ROCK IN JAPAN FES.はなぜ拡大し続ける? 「ロック」概念の変化を通してレジーが考察

『RIJF』における「ロック」、ゴスペラーズの場合

 あ~ちゃん「ロックっていうものの捉え方が変わっているのかなって。そのことを、ここにいる皆さんは考えていらっしゃると思うんですよ。夢とか、信じるものを、想い続けることなんじゃないかなって」
(ROCK IN JAPAN FES. 2013 Perfume クイックレポート http://ro69.jp/quick/rijfes2013/detail/86272

 「狭義のロック」とは距離のあるスタイルでRIJFの大トリを務めるまでに成長したPerfumeは「ロック」という言葉の意味をこう定義したが、あらゆる音楽ジャンルの異種格闘技戦となるこのフェスにおいて「自らのアイデンティティを信じる」ということは極めて重要である。2日間で自分が見たアクトの中でそれをもっとも体現していたのが、『RIJF』初登場となったゴスペラーズだった。

 メンバー用のモニタースピーカーのみがセットされたステージに登場して「永遠に」をアカペラで披露した後、村上てつやはこう言った。

「初めてここに乗り込むにあたっていろいろ考えました。今日、楽器は持ってきていません。マイク5本だけで勝負します!」

 自らのコアであり、また他の出演者が絶対に真似できないやり方でもある全曲アカペラというセットリスト。「ウイスキーが、お好きでしょ」「真っ赤な太陽」といった誰もが聴いたことがありそうな曲のカバーから「ひとり」「星屑の街」といったオリジナル曲、さらにはMCやコール&レスポンスまで駆使して場を盛り上げ続けた彼らのパフォーマンスは、こういった音楽に馴染みがないであろうオーディエンス(MCでのやり取りによるとその場にいた大半がゴスペラーズを初見とのことだった)に確かなインパクトを残した。

 「楽屋では孤独だった。友達はRHYMESTERだけ(笑)。でも孤独には慣れている。なぜなら自分たちがこの音楽を始めたとき周りは誰もアカペラのことを知らなかったし、だからこそ自分たちなりのアカペラを作っていこうとやってきた」

 こんなMCがあったが、常に「アウェー」の場でどうするかという状況に直面し続けてきたとも言える彼らの道程は、様々なタイプのオーディエンスが集まるロックフェスと実は非常に相性がいい。考えてみれば、彼らがデビュー前に腕を磨いていたストリートライブにおいてはロックフェスよりもはるかに無関心な通行人の足を止めさせなければならない。お金を払ってその場を訪れている人たちの心を掴むことなど、百戦錬磨の5人からすれば造作もないことなのだろう。

 シーンともトレンドとも関係のないミュージシャンがたちまちベストアクト候補に名乗り出てしまうことこそがロックフェスの面白さのひとつでもある。ゴスペラーズの『RIJF』への初出演は、そんな風に語り継がれるであろう「事件」となった。

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