『ルパン三世』新TVシリーズ特別企画

大野雄二✕プロデューサー浄園祐が語る、『ルパン三世』と音楽の深い関係「音楽が印象に残るアニメという点では、ルパンがいちばん強い」

 名作アニメ『ルパン三世』が、新TVシリーズ(日本テレビほか)として30年ぶりの復活を果たした。これまでのルパンシリーズ同様、音楽を手がけているのは巨匠・大野雄二だ。10月21日にはサウンドトラック『ルパン三世 PART IV オリジナル・サウンドトラック~ITALIANO』と、Yuji Ohno & Lupintic Fiveによる『BUONO!! BUONO!!』を2作同時にリリースし、今回のTVシリーズの舞台である“イタリア”の要素を随所に盛り込んだ、新たなルパンワールドを展開している。今回、アルバムリリースと『ルパン三世』TVシリーズ復活を記念し、大野雄二と『ルパン三世』プロデューサー・浄園祐氏(テレコム・アニメーションフィルム代表取締役)の特別対談を企画。アニメの制作秘話から作品と音楽との関係性まで、『ルパン三世』の魅力についてじっくり話を聞いた。(編集部)

「ルパンが元気よく、能動的に動くイメージのある曲にしたかった」(浄園)

原作:モンキー・パンチ (C)TMS

――浄園さんはプロデューサーとして新TVシリーズのコンセプトを考える上で、特に音楽に関してはどのようなものにしたいとお考えだったのでしょうか。

浄園祐(以下・浄園): TVシリーズの復活ということで、一番の王道と言われている2ndシリーズの『ルパン三世』(1977~1980年)を基本にしようと思っていました。今回、新TVシリーズのPVが2バージョンあるのですが、1回目のPVは新テーマ「THEME FROM LUPIN Ⅲ 2015」を作っていただく前だったので、大野さんの許可なく2ndシリーズの「ルパン三世のテーマ'79」を当てさせていただいて、「これでいきたいです」と映像を作ってお見せしたんです。今回はルパンが元気よく、能動的に動くイメージのある曲にしたかった。“王道のルパン”を描くときに「ルパン三世のテーマ'79」をベースにすることは、大勢のスタッフの頭をグッと同じ方向に向けるために提示するものとして、最も適していました。

――大野さんはそうした依頼を受けて、どんなことを感じましたか?

大野雄二(以下・大野): 僕が2ndシリーズの音楽を手がけた時、(アニメの制作がよみうりテレビから日本テレビに変わったことを受けて)よみうりテレビのときに作っていたものと少し変えよう、というところから始まったんだ。モンキー・パンチさんの原作からはちょっと外れるかもしれないけれど、そこで「やっぱりこれが良かったんだ」という感覚があった。
 当時は、アニメ=子供のものだ、と勝手に大人が当てはめていた時代だった。音楽はわかりやすいものばかりで、内容も単純に「悪いやつを懲らしめる」みたいな。ルパンは泥棒だし、だからこそ、そこをあまりにもニヒルに、ダーティーに描きすぎても引いちゃうかなというのがあって。そういうバランスを取るために、もうちょっとマイルドに、なおかつスタイリッシュでコミカルに……という内容と音楽が生まれたんだと思う。音楽は、ずっと僕がやってきた王道中の王道で、奇をてらわずに作った。今回も、何十年ぶりと言ってもテレビスペシャルはずっと続いているので、同じ流れのなかに今の自分を反映させた、という感じだね。

――そのなかで、今回はイタリアが舞台ということで、大野さんもCDのライナーノーツでそのことについて随分考えたとおっしゃっています。そもそも、舞台がイタリアになった経緯とは?

浄園: 長らくずっと、ヨーロッパの中でも特にイタリアでルパンの人気が高いんです。イタリアの子供たちは昼の2時に必ずルパンを観ていて。僕らが子供のころ、夕方に『ガッチャマン』や『ヤッターマン』、そして『ルパン』を観ていたのと同じ文化が、イタリアにもあるんです。そして、当時の子供たちはいま、40~50代のいい大人になっている。そして、イタリアのファンは日本のファンと同じようにルパンに対するウンチクをみなさんが持っているんです。イタリアは、まさにホットスポットで、だからそこに向けてまず作るということで、舞台にしようと決めました。

大野: 今はどこの国にも同じように音楽が流通しているから、それほど国によってのジャンル分けがないんだよね。ただ、アメリカ人とヨーロッパ人は違う。世界各国から移民が集まってきたところの音楽と、イタリア・フランス・スペインとは違う。だから、メロディライン的にも楽器的にも今回ちょっと変えているよ。
 例えばマンドリンを使うとか。それだけでなくて、曲の作り方もちょっと変えている。アメリカ的要素を少し減らしたんだ(ジャズ的な面をね)。今回は、よりシンプルで楽しい自分なりのイタリアン?な感じにした。だから、ちょっとロマンチックで懐かしいとこもあるでしょ。それと、口笛・ハーモニカ・アコーディオン・ハモンドオルガンなんかも入れて、1960年代のテイストも出そうって事で、サービス“てんこ盛り”サウンドになってると思うよ。

――ベースにはジャズがあって、そこに世界各国の要素が入ってくる感覚ですか?

大野: そうだね。今回はちょっとジャズ感を減らしてはいるけど、作曲家として僕のいちばんの特徴は、リアルジャズ出身でピアニストだったという事。ジャズを死ぬほど勉強したけれど、ある日突然、コマーシャルが好きになって作曲家になっちゃって、その流れでルパンもやるようになって……ということで、知らず知らずやっぱりジャズのテイストが出ちゃうんだ。だけどCMをやったおかげでジャズではないものもたくさん勉強した。だからこそ、そことの融合、組み合わせがうまくできる。普通の人は、悪いけどジャズといってもそこまで勉強していないから、ちょっとサウンドが違うんだよ。一方で、ジャズだけやってきた人は、ちょっと音作りが難しくなっちゃって加減ができないんだ。僕はCMソングを作っていたおかげで、そのあたりの加減ができるようになった。

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