特番時代からジャニーズアイドルの冠番組としてはあまりそれまでにないようなものだった。お金を持っていない4人が、青森や沖縄など見知らぬ土地で自ら交渉して食事や宿を確保するドキュメンタリーバラエティ。マグロ漁船に乗せてもらうが船酔いでダウンしてしまったり、地元の高校生と交流したりと台本のない旅は、過酷ながらも彼らの素の部分やメンバー同士の関係性を垣間見せてくれた。
さらに『タメ旅』で効果的だったのは、「天の声」と称するスタッフによる容赦のないメンバーいじりである。最近のバラエティではおなじみの手法だが、この番組でのぐいぐいくる感じは、相手が芸人でもここまではいかないだろうと思わせるくらいのものがあった。実は特番の第1回が放送された2014年1月は、メンバーが5人から4人になった直後だったが、天の声はいきなり点呼を取り出し、「4」で終わると「もう一人いたろ?」とツッコんでいた。そんないじりはレギュラー化後も続いた。
だから今回の田口の件が発表されたあとも、それはタブーにはならなかった。むしろそれが定番ネタになっていった感がある。それもあり、『タメ旅』は、アイドルが挑む良質なドキュメンタリーバラエティというだけでなく、KAT-TUNというグループのいまを伝える目を離せないドキュメンタリーにもなった。
そもそも田口本人よる脱退表明も、昨年11月『日テレ系音楽の祭典 ベストアーティスト』(日本テレビ系)の生放送中に行われるという異例のものだった。また今年3月の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)への4人での最後の出演時には、スペシャルメドレー中に途中で4人から3人になるという演出があり、感極まったメンバーが涙を流す場面もあった。その意味では、冠番組である『タメ旅』はもちろん、局や番組ジャンルの垣根を超えて、私たちは彼らの歴史の重要な場面をテレビの画面を通してこの数か月間ずっと目撃してきた。
そして4月、3人になってからも彼らのストーリーは続いた。