『LUNATIC FEST.』2日間を冬将軍が詳細解説

X JAPAN、BUCK-TICK、LUNA SEA……強者バンドが集結した『LUNATIC FEST.』徹底レポ

LUNATIC FEST.「ダーク・サイド」

 1日目がエクスタシー・レコードを象徴するような、LUNA SEAのHR/HM要素の顔、“ハード・サイド”だとすれば、2日目はニューウェーヴ、ゴシックを基調とする“ダーク・サイド”だ。

minus(-)(28日 SHINE STAGE)

 

 奇妙で奇怪な森岡賢と、鬼の形相・藤井麻輝、この二人がステージに立っているだけで非現実的世界に見えてしまう。ゴシカルでインダストリアル、MCなしの全曲つなぎ、心地よい前ノリのビートがいやおうなしに高揚感を誘う。宇宙的でつかみどころのない森岡と、ダウナーな藤井のボーカルの対比もほどよく響く。アクの強い二人に囲まれながらの紅一点、サポート・ドラマー、FLiPのYUUMIの凛々しいドラミングも印象的だった。

KA.F.KA(28日 SHINE STAGE)

 

 土屋昌巳のトリッキーなギターで始まった、KA.F.KA。魔界から来たりし、伯爵の装いのISSAY(Vo)は、歌声、ステージング……いや、立ち振る舞いというべきか、動きの一つひとつに気品と妖艶さが漂い、“耽美”という言葉を擬人化したような姿だ。土屋がSUGIZOを呼び込む。「90年代に同じようなイベントで、僕がやめろやめろというのに無理なイベントをやりました」1997年に行われたSUGIZO主宰『ABSTRACT DAY』は、プロデューサーに転向した土屋が再びソロ・アーティストとして活動するきっかけを作った。Joy Division「Transmission」のカバーで、そんな二人の関係性を表すようなアバンギャルドでスペーシーなギターバトルが響き渡った。

D’ERLAGER(28日 SHINE STAGE)

 

 「SADISTIC EMOTION」「dummy blue」「Lullaby」、ここぞとばかりのパンキッシュなキラーチューンの応酬で攻めたD’ERLAGER。「LA VIE EN ROSE」で観客のコールとともに、INORANが登場。CIPHER(Gt)に連絡するときは未だに正座、本人を目の前にすれば、もちろん正座。いつもクールな面持ちのINORANだが、憧れのロックスターを目の前に、ここぞとばかりステージ上を笑顔ではしゃぐ姿は、完全にロック少年のそれだった。

圧巻のステージを見せた後輩バンド

MUCC(28日 MOON STAGE)

 

 今回の出演者の中で唯一、直系ともいえる2000年代ヴィジュアル系シーンの出身。2007年リリース『LUNA SEA MEMORIAL COVER ALBUM -Re:birth-』の「Déjàvu」再現率も記憶に新しい。ラウドロックからエレクトロ、歌謡曲まで、面白そうなものは全部吸収し、自分たちのものにしてしまう姿勢は、方法は違えどLUNA SEAと共通するところ。タメのリズムが印象的な「睡蓮」、重心低めのグルーヴが心地よい「G.G.」、ヘヴィサウンドと次々畳みかけていくメロディーの「蘭鋳」で、会場は狂乱状態に。海外を始め、ジャンル問わず数多くのフェス/イベントへの出演経験を誇るだけに、「ライブとはなんたるか」を知り尽くしているかのような貫録のステージを見せた。

SIAM SHADE(27日 MOON STAGE)

 

 「俺ら、今解散してるんですけど……」今年10月にメジャーデビュー20周年復活ライブを行うSIAM SHADE。思えば、当初「一夜限りの復活」としながらも、翌年の〈hide memorial summit〉に引っ張りだされたバンドもいたような……。このシーンにありがちな上下関係が垣間見る出演劇。「なんてカッコいいんだ!」と突如現れ、「1/3の純情な感情」をリクエストしておいて自分が歌うという、真矢の茶番を前にタジタジになっている栄喜(Vo)は、明らかに町田PLAY HOUSE時代の“CHACK”だった。その反面、技術・演奏に定評のあるバンドらしく、スケールのドでかい、男気溢れる熱いステージをきっちり見せる。ちなみに、真矢と師弟関係にある淳士(Dr)はこの日、LUNA SEAの出番前にドラムのサウンドチェックを務めた。

GLAY(28日 MOON STAGE)

 

 バンドの名を見れば、思い浮かべるサウンドがある。だが、GLAYの場合はサウンドよりも歌を思い出す。「誘惑」「口唇」、誰でも楽しめるロックナンバーで、どのファンもここぞとばかりの“GLAYチョップ”。LUNA SEA「SHADE」のカバーを挟み、「彼女の”Modern⋯"」で最高潮に。演奏はもちろん、ステージング、ライブの運び方に、スタジアム級のロックバンドの真髄を見た。どこか不良性、ダークな雰囲気を持つロック、それを集約したようなエクスタシー・レコード出身ながら、国民的バンドへとのし上がった。GLAYほど優等生的なロックバンドはほかにいないだろう。何気なくLUNA SEA「JESUS」のリフを弾いたり、この日の最後のセッションでは、「BELIEVE」ギターソロに「彼女の"Modern⋯"」をさりげなく混ぜていた、HISASHI(Gt)に思わずニヤリ。

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