YouTube、過去10年の再生ランキングから見えた傾向とは? AKB48らの作品から考察
また、こうした傾向は今後の音楽のあり方にも影響を与える可能性があると、同氏は続ける。
「最近では、レコード会社もそういった需要を意識しているのか、動画ありきで制作されるものも増えてきたように思いますし、そうなると今後、音楽の受容の仕方が変わってくるのかもしれません。たとえばケツメイシの「バラード」などは、ストーリー仕立てになったミュージックビデオが楽曲と同じくらいに重要なコンテンツで、まさにYouTubeを意識した作品のひとつです。MTVが流行した時代からストーリー性のあるPVはありましたが、最近のものはよりネットなどの口コミで話題になることを意識してるのが少し違うところだと思います。また、かつて音楽は、楽曲そのものや歌詞を作品として楽しむ傾向が強く、音楽性が高い作品が求められたかもしれませんが、今後は音楽性だけではなく、より“みんなで踊れる”とか“泣けるストーリー”といった付加的な要素も求められていくでしょう。一方で、YouTubeの動画再生は前述したように、振り付けなどを覚えるために何度も観ているものでもあるので、このランキングで上位になることが純粋に音楽作品としての完成度の高さを担保しているものではないということは、意識したほうが良いのかもしれませんね」
YouTube開設から10年、いまやすっかり音楽を楽しむツールのひとつとして定着したが、そのメディアの特殊性が、日本の音楽業界の今後を左右するのかもしれない。
(文=松下博夫)