新作『ラヴァーマン』インタビュー

ORIGINAL LOVE田島貴男が見出した“今やるべきポップス”とは?「Negiccoの仕事はいい経験だった」

 

 ORIGINAL LOVEが、6月10日に約2年ぶりの新作『ラヴァーマン』をリリースする。1994年に発売した『風の歌を聴け』と同じく佐野康夫(ドラム)と小松秀行(ベース)を迎えて制作された本作は、ジャズやファンクのテイストを漂わせつつ、Negiccoへ提供した「サンシャイン日本海」をセルフ・カヴァーしたり、ボーナストラックに『サントリー角ハイボール』のCMソングである「ウイスキーが、お好きでしょ」を収録するなど、エンターテインメント性に溢れた作品に仕上がっている。今回リアルサウンドでは、聞き手に音楽評論家・宗像明将氏を迎え、田島貴男にインタビュー。アルバム制作時のエピソードや田島の近況から、今なお成長を続けるORIGINAL LOVEの音楽性を紐解いた。

「去年より今年のほうが歌手としては成長している」

――2年ぶりの新作で、1994年の「風の歌を聴け」のリズムセクションである佐野康夫さん、小松秀行さんを迎えたのはなぜでしょう?

田島貴男(以下:田島):このアルバムは数年前に作った「ラヴァーマン」から制作が始まってるんですけど、この曲は手応えを感じていた曲でした。でも最近作ったアルバムには合わなくて温存していたんです。最近ソウル・ミュージックを若い人達が聴く機会が多くなってきたこともあって、タイミングが来たと思ってレコーディングしました。前作の「エレクトリックセクシー」(2013年)を作り終えた後、「風の歌を聴け」の頃のようなORIGINAL LOVEらしいサウンドを聴きたい」という声を聞いて、たまたま「ラヴァーマン」は佐野、小松でレコーディングしたいと思っていたので、なおさら今だなと思いました。「RAINBOW RACE」のツアー(1995年)以来3人で集まってなかったけど、同じエンジニアも呼んで、レコーディングスタジオに集まったんです。あの頃と同じ音が出てきて感動しました。このグルーヴだったよな、と。

――「いわゆる一般的なORIGINAL LOVEらしいサウンド」を求められることに反感はなかったですか?

田島:30歳の頃だと感じていたかもしれません(笑)。でも、「風の歌〜」から20年も経って、最近はなんとも思わなくなりましたね。バンドを再結成するようなつもりで楽しもうと。今回のアルバムは、「風の歌を聴け」を彷彿させるところが確かにありますが、やはり似て非なるサウンドだと思います。ORIGINAL LOVEはこの20年の間に音楽の旅をたくさんしてきました。そこで得た蓄積がこのアルバムには集約されています。加えて、ここ3、4年間、弾き語りをやりながら勉強したスライドギター、ジャズギターのテクニックが散りばめられています。以前よりも更に雑食性に富んだ本格的なソウルミュージックになっていると思います。

――「ラヴァーマン」にしろ、南部っぽい「ビッグサンキュー」にしろ、ソウルとしての深みは「風の歌を聴け」より増していると感じました。

田島:歳もとりましたから成熟せざるをえない(笑)。サウンドの成熟度も上がってますけど、あとは歌の変化かもしれませんね。歌は技芸なんです。技芸というのは、一週間練習して自分のものになるものじゃないんですよ。何年もかかって少しずつ自分のものになってゆくのが技芸なんです。歌えば歌うほど歌の面白さに気づかされます。去年より今年のほうが歌手としては成長している気がします。

――歌の技芸が磨かれているからこそ、「水曜歌謡祭」に出演したときの反響も大きかったんでしょうね。

田島:以前の自分の歌だったら、あんなに反響は得られなかったでしょうね。最近になってわかった歌い方が「ウイスキーが、お好きでしょ」のときにあって。そのときにCM制作会社の人が言ってくれたディレクションが勉強になりました。自分の個性をどうやってアピールしたらいいのかわかってきましたね。NHKの「The Covers」など最近はテレビの歌番組の仕事が毎回反響も大きくて楽しいです。今回のアルバムはサウンドもこだわっているけれど、ヴォーカル・アルバムでもあると思います。歌だけで3ヶ月かけてレコーディングしました。すごく疲れました(笑)。歌い方はわかったけど、それをどうやってレコーディングするかが難しかったです。やれるところまでやりましたね。

――難しいなかで、外部のプロデューサーを付けることは考えなかったのでしょうか?

田島:プロデューサーをつけたいなと思っていた時期もありましたけど、この歳まで一人でやってきたので「どっちでもいいや」と。セルフ・プロデュースはすごく大変ですね。でも「プロデューサーを付けるのが似合わない」と言われて、このスタイルになりました(笑)。Negiccoの現場では、いいプロデューサーが何人もいて羨ましいと思いました。僕はひとりで格闘していて、「自分がもうひとりいたら楽かな」とよく思います。でも、その分個性が強い作品にはなっているのかなと。

――Negiccoの「サンシャイン日本海」(2014年のシングル)を今回セルフ・カヴァーされていますが、アイドルのプロデュースを経験してみていかがでしたか?

田島:すごく楽しかったし、いい経験でしたね。今のアイドルの知識は全くありませんでしたが、connieさん(Negiccoのプロデューサー)の話を聞きつつ僕なりにがんばって作りました。すごく気に入ってます。そして、今のポップ・ミュージックとの接点が見つかりました。「光のシュプール」(2014年のNegiccoのシングル。田島貴男がアレンジ)では、connieさんに「昔のORIGINAL LOVEを思いっきりやってください」と言われて全力でやってみて、それが評価されて、「今のポップスとして通用するんだ」と自信になりましたね。だからなおさら「ORIGINAL LOVEをやってやろう」という気持ちになりました。Negiccoをきっかけにネオ渋谷系と言われる人たちの音楽を聴いて刺激を受けました。ORIGINAL LOVEは、渋谷系であって渋谷系ではないですけど(笑)。渋谷系の人がアイドルに楽曲を提供できるのは、楽曲主義の人が多かったからだと思うんです。アーティスト性よりも、曲の構造を極めていく人が多かったんです。ポップスというのは、歌詞や作品性、物語の世界をとっぱらっても構造が美しい。それに気づいてるのが渋谷系で、バート・バカラックは構造としてもレベルが高かったんです。

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