Mr.Childrenが見せた「4人のロックバンド」としての覚悟 鹿野 淳が日産スタジアム公演をレポート
筆者は様々な時代の彼らのライヴを見せて頂いているが、今回のスタジアムライヴの素晴らしさを、率直に「2001年のPOPSAURUS以来の素晴らしさ」だと思った。この14年の間にも彼らは様々な変化を響かせ、それをライヴでも体現して来た。例えば「”HOME” TOUR 2007 ~in the field~」などのバカでかい規模なのに「本当に近い」ライヴを見て感動したこともあった。その中で何故14年振りの素晴らしいライヴだと思ったのか? それは今の彼らと、あの頃の彼らに大きくシンクロするものがあるからである。
14年前のツアーPOPSAURUS 2001は、『Mr.Children 1992-1995』と『Mr.Children 1996-2000』という2枚のベストアルバムのリリースに起因したツアーだった。当時の彼らはとても悩んでいた。具体的にはその前にリリースしたアルバム『Q』が、当時の彼らにとっては満足いく結果を残していなかったこと。そして21世紀へと変わる節目にシーンも何年か前から地殻変動が起こり、ロックシーンでは若い邦楽オルタナティヴバンドが登場し、スタジアムライヴなどのメガライヴをやれる新しいバンドも出て来た頃だったからだ。Mr.Childrenはその『Q』以前にバンドが混沌としていた時期もあり、このシーンの変化と共に、自分らもフェードアウトして行くのではないか?と不安に思ったし、誰よりもその予感を4人と当時のプロデューサーの小林武史が持っていたと、当時の取材で話してくれていた。
そんな中、ベストアルバムを出すにあたって、彼らは自らのポップスとしての力と可能性を再確認し、それをさらに強めたいし、追求したいと感じた。そういう中でのツアーは「ポップという恐竜である自分らの真価を問う」ものとなり、必然的にそのツアーは4人にとって自らの真価を真っ向から問う、素晴らしいものになっていった。
Mr.Childrenは去年の春より、今までの事務所から分社化というかたちで独立を果たした。彼らより若いスタッフと共に、4人は今まで自分達がして来なかった判断や決断をするようになった。一連のトリッキーな「まだ音源化されていない曲を、まずライヴで」というアイディアも、『REFLECTION』の具体的な内容や企画も、そしてツアーのステージデザインも、4人が1から直接ミーティングに出て判断し、バンドのプロデュースも4人で行うようになった。それは「4人だけのMr.Childrenではなく、スタッフや関連しているレコード会社やコンサートスタッフ全部含めての、一大産業としてのMr.Children」という、ビッグプロジェクト特有の考え方をメンバーが優先しなくなり、「もう一度4人の手にMr.Childrenを取り戻し、そのゼロ地点から再出発をしよう。まだ新しいことをするには遅くは無い」というイメージを持つことが出来た、極めて大事なことだったのだと思う。
そういう新しい覚悟、そして今一度4人の絆が深まったからこそのテンションや気合いが、至る所で発揮されたライヴだった。特に桜井以外の田原、鈴木、中川の積極的なパフォーマンスやトークからも、それを色濃く感じることが出来た。Mr.Childrenは4人のバンドだーーその気概をここまでライヴで明確に見ることが出来たのは、それこそあの『Atomic Heart』以前の頃まで遡ることになるだろう。
そんなメンバー4人のモチベーションとテンション、そして実際のプレイヤーとしての気概やコミュニケーションが増したことによって生まれたのは、Mr.Childrenがロックバンドであるという「当たり前のリアル」だった。