乃木坂46、グループ史に残る“転機“とは? 2周年記念ライブ映像から振り返る

“躍進の2014年”の口火を切ったライブ

 ここから、このライブが乃木坂46にとって、どのような公演だったのかを改めて考えていく。まず、当時のことを改めて整理すると、『2nd Year Birthday Live』が開催された2014年2月22日には、7thシングル『バレッタ』までをリリースしており、8thシングル『気付いたら片想い』の選抜発表後だったため、西野七瀬が初のセンターを務めることが決まっていた。また、当時休業中であった相楽伊織は参加していないものの、すでに卒業した市來玲奈や伊藤寧々といった多くのメンバーの姿を見ることができる。さらに、このライブの2日後には生駒里奈のAKB48兼任とSKE48松井玲奈の乃木坂46兼任が発表されたため、大きな節目といえるのだ。

 まずは西野七瀬について触れておこう。彼女はライブの1ヶ月程前に新センターを務めることが発表され、グループの単独公演としては選抜発表後初のライブだった。当時、西野のセンター抜擢に関してはその人気の高さを認めつつも、センターの重責を負えるのかと不安視する声も多かった。しかしライブでは、すでにマカオタワーでのバンジージャンプも終え、センターとしてこれからやっていくという覚悟を、そのパフォーマンスと表情で誇示してみせた。その結果、1年後のバースデーライブでは、表現力が飛躍的に高まり、一つ一つの仕草や表情で多くのファンを魅了するアイドルへと大きく成長した。

 また、このライブの数週間後には、初めてのアンダーライブの開催が発表されている。アンダーメンバーは『2nd Year Birthday Live』でも魅力的なパフォーマンスをみせており、MCの場面ではアンダーメンバー全員に話す機会が与えられ、それぞれに自分の特徴をアピールする場も設けられるなど、従来の公演よりもスポットが当たっていた。2014年が“アンダー躍進の年”に位置付けられる起因を作り、その後の活躍を支えたという意味では、『2nd Year Birthday Live』でのパフォーマンスで、その萌芽を今一度確認できるのだ。

 2期生と1期生全体がグループとしてまとまり始めたのもこの頃からだ。当時『NOGIBINGO!2』にて1期生と2期生が関わる企画も増え、8thシングルからは北野日奈子が選抜メンバーに、新内眞衣がアンダーメンバーに昇格している。前年12月に日本武道館にて行われたクリスマスライブでは、どこかぎこちない動きが目立った2期生だったが、『2nd Year Birthday Live』では、卒業生のアンダーをこなす機会も増え、乃木坂46のメンバーとしての一人一人の自覚も増したように思えた。2014年はアンダーメンバーの活躍の年という印象が強いが、そこにしっかとりと食らいついていき、1年後のバースデーライブで全ての研究生(=2期生)が昇格を勝ち取ったことを忘れてはいけない。

乃木坂46史に残る転機

 このライブ最大のハイライトといえば、やはり西野七瀬と秋元真夏の溝が埋まった4thシングル『制服のマネキン』披露前の映像のシーンだろう。秋元真夏が4thシングル『制服のマネキン』で、学業による活動休止から電撃復帰し、さらに八福神入りを果たしたことと、それに伴って西野七瀬が福神落ちを経験したことから、始まったとされる2人の溝。2人がそれぞれ人気メンバーとして活躍していく中で、1年以上埋まらなかったこの溝を埋めたのが、映像中に西野のナレーションで告げられた「真夏、おかえり」だった。その後、半泣きで「制服のマネキン」を踊る秋元の姿も、2人の抱擁シーンも映像でしっかりと見ることができる。ライブ後も、2人のブログやインタビューなどによって語られた一連のエピソードに、多くのファンが感動を覚えたシーンは、約1年半経った今も色褪せない名場面だ。

 そしてこのライブの2日後には大組閣が行われる。生駒里奈のAKB48兼任と松井玲奈の乃木坂46兼任は、ライバルグループとの交換留学ということもあり、乃木坂46ファンの間では大きな議論となった。乃木坂46の歴史をこの大組閣の前後で分けるファンもおり「乃木坂46のみでの最後のライブ」と捉える向きもある。そう考えると、このライブは乃木坂46の一つの集大成といえるだろう。

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 メイキング映像には当時の裏話がぎっしりだ。西野と秋元のシーンについて、秋元が本番中に語った映像や、生田絵梨花がある演出に凍りつく表情、星野みなみが今でも忘れない大失敗について語る映像などが収録されているほか、リハーサルの合間に見せるメンバーのオフショットも満載で、素の彼女たちの姿を見ることもできる。のちに「からあげ姉妹」を結成する、松村沙友理と生田絵梨花の楽屋でのデュエットや、休憩中の過ごし方の違いなど、ファンならぜひ見ておきたい映像ばかりだ。そのほか、本編でもここでしか見られない映像がある。それは、岩瀬佑美子と宮澤成良(現:宮沢セイラ)のサプライズ登場だ。彼女たちとの再開を、カメラの前であることを忘れて喜ぶメンバーの表情を楽しめるほか、岩瀬からメンバーに送る言葉も心に染みる。両名のファンにとっては嬉しい映像であり、岩瀬に関しては『1st Year Birthday Live』以前に卒業していたため、彼女が参加したライブとしては初の映像化作品となった。

 ライブから映像化まで、長い時間を要してしまったものの、だからといって当時のパフォーマンスが色褪せることはないし、会場にいたファンはもちろん、このライブ以降にファンになった人々に対し、ライブの興奮と感動が多くのファンに届けられることは本当に喜ばしいことだ。ぜひ自宅でグループの2歳の誕生日をお祝いしようではないか。

■ポップス
平成生まれ、音楽業界勤務。Nogizaka Journalにて『乃木坂をよむ!』を寄稿。

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