1stアルバム『ハートクチュール』インタビュー
chayが語る葛藤の日々、そして理想のアーティスト像「今まで日本にいない人になりたい」
2012年10月にチョコレートのCMソングに起用された『はじめての気持ち』でメジャーデビューを果たしたchay。その後『テラスハウス』(フジテレビ系)への出演や、2014年には『CanCam』(小学館)の専属モデルとしても活動するなど、幅広い活動を行ってきた彼女が、デビューから2年半を経て、1stアルバム『ハートクチュール』をリリースする。華やかな活動の中には、創作のあり方や、世間の反響に対する葛藤もあり、彼女は悩みながらも自身の理想とするアーティスト像を見出してきたという。実際、本作では洋楽志向をベースに、細部のアレンジまでこだわったポップソングを展開している。今回、デビュー以前から今作のリリースに至るまでの彼女の赤裸々な心境を訊いた。
「もっと自分の事を信じてあげてれば良かった」
——4月15日にリリースされる1stアルバム『ハートクチュール』は、かねてから公言してきた洋楽志向と、日本のポップミュージックの要素がうまくブレンドされたchayさんらしい作品だと感じました。デビューから2年半、『テラスハウス』出演などを経て、ようやくアルバムが完成しましたね。
chay:やっぱりアルバムを目標にしていたので嬉しいです。その間に色んな経験をして、「ついに」というか、「やっとアルバムを出せるんだ」という感じで単純に嬉しいですね。
——これまでのシングル曲も収録しつつ、「全体をストーリーのように聴かせていく」という点はかなり作り込まれていますね。中には「Half Moon」や「nineteen」のようにディープな歌詞もあって、chayさんがこれまで辿ってきたこと、考えてきたことを、赤裸々に書いていると思わせるところがありました。
chay:そうですね。私は「テラスハウス」という番組に出演していたんですけれども、なんかカッコつけていました。自分の弱い部分であったり、恥ずかしい部分であったり、ダメな部分というのを隠さなければいけないし、良く思われなければいけないという風に思っていて。でも良く思われたいと思えば思うほどみんなは離れて行っちゃう……なんでだろうと不思議に思っていました。だけど、「テラスハウス」のメンバーや視聴者からは、たまに垣間見せる素の部分に対して、よっぽどそっちの「まいまい」の方が良いのに、なんでわざわざ格好つけるんだということを、面と向かって言われてたんです。そこで気づけたというか、気にしていたのは自分だけだったんだなと思って。「もっと自分の事を信じてあげてれば良かったなぁ〜」と思って、それがきっかけで歌詞の書き方が全然変わったんです。素直に思ったことだったり、自分のダメな部分だったり、恥ずかしい部分というのも歌にしていきたいと思うようになってからは、結構赤裸々に書いていけるようになったなぁと思います。
——「nineteen」にはどういう背景があるんですか?
chay:「nineteen」は19歳の頃を思い出して書いた曲です。私は小さいころから歌手になることが夢だったのですけど、学校が厳しかったこともあって、オーディションを受けたり、路上ライブをしたり本格的に音楽活動を始めたのは高校を卒業した頃の19歳の時なんです。19歳になるまでは何かひとつのことに対して、ほんとにがむしゃらなったことが本当になかった。勉強もそうですし、何か夢中になることがなくて、これで良いのかなと思ったりして、何か満たされない、という気持ちがあって。でも、音楽を本気でやろうと志してからは、人が変わったかのようにやっていたんです。大学の4年間もずっとそうで、ホントにがむしゃらで。
そのとき通っていた『音楽塾ヴォイス』がすごくスパルタで、「今日これを弾けるようにならなければ帰れない」とか「明日までにギターを弾けるようになって来い」とか、厳しい課題を出してくるところだったんです。今までの自分であったら、「こんなの絶対に弾けるわけない、無理に決まっているじゃん」と思っていました。でも、何百回もずっと同じことを練習していると、ある時ふと弾けるようになって、「なんで弾けなかったんだろう」と感じる経験がすごく多かったんです。何百回もやっている時はほんとに辛いし、もう泣きながら、怒られながらやっているんですけれども、弾けるようになった時の達成感というのは、19の時に初めて味わいました。幸せの価値観って人それぞれですけど、私はそのときに感じた達成感にすごく幸せを感じました。それが、19歳の時だったのです。
——アルバムの中でも重要な曲になっていますよね。
chay:大学3年生になると就活を始めるじゃないですか。みんな就活スーツを着て、企業の説明会に行って。でも、私は茶髪でギターを背負って学校に行くわけですよ。そこで勝手に劣等感であったり、オーディションを受けては落ちまくっていた頃だったので、焦ったりとか、不安になっていました。それから、周りからも反対されていたりして。
——音楽という進路に対して?
chay:そうです、そうです。家族もそうですし、友達も「正気?」「大丈夫?目を覚ましな?」みたいな。でも、私は音楽塾で達成感を感じたからこそ、自信を持っていました。その時の経験があって今があるということを言いたかったんです。
——chayさんの原点がこの曲に凝縮されているんですね。デビューしてからも紆余曲折があったと思いますが、その自信みたいなものはふわっと揺らいじゃったりとか、大丈夫かな私?みたいな、そういう瞬間はありましたか。
chay:ありました。『はじめての気持ち』というシングルで2年半前にデビューしたんですけれども、自分が思っていたようにうまくいかなくて。その後も1年間リリースがなくて、「はじめての気持ち」の次が「テラスハウス」の出演、そして『I am』のリリースでした。リリースの間が1年以上あって、リリースしたいし、リリースするには現実的なところで知名度もなきゃいけないし、簡単にリリースできるものではないので、その1年間というのは、ほんとに悩んでいたし、辛くて泣いていました。どうにかたくさんの人に歌を届けたいし、知ってもらうためにはどうしたら良いかを、ずっと1年間考えて、それが「テラスハウス」への出演だと考えて応募することにしました。その間すごく悩んでいて、「テラスハウス」に応募すること自体も、勇気が必要でした。