POLYSICS・ハヤシ、サシ飲みで本音明かす「もっと『What's This???』なバンドになりたいのよ」

POLYSICS・ハヤシにサシ飲み取材

 POLYSICSが3月2日、2年2カ月ぶりとなるフルアルバム『What's This???』をリリースする。リアルサウンドでは本作のリリースを記念し、POLYSICS・ハヤシと、彼らと十数年来の付き合いのある音楽ライター・兵庫慎司によるサシ飲みインタビューを実施。トレードマークのつなぎとバイザーを脱いだ“素顔”のハヤシが、現在の自身の心境について素直な思いを語った。(編集部)

「もがいてるけど、結果が出せてないし、突破口が見えない感じはあった」

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 3月2日にリリースになるPOLYSICSのニューアルバム『What's This???』を聴いて、初めてこのバンドを観た時のことを思い出した。1999年、最初にインディ・リリースした『1st P』のレコ発でバンド初のワンマン、持ち曲が少なくて30分で終わった下北沢CLUB Que。当時はまだフミもヤノも加入前で、今もいるのはハヤシひとりだし、演奏もライブのやりかたもまだ幼いことこの上なかったし(メンバーみんなギリ10代だったと思う)、将来的に、メジャーで長年活動したり、何度も海外ツアーを行ったりするバンドになるとは、誰も思っていなかった頃だし……書いていて思い出したけど、そうだ、「あのバンド、すごいけど3回観たら飽きる」と言われていた頃だ。ただ、それだけに、なんだかわからない勢いとインパクトだけはめったやたらとあったPOLYSICSが、スキルと経験とIQを得てすさまじくビルドアップした状態で帰ってきた、そんなアルバムなのだ、『What's This???』は。超うるさくて超キャッチーで、超ピコピコしてて超ギャンギャンしてて、そして超おもしろい。曲、短いくせにガンガン展開していって、聴き終わる時にどこに連れて行かれるのか全然読めない。全19曲、刺激だらけ。POLYSICSのバンドの強い部分だけ、武器になる部分だけ、おいしい部分だけを使ってアルバムを作りなさい、という問いに正面から応えたような、この理想的なアルバムに辿り着くまでを、20周年まであと1年に迫ったベテラン(全然老けないけど)、ハヤシにききました。(兵庫慎司)

──今、バンドのバイオリズムとしてはどういう時期なんですか?

ハヤシ:ああ、どうだろう? ……まあ、もっといろいろトライしていこうみたいな、そういう時期かな。まあ、ぶっちゃけ、厳しい時期ではあるんだけど、厳しいながらも昨年の夏以降かなあ、なんかちょっと「ん?こういうことかな」みたいなのが、わかってきたっていうか。あのミニアルバム2枚を作ってから(『HEN 愛 LET'S GO!』と『HEN 愛 LET'S GO! 2〜ウルトラ怪獣総進撃〜』。2015年3月・7月リリース)。

──じゃあそれまではけっこうもがいていた?

ハヤシ:もがいてるけど、結果が出せてないし、突破口が見えない感じはあった。

──それは音楽的な煮詰まり? セールスとか動員とかの状況的な煮詰まり?

ハヤシ:あ、もう全部。自分にとって『ACTION!!!』(前作フル・アルバム/2014年1月リリース)が大きかったかな。ちょっと「あれ?」みたいな。自分のやりたいことが、あんましおもしろがられてない気がした。自分としては、いまだに聴くぐらい気に入ってるし、益子(樹/プロデューサー)さんとやったあのレコーディングは、自分にとってもすごい大きかったんだけどね。音の作り方だったり、「こんなおもしろい音楽ができるのか!」みたいな喜びがあったんだけど、数字で見ると、意外にしんどくなってしまった、みたいなのがあって。

──それは作品のせいですかね? CDが売れなくなってるのは事実だし──。

ハヤシ:ちょっと前はそう思ってた。でも、言うても、売れてるバンドもいるわけじゃん? 時代のせいにはしたくないかなあ。だからって、そこで自分の音楽性は変えないんだけど……『ACTION!!!』は気に入ってるけど、このままじゃいけないよね、って考えたし。で、もっと振り切った、濃いものを作ろうよ!っていうことになった。

──それが昨年のミニアルバム2枚?

ハヤシ:うん。あれは、より濃いものを作ろうっていう時で……もともと、「Dr.Pepper!!!!!」のアイディアがあったんだよ。キューンのスタッフが、「ドクターペッパーってPOLYSICSっぽいですよね」って言い出して。長い歴史があるし、日本での位置って、「これ大好きなんだよね」みたいな人がめちゃくちゃ多いけど、一般的ではない、みたいな。「ああ、確かにそうだね。俺ドクターペッパー好きだし、この立ち位置って合ってるかもしんない」って思って、「Dr.Pepper!!!!!」を作ったのね。それで、自分の偏った好みをわかりやすく出すのもいいんじゃないか、っていう話になって、『HEN 愛 LET'S GO!』っていうミニアルバムのアイディアができたのね。
もともとは、偏愛もので企画アルバムを出そうって言った時に、ハヤシヒロユキがいちばん偏愛してるのはウルトラ怪獣だから、ウルトラ怪獣のアルバムを作ろう、っていう話になったんだけど、最初からウルトラ怪獣で作るよりは、もうちょっとライトな偏愛が伝わるものがいいよね、ってなって、それで最初に食べ物飲み物で1枚、ウルトラ怪獣で1枚、ミニアルバムを出そう、ってなったの。「とことん濃いものを作っちゃおうぜ! やったれ!」みたいなので作ったのね。

「ほら、もともとは、ライブで食パン投げてビビらせようぜ!みたいなところから始まったバンドじゃん」

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ハヤシ:それと……ちょっと話が前後するけど、2014年の夏に、CLUB Queの20周年で、2デイズをやったのね。その時に、なんかおもしろいことしたいなと思って。よく「かぶり曲なし」とかあるじゃん。それもいいけど、ほかになんかあるかなあ、って考えて、「メインはPOLYSICS、スペシャルゲストはPOLYSICS、オープニング・アクトはPOLYSICS」っていうアイディアが出てきて。オープニング・アクトで初期の、インディー盤の頃の曲をやって、スペシャルゲストでは、いろんなトリビュートでカバーをやってるから、カバーだけのPOLYSICSをやって。で、最後のメイン・アクトでは、22曲を全部メドレーにしてやったのね。そしたら、今までなかったようなすっごい熱量のライブになって。お客さんが喜んでくれてる感じが伝わってきて、「これ、何かのヒントになるかも。これはありだな」と思って。
それで『HEN 愛 LET'S GO!』と『HEN 愛 LET'S GO! 2〜ウルトラ怪獣総進撃〜』を作るんだけど、そのツアーでもメドレーをやるんだよね。フェスでも……ROCK IN JAPAN FESTIVALは毎年出てるから、「JAPANだったらありだろう」って全曲メドレーでやったんだけど、あれ、やっぱりやってよかったと思った。「POLYSICS、何してくれるんだろう?」みたいな……ほら、もともとは、ライブで食パン投げてビビらせようぜ! みたいなところから始まったバンドじゃん。まずライブハウスで遊ぼうぜ、みたいなところから始まって、ツナギで、パン投げてて、歌なのか歌じゃないのかわかんない曲をやる、観に来た人たちは「なんだこれ?」みたいな。そこで普通にライブで盛り上がる曲をやって、「ああ、楽しかった」っていうのも……それもあってもいいけど、それだけじゃないよね、みたいな気はしたかなあ。そういうバンドは他にいっぱいいるわけじゃない。「暴れたい!」とか「楽しい!」とかさ。

──自分たちの出自を思い出したと。

ハヤシ:うん、もともとの。自分もそれが楽しかったわけだし。それは大きかったかなあ。

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