西廣智一『日本ヘヴィメタル/ラウドロック今昔物語』第3回「coldrainが結実させたオリジナリティ」
coldrainは国内ラウドロックと海外メタルをどう融合させ、オリジナルな音楽を作り出したか
彼らの楽曲/サウンドが一気にレベルアップしたのは、間違いなく2013年発売の3rdフルアルバム『The Revelation』でのこと。その前作にあたる2012年の2ndミニアルバム『Through Clarity』からプロデューサーにPARAMOREやKILLSWITCH ENGAGE、PAPA ROACHなどで知られるデヴィッド・ベンデスを迎えてアメリカでレコーディング。『The Revelation』も同じくデヴィッドのプロデュース作品だが、2作品の間には大きな違いがある。過去にcoldrainにインタビューした際に聞いた話だが、『Through Clarity』がバンドの意思を尊重して制作されたのに対して、『The Revelation』は海外での活動を想定し、日本のマーケットを意識せずに制作されたものということ。実際、デヴィッドも『The Revelation』制作の際には楽曲に対してかなり口を出したという。その成果が、海外のメタル/ラウドロック作品にも引けを取らない『The Revelation』という傑作につながったのだ。事実、このアルバム発表を機に彼らの活動は大きく変化していく。「日本のマーケットを意識せずに制作された」にも関わらず、同作はオリコン週間ランキングで過去最高の7位にランクイン。また先にも書いたように同年末に海外の大手マネジメントとの契約、そして翌年には一部内容を変更して『The Revelation』を海外レーベルからリリースすることになる。
昨年10月には4thフルアルバム『VENA』を世界同時リリースしたばかり。本作ではアヴリル・ラヴィーンやギャヴィン・デグロウ、オリー・マーズ、PENTATONIXなどのポップフィールドからPAPA ROACH、THE USEDといったヘヴィロックまで幅広く手がけるブランドン・パドックをプロデューサーに迎えて制作されており、『The Revelation』でのアグレッションをそのままに、coldrainの持ち味のひとつである“泣き”度が高まった、旧来の魅力と海外進出後のタフネスが絶妙にミックスされた集大成的作品と言える。プレスリリースにある「ラテン語で『VENA』(ヴィーナ)=『血管』自らの音楽ルーツを辿り、日本で培った経験や心を世界発信すべく想いを託した渾身の全11曲」という解説も納得いくものだし、この“らしい”アルバムが世界同時リリース第1弾作品というのも非常に興味深い話だ。