ROCK IN JAPAN FES.はなぜ拡大し続ける? 「ロック」概念の変化を通してレジーが考察

「ロック」を拡張し続けてきた15年間

 2000年にスタートし、今年で16回目を迎えた『ROCK IN JAPAN FESTIVAL(以下RIJF)』。ひたち海浜公園を舞台に毎年規模を拡大してきたこのロックフェス、2015年の観客動員数は約25万人。昨年から開催日数が4日間となったこともあり単純比較はできないが、今年の『FUJI ROCK FESTIVAL』(3日間開催)の動員数が11万5千人だったことを考えるとその大きさが際立つ。初回から毎年足を運んでいるこのフェスに今年は後半の2日間、8月8日と8月9日に参加した。

 8月9日のGRASS STAGE(一番大きいメインステージ)にDragon Ashとして出演していた降谷建志は、「今日のこのステージのメンツは最高じゃないか」という旨のことをMCで口にしていた。チャットモンチー、クリープハイプ、Dragon Ash、9mm Parabellum Bullet、ACIDMAN、the HIATUS、10-FEET。日本のロックを引っ張ってきたバンドが居並ぶ様を賛美した彼の心境は、「もっとロックバンドのかっこ良さを知ってもらいたい」という一心で「ミュージックステーション」に出演した横山健とも共通するものがあるのかもしれない。

 一方で、『RIJF』の歩みは「狭義のロック」という概念をいかに拡張するか(少し悪意も込めると「骨抜きにするか」)という取り組みの積み重ねでもある。2回目となる2001年の時点でゆずとMr.Childrenという「お茶の間寄り」に受容されていた存在を出演させ、Mr.Childrenが再び出演した2005年にはサザンオールスターズまで引っ張り出してきた。今でこそ普通のこととなった矢沢永吉のロックフェス出演の端緒を作ったのは06年の『RIJF』であり、08年から(厳密には07年のCDJから)始まるPerfumeの大々的なプッシュは「ロックフェスとアイドル」という流れの先取りになっていたとも言える。さらに、今ではゴールデンボンバーやFly or Dieといった「従来のロックに対するパロディもしくはカウンター」という構造のアクトも平然と出演している。

 「○○はロックか?」などという問いが馬鹿馬鹿しくなるような多様なラインナップ。「ユニークなスタイル」「思わず自己投影してしまうような物語性」を持つミュージシャンを「ロック」の名のもとにひたすら取り込むことで、『RIJF』は全方位型の音楽ショーケースとして巨大化していった。そして、そんな「何でもあり」のスタンスの帰結として生み出される『RIJF』のタイムテーブルは、今のシーン(もちろん「全音楽」ではなく特定の幅の中ではあるが)についてのなかなか正確な縮図となっている。今年も大物アーティストやフェスに強そうな若手ロックバンドを揃えるだけでなく、これからメインストリームに打って出ようとするポップアクトを各日の同一ステージ・同一時間帯に配置した(Awesome City Club、水曜日のカンパネラ、tofubeats、Shiggy Jr.)。また、多数の女性アイドルを短い時間でまとめて見せる企画を2013年と2014年の2回で打ち切ったところにも、フェスとしてのフレッシュさを保つためのシビアな判断が垣間見える。鮮度維持のために「機を見るに敏」な施策を繰り出すスピード感は、他のロックフェスよりも48グループやLDHの方が比較対象として適切かもしれない。秋元康、HIRO、渋谷陽一と言ったところか。

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