作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第7回

zoppがももクロ新作で試みた“作詞家の作曲術”「ライバルだった人たちと一緒に仕事ができる」

――ただ、作曲も始めたとなると、作詞だけを手掛けていたころより、完成までの時間は相当増えたのでは?

zopp:はい。でも、「楽しいことをやろう」という思いで集まった人たちでもあるので、たとえ時間が掛かったとしても、そこまで苦ではありません。いまは全体の仕事のうち、作詞が3割、コライトでの作曲が7割くらいになっています。

――面白いですね。キャリアを重ねていかれたタイミングで、ミュージシャン的な目覚めがあったと。

zopp:そうですね。でも、ピアノをやっていた経歴があったりと、最初から職業作家っぽいキャリアを歩んでいたわけではないです。作詞に関しても、商業音楽的なものよりも、海外バンドの楽曲を訳詞するところからスタートしたので。ただ、バンドものをやりたいのかと言われればそうでもなくて。自分の好きなアーティストだと、コールドプレイがまさに理想なのですが、彼らもバンドとしてのキャリアを確立しつつ、ビヨンセやアリシア・キーズとコラボレーションするなど、様々なジャンルのミュージシャンと絡んでいますよね。僕のルーツはU2にあるのですが、コールドプレイとU2はプロデューサーが同じ(ブライアン・イーノ)です。イーノが手掛けた作品は情景描写が豊かで、実験的な音色を多く入れているにも関わらず、ポップミュージックとして世界に通用するものを作っている。僕自身もその表現技法には強い影響を受けていて、歌詞を書くときには、なるべくその向こう側にある環境を楽しんでもらえるようなものにしたいと思っています。

――今後、作詞家をメインにしつつ、コライトでの制作を手掛けるにあたり、目指していることはありますか。

zopp:自分に限らず、作詞家もコンペを待っているだけだと自分の可能性を試せないので、どんどん他のクリエイターと絡んでいけばいいと思います。例えば、作曲家が書く曲に仮詞を付けて提出し、そのまま採用されれば自分の手柄ですよね。個人的には、自分が作曲に携わることで、同じクレジットに並ぶことのない作詞家の方と一緒に仕事できたら嬉しいです。だって、作詞家として秋元康さんとコラボすることなんてないわけですから(笑)。今までライバルだった人たちと、一緒に仕事ができるというのは、自分の作詞家としてのキャリアにおいても、良い経験になると思います。

(取材・文=中村拓海)

■リリース情報
『ソングス・アンド・リリックス』
発売日:2016年1月15日
発売元:講談社文庫

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