FORWARD・ISHIYAが韓国パンクシーンを調査
韓国パンクシーンの特徴と現状とは? 現役パンクロッカーが現地レポート
韓国でライブをやる場合には、韓国語でのMCは非常に重要ではないかと思う。筆者もライブのときには英語と、自分の知っている韓国語でMCをおこなったが、ライブも非常に盛り上がり、拙い韓国語ではあったが、それでも充分に伝わったと言ってくれ、ライブ後も色んな人間と話すことができた。
2日目のライブの際に「反日思想のような観客が数人いるのであまり近づかないように気をつけてくれ」と言われたが、その中の一人はライブが始まる前に筆者に対し「本当によく来てくれてありがとう」と書かれたスマートフォンの翻訳アプリ画面を見せてくれ、歓迎の気持ちを表してくれた。
たしかにそのグループ中の一人は泥酔しており、イベントが始まったあたりでは、筆者に敵意むき出しのように思える視線を投げかけてきたりはしていたが、ライブ終了後に話しかけてきてくれ「お前、良かったよ」と言ってくれた。そのグループと終了後に外で話していたが、ライブを観て認めてくれたのか、何の問題も無く一緒に話ができ、楽しくバカ話をしていた。
TVなどの情報だけを鵜呑みにしていると、そういった生身の交流を図ることはできない。今回、韓国に行きこの国の素晴らしさを肌で感じ、本当に親戚のような国だと感じた。今後も色々な形で韓国と繋がることは、アジアのパンクシーンにとって非常に重要なことだと思う。
ソウルで2日間ライブをおこなったのだが、パンクバンドがライブをできる環境は、ソウルもしくはソウル近辺にしか無いようだ。釜山などの都市でもできそうな気はするが、筆者が訪れたシーンはまだ小さく、兵役前後あたりの年代の若者達が中心となってやっているシーンなので、今後どう活性化していくのか、興味深く見ていきたいと思う。
2日間で共演した8バンドも、様々なスタイルのバンドがいて非常に面白かった。ブラストのようなバンドや、ヘヴィでダークなサウンドのバンド、パンクロックのバンドやシンガロングなバンドのほか、日本のTHE STALINのカヴァーをやっていたバンドもいた。韓国に住む日本人のバンドマンが、筆者達と日本語で話しているのに対し、「日本語上手いな」などと冗談を言われている姿は、非常に韓国シーンに溶け込んでいて、今後の日本と韓国のパンクシーンの交流の姿が垣間見えたような気がした。
ライブ後、店で打ち上げをした後の二次会では、近所で飲んでいた若いパンクスや欧米から来ているパンクスも含め、大勢のパンクスと街中の公園で飲みながら交流した。筆者も金の無い若い頃はこうやってみんなで飲んでいたのを思い出し、非常に懐かしい気分になるとともに、これこそが屋外で飲酒のできるアジアならではの若者の文化なんだと改めて感じ、非常に気分よく飲めた。
筆者の訪れた韓国パンクシーンは、若者が始めたばかりの小さいシーンだが、この情熱があれば今後の韓国ハードコアは非常に盛り上がって行くだろう。そのためには日本のバンドが積極的に韓国を訪れ、韓国シーンを盛り上げることが重要だと思う。また、韓国からも様々なバンドを招聘したりして、両国間で活発な交流ができれば、東アジアのハードコアシーンが活性化されて行くのは間違いないのではないだろうか。
■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST