まなみのりさ5thワンマンライブレポート なぜ特別な意味を持つイベントとなったか?

まみり5thワンマンライブレポート

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結果=Results

 実は僕は、というよりこの日取材に訪れていた人たちはたぶんみな、事前に異変を察知していた。ライブ前に囲み取材の時間が持たれたのだが、受け答えをするまなみの声が荒れ気味だったからだ。おやっ!?と気に掛かったものの、「練習のしすぎか何かで声がちょっと嗄れてしまったのだろう」と解釈して、特に問い質そうとまでは思わなかった。

 まなみ自身もおそらく、ライブが始まるまではそこまで深刻に捉えていなかったのではないか。事実、オープニングの「逆襲のポラリス」のアカペラでは大過なくハモりをこなしていたくらいだ。

 だが曲が進むにつれ、急激に声が出なくなっていった。まなみの危機を察したみのりとりさは、咄嗟に意志を疎通して彼女のパートを分担し、ライブを成立させることにひたすら腐心した。この日ステージ上で起こっていたのはそういうことだったのではないか。
(追記。後日、まなみがブログで、実はワンマン数日前から声が出なくなっており、医師の処置で何とか歌えるコンディションに持っていっていたのだが、結局みのりとりさに頼ることになってしまったと謝罪した。以上の記述はしたがって事実と異なるが、そのときの印象の記録ということでそのままにしておく)

 ファンも敏感に異変と危機を感じ取っていたに違いない。ライブを通してフロアは十二分に盛り上がっていたように見えたし、アンコールでのまなみの告白のあとに歌われた「νポラリスAb」では会場の利を活かした大きなポラリスサークルがうねるように回っていた。アンコールラストの「逆襲のポラリス」でも大いに拳が突き上がっていた。

【まなみのりさ】「νポラリスAb」MV(Full ver.)

 その熱気を僕は、何があろうとこのライブは成功させなければならないのだという決意と焦燥に駆られたファンからのエールであると受け留めた。

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 そしてダブルアンコール。メジャー復帰第2弾として、7月5日に、移籍したFORCE MUSICから新曲が発売されるという発表があり、初披露された。ライブ終了後には、新曲発売に先立つ7月2日にTSUTAYA O-WESTで6thワンマンライブ開催が決定しているとの発表もなされた。途中のMCでは『TOKYO IDOL FESTIVAL 2016』への出演が決まったという発表もあった。

 新曲は2曲。「真夏のエイプリルフール」は4つ打ちのリズムが特徴的な、りさいわく「おしゃれ」な曲だ。女の子の切ない恋心を歌った歌詞。ライブ前の取材でみのりは「ど直球の恋愛を歌った曲がまなみのりさには意外と少なくて。前作の『νポラリスAb/逆襲のポラリス』がサウンド的に激しかったこともあったので、プロデューサーにイメージを伝えてお願いしました」と話していた。一度聴いたかぎりの印象でしかないが、「いい湯だね」「そりゃそうだね」といった意外性のあるフレーズが、メロディのフックに当てられていて耳に残る。

 もう1曲は「Results」。ミディアムテンポの重めな曲調である。そんなサウンドに、彼女たちの現在の心境を映した詞が載せられている。りさは「歌詞をもらったとき鳥肌が立った」と語った。tetsuhiko氏によると、メンバーからの希望を受け容れて歌詞は書かれたそうだ。人生の大半をスクールおよび芸能活動という、良くも悪くも一般的とはいえない環境で過ごしてきた彼女たちが、これからの人生をファンの人たちとともに切り拓いていくための決意を込めたという。

 2つの新曲が完成したのはようやく今朝(ライブ当日の朝)だったとtetsuhiko氏は苦笑していた。当然ながらレコーディングもまだだという。「じゃあ、初披露はダンスなしで?」と漏らすと、振付を担当しているまなみが間髪を容れず「頑張りました!」と満面の笑顔で答えたのが印象的だった。

 初演された「Results」で、まなみがマイクを口元に運ぶことはついになかった。しかし、それを咎める気配は会場のどこにもなかった。

 この曲を披露する前に、みのりは「結果」についてこう述べた。

「まなみのりさにとって“結果”とは、今の自分たち。今立っているここから見える景色がスタートライン。そして未来への通過点だと思います。この最高の景色の場所に立たせてくれて本当にありがとうございました!」

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 この5thワンマンライブ『MMResults~まみりざるつ~』が成功裏に終わったかと問われれば、手放しに称賛できるものではなかったと答えざるをえない。

 だが「結果を残せたと思うか」と聞かれたなら、未来へと繋がる「結果」が十分に力強く示されていたと答えるのに躊躇しない。良いライブだったし、まなみのりさは素晴らしいグループだとあらためて思った。

 数日後、アイアンクリエイティヴからまなみの症状について報告があった。声帯結節と診断されたそうだ。治療にはそれなりに時間がかかるようで、しばらくはみのりとりさ二人だけの活動になるということだった。

「Results」にこういう一節がある。

 打ちのめされて 悔しさが心を揺さぶった
 汗と涙が混ざったら 澄んだ透明の色になった
 雨が止んだら 霧が晴れたら 空を見上げて歩いてゆける
 わけなんかないさ 行くしかないさ 何があるかも知らないままで

 まるで予言のようだ。この日「結果」を手にした彼女たちにもはや焦りや不安はないだろう。ファンたちにもたぶんないだろう。まなみが戻ったあかつきにはきっと一回り大きな姿をステージで見せてくれることだろう。

 そして、この5thワンマン『MMResults』は伝説になるだろう。

 あの場所に居合わせた者にそんなふうに思わせること。それこそが、まなみのりさの見せた「結果」にほかならないだろう。

■栗原裕一郎
評論家。文芸、音楽、芸能、経済学あたりで文筆活動を行う。『〈盗作〉の文学史』で日本推理作家協会賞受賞。近著に『石原慎太郎を読んでみた』(豊崎由美氏との共著)。Twitter

■セットリスト
M00. 逆襲のポラリス(アカペラサビ)
M01. ポラリス Episode ZERO
M02. どうしよ!?
M03. 花魁サンダー
M04. キライじゃないのぉ
M05. WALKING MERMAID
M06. BLISTER
M07. 桜エトランゼ
M08. レモンサイダーと夏休み
M09. きっとここで逢える
M10. センチメンタルライオット
M11. CQ.CQ…~横浜エディション~
M12. ポラリス
M13. ポラリスB
M14. PUNKISH PRINCESS
M15. OH! PLEASE
En1. Home Again ~愛のみそ汁~
En2. νポラリスAb
En3. 逆襲のポラリス
WEn1. 真夏のエイプリルフール(新曲)
WEn2. Results(新曲)

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