「ポストロック×アイドル×ジュブナイル」は何を生み出す? sora tob sakanaサウンドプロデューサー・照井順政に訊く

「ポストロック×アイドル×ジュブナイル」は何を生み出す?

事務所に残響レコードファンがいて、「ポストロック×アイドル」を提案された

--sora tob sakanaに関わることになった経緯を教えて貰えますか?

照井:僕はハイスイノナサというバンドをやってて、ポストロックをやっているアーティストが集まる<残響レコード>に所属しています。Zi:zooに<残響レコードファン>の方がいて、「ポストロックとアイドルを組み合わせたものをやってみたい」という構想がずっとあったそうです。Zi:zooさんと最初に仕事をしたのは4、5年前で、PIECEというグループの楽曲提供でした。ほどなくして解散してしまうんですけど、2014年3月にはミニアルバムが発売されています。PIECEはメンバーも大人だったし、歌詞も自由な感じでした。オサカナは2014年7月結成なんですけど、僕が関わったのは結成からではなく、オリジナルの2曲目「クラウチングスタート」からです。発表は2015年の1月くらいだったかと。

--ハイスイノナサとオサカナの音楽の違いって何でしょうか?

照井:ハイスイノナサはボーカルが特徴的で、感情を排除して、音楽に奉仕するというか、歌い手としての欲求や人間っぽさみたいなものは基本的には出さないで、作品としてもいいものを出す、というスタンスです。でも、僕は歌ものも大好きで、「そういうものを書いても結構いいものは作れるのにな」という気持ちがあったんですね。思いっきりそういうことをやれる場所を作りたいなとずっと思っていて。それがオサカナである程度できています。あと歌詞をもっと具体的な内容にして、「弾き語りで聴いてもいい」っていう曲を作りたかった。

--もともとアイドルに興味はあったんですか?

照井:人並ですね。日本の音楽チャートに興味がなかったので。僕は1984年生まれなんですけど、鈴木亜美くらいですね、アイドルで好きだったのは。CDを借りて聴いて、ギターでコピーしたりしてました。

--実際アルドルに関わることになり、カルチャーショックもあったのでは?

照井:とりあえずライブが多いですよね。1日で3現場あるとか。あれはバンドにはないので。特典会も長いなって。「ライブには間に合わないから、特典会から行く」とか。その考え方には驚きました。あと、お客さんとの関係も強いなと。MIX(客が曲中に入れるコールの一種)によって曲自体の盛り上がりが変わったり。

「少年期やジュブナイル的なものを描いたら絶対負けない」という思いがあった

--歌詞についてですが、「いつかまた悲しい気持ちに なっても大丈夫 魔法の言葉 君を思い出すから」(魔法の言葉)、「正しさを計る大人を疑って 笑ってたあの子に言えなかった言葉」(My notes)など、思春期の頃の後悔や不安などについて書かれていることが多いですよね。実際、少年時代に何かあったんでしょうか?

照井:そうですね。小学校のときに何人かでいたずらをして、怒られたことがあって。僕も関わってたんですけど、当時は僕と数人だけバレておらず、怒られなかったんです。その時に名乗り出れなかった後悔もありますし、縄跳びを飛んでたときに、 縄が飛んでっちゃって、友達の目に当たっちゃって。それがそこそこの傷になっちゃって。でも彼は「自分でやったんです」って言ってて。今思えばめっちゃ男気あるやつなんですけど。でもオレは怖くて何も言えなくて。そういうすれ違いとか、あの頃はいっぱいあったと思うんです。あとは音楽性との兼ね合いが大きいですね。ポップでハッピーな曲を書いてれば、こういう歌詞にはなってないと思うんですけどね。

--少年期やジュブナイル的なものに対してすごい執着があるんでしょうか?

照井:すごい好きなんです。そこを描いたら絶対負けないぞ、という思いがあったんです。ハイスイノナサでもちょいちょいそういう曲はあったんですけど、やっぱりバンドのイメージがあって振り切れないものがあったんで。

--影響を受けた作品はありますか?

照井:大槻ケンヂさんの「グミ・チョコレート・パイン」や、マンガでいうと松本大洋さん、五十嵐大介さんの作品。音楽家でいうと高木正勝さんが扱う子供や自然といった題材も好きです。あと、建築が好き。中でも廃墟が好きなんですけど、残されたものに宿っているものとか、かつてそこに何かがあったとか。いろいろ想像できるところが好きですね。

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