『ルパン三世』新TVシリーズ特別企画
大野雄二✕プロデューサー浄園祐が語る、『ルパン三世』と音楽の深い関係「音楽が印象に残るアニメという点では、ルパンがいちばん強い」
「ルパンは30分のほうが向いているのかな、と思う」(大野)
――今回は作画も特徴的で、手書き風の線もかなり残っていますね。そのラフな感じが大野さんの生演奏とシンクロする部分もあって。
浄園: そうですね。いまのアニメはデジタルだから、線が全部きれいになっちゃっているんですよ。若い人たちにとってはそれがいいのかもしれないけれど、ルパンにとっては何もいいものがない。メールでもらう文章よりも、下手くそでも手で書いた手紙の方が心が伝わる、というか。これは音楽も一緒だと思うんです。大野さんのレコーディングスタジオへ行くと、生のミュージシャンがギターを背負ってくる。パソコン1台で作るものとは全く違います。僕らは御託を並べていますが、観た人は単純に「あったかい」とか、「懐かしい」とか、「これぞルパンっぽい!」と言われることが多くて。その裏側には、クリエイターの手の圧、生演奏があるんだということを、いまの若い人に見せたい、という思いもありました。
あとはルパンらしさをより出すために、キャラクターを動かすことを意識しましたね。
大野: ルパンっていうキャラクターがそういう感じなんだよね。
浄園: きれいに図面を描くのがいいアニメじゃないというか、やはり音楽があり、動きがあって初めて「ルパンだな!」とみんなが納得する。だから、最近のアニメのように顔をきれいに整える、ということもやっていません。どんなに美しい女優さんだって、顔が崩れてる瞬間だってあるわけで。
――大野さんは、今回あらためてルパンと向き合ってみていかがでしたか。
大野: 30分で毎週やるのと、2時間スペシャルとはかなり違う、ということをあらためて実感したね。そして、ルパンは30分のほうが向いているのかな、と思う。2時間でやると、どうしても大掛かりになるのがつまらない。それより、くだらないことをやっている方がいいんだよ。だから、いまやっている感じのものが2時間になればいいね。
浄園: 大野さんがおっしゃるように、2時間だからってすごい設定を盛り込んだりすると、退屈になっちゃうんですよ。ルパンは理屈がないところがいい。例えば、バカまじめに大人が“追いかけっこ”をするのが楽しい。そんなに高尚にすることはないんだって、いつも大野さんに教えてもらっています。
大野: 2時間スペシャルの場合、監督が「一生に一回しかできない」という意気込みだけが空回りして、どんどんスケール感ばかり気にして、おかしくなってくるんだ。で、大体1時間15分くらいのところから爆発とかがやたら多くなってくる(笑)。ルパンが一国の軍隊と戦うとか、規模をデカくしないと恥ずかしい、みたいな感覚になってしまう。30分だと逆にそこまでできないから、ルパンのよさが出るね。
――『ルパン三世』という作品がもともと持っている、いい意味でのナンセンス性やおかしみは、確かに30分アニメの方が向いているのかもしれないですね。
浄園: そうですね。それに、設定過多になると、せっかく大野さんに作ってもらった曲を活かすこともできないんですよ。1話の終わりに「SAMBA TEMPERADO 2015」をかけて、僕もゾワッとしたんですけど、あの曲はたった10秒かけたくらいじゃ、味の部分が伝わらない。監督が気を張ったスペシャルだと音まで意識が回らなくて、中途半端な尺になったり、曲をうまく使い切れないんです。今回は「そこにルパンがいるからカッコいいし、音楽が乗ってさらに気分がよくなる」という、いい作り方ができました。