SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック

「時代背景や出てくるアイテムが違うことで歌詞は変化していく」

ーー「引用」を主に使った比喩表現ということですか。

zopp:でも、この引用元は何でもいいというわけではなくて、例えば、僕は先日映画の『バードマン』を見てひどく感銘を受けたんですが、大きく世間に浸透しているわけではないし、物語としても複雑なので、これを引用しても大半の方が気づかないと思うんですよ。だから、引喩法を用いた歌詞には『不思議の国のアリス』をモチーフにした松田聖子さんの「時間の国のアリス」やMY LITTLE LOVERの「ALICE」、『人魚姫』を参考にしたNOKKOさんの「人魚」や中山美穂さんの「人魚姫」など、有名なファンタジーと現実をくっつけた表現が多い。ディズニーやスタジオジブリの手法を使っていると考えるとわかりやすいかもしれません。

ーー背景を想像しやすいからでしょうか。

zopp:誰もが知ってるものは入ってきやすいですからね。ジャニーズではもう少しマニアックなものが題材になることもあって、Hey! Say! JUMPの「真夜中のシャドーボーイ」は1969年のアメリカ映画『真夜中のカウボーイ』でしょうし、SMAPの「俺たちに明日はある」は映画『俺たちに明日は無い』、関ジャニ∞の「関風ファイティング」は、カール・ダグラスの「カンフー・ファイティング(吼えろ! ドラゴン)」だし、Sexy Zoneの「明日に向かって撃て!」は同名映画のタイトルの引喩なんですよね。そのなかで、今回深堀りしたいのは、飛鳥涼さんが作詞した光GENJIの「パラダイス銀河」。光GENJIには「荒野のメガロポリス」という、SF映画の原点にして頂点の映画『メトロポリス』をモチーフにしたものがありますが、この曲は2つの有名な物語が引用され、ミックスされているんです。それは『ピーターパン』と『銀河鉄道の夜』。前者については、<空をほしがる子供達 さみしそうだね その瞳 ついておいで>、<大人は見えない しゃかりきコロンブス夢の島まではさがせない>、というフレーズがそれを表していて、<空を~>については、まさに劇中でウェンディとピーターパンが出会うワンシーンのことですよね。で、<大人は見えない~>は、作品に登場する夢の国「ネバーランド」のことを、アメリカ大陸を発見した偉人であるコロンブスが、しゃかりきになっても探せない島として表現している。

ーー『銀河鉄道の夜』は宮沢健二の著作ですね。

zopp:その部分は<風がぬけるシーツは騒ぎ出す ベッドはもう汽車になって銀河行きのベルが鳴れば夢は止まらない何処までも>ですね。『銀河鉄道999』にも当てはまるといえます。二つのわかりやすい物語を使って恋愛のプロセスをファンタジックに表現しているのがこの歌の面白いと言えるところです。

ーーちなみにzoppさんが手掛けた作品で、引喩法を使ったものをいくつか教えてください。

zopp:まずはNEWSの「サヤエンドウ」を挙げて説明します。この曲は映画『ONE PIECE THE MOVIE カラクリ城のメカ巨兵』の主題歌で、同作や』『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの海賊系を意識しつつ、ただメンバーが海賊になって冒険に出るというのにはピンとこなかったので、子供たち目線で「もしも自分たちが麦わら海賊団に入ったら…」という物語を作ろうと思ったものです。あとは、『ロミオとジュリエット』が好きなこともあり、同じNEWSの「ベサメ・ムーチョ~狂おしいボレロ~」やジャニーズWESTの「Criminal」といったものも書いています。男女の許されない恋や、強引に2人で逃げ出すものも好きですね。そもそも『ロミオとジュリエット』自体、ギリシャ神話の『ピュラモスとティスベ』からの引喩だったりするのですが。

ーー今も昔も物語の表現技法はさほど変わらないということですね。

zopp:結局、焼き増しなんですけど、時代背景や出てくるアイテムが違うことで歌詞は変化していくんです。あと、Kis-My-Ft2の「Diamond Honey」は『シンデレラ』をモチーフにしたものですね。仮面舞踏会の中にいる場違いな女の子に一目ぼれするけど、その子が時計を気にし始めてどこかに行くという。これって「もうすぐ12時で終電だから私帰らないと」という情景に似たものがあると思いませんか?

ーー確かにそうですね。ポップソングで「終電」という歌詞はよく見る気がします。

zopp:「終電で帰る女の子」と「12時になる前に城を抜け出すシンデレラ」はドラマチックに引喩しやすいですから(笑)。あと、ドラマチックな物語を作る方法として、「いかに抑制された状況を作るか」というものがあります。魅力的な物語はたいてい主人公やヒロインが抑制されていて、自由を求めて冒険や恋愛をすることが多い。近年は、争いごとの概念が薄くなり、平和に暮らしている人ーー自由な人が多いからこそ、逆に抑制されたものに憧れを抱く人がたくさん居て、そのような歌詞を求めていたりする。でも、同じ歌詞でも、昔の人達は「門限だから帰らないとね」と共感目線で捉えることが多数派だったり、同じ刺さるテーマでも世代ごとに「共感」と「憧れ」が入れ換わってるように思えるんですよね。それは作詞だけじゃなく、舞台やドラマ、映画や音楽にもいえることなのですが。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる