石橋凌のブレないメッセージ 彼が“プロテストなラブソング”を歌い続ける理由とは?

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本音をユーモラスに描いた「駄馬のいななき」

 3曲目「駄馬のいななき」は、ご機嫌なグルーヴ感が勇気を与えてくれるナンバーだ。今の日本は、戦後あらゆる事象が効率化して大きくなりすぎたことで、個人ではコントロールできない世界となった。そんなシステム化された世の中では、人間味ある余裕が無くなっていく。そんな世情を憂いながらも、ただの愚痴にはならない石橋の私見がもっとも直球に、そしてユーモラスに表現されているのが本作だ。イントロからテンションがぶちあがる、キャッチーな展開とともに“名もなき駄馬”たちへ勇気を与えてくれる物語に昇華している。

戦後70年に起きた、考えや思いを伝える曲「AFTER'45(英語ヴァージョン)」

 2015年は、戦後70年。このタイミングでのARBのセルフカバー「AFTER'45(英語ヴァージョン)」にはグッとくる。あらためて日本のスタンダードになりうる名曲だと思う。戦後70年となれば、戦争の悲惨な経験などを直接伺える機会は減ってきている。しかし、日本は世界で唯一の被爆国だ。戦争にはNOと言い続けなくてはいけない。「AFTER'45」では直接的ではないが、そんなメッセージを感じ取れるのだ。そもそも日本語版「AFTER'45」も、2011年3月11日を経て、ライブでは歌詞の一部を変えて歌われていた。経済や物理的な復興だけではなく、心の復興を改めて問いたいと言う強い意志が感じられるのだ。

AFTER’45 (English Version) / Ryo Ishibashi(石橋凌)

仲井戸”CHABO”麗市も参加した、鉄壁メンバーによるグルーヴィなカバー曲のライヴ・バージョン

 本作に収録されたライブ音源には、石橋がいつもライブでプレイしているナンバー「Got My Mojo Working」、「Route 66」がピックアップされている。権利関係の処理の問題でDVD/Blu-ray作品『SHOUT of SOUL』に収録出来なかった2曲だ。石橋曰く「映像を観たときに凄いと思ったんですよ。バンドのグルーヴ感が。これを世に出せないのはもったいないなって」。このセッションでは、石橋のサポートをつとめる日本音楽シーン最強メンバー、池畑潤二(Ds)/渡辺圭一(B)/藤井一彦(G)/伊東ミキオ(Key)/梅津和時(Sax)の集結はもちろん、ゲスト・ギタリストとして仲井戸”CHABO”麗市が参加している。「チャボさんが登場すると、空気が豊かになるんですよ」と、石橋は言う。それは彼自身がアルバム『表現者』からテーマのひとつにしている“人間力”へとつながっていく。

 石橋凌の最新作『Neo Retro Music』には、デジタルな時代に忘れがちな生音の深み、こだわりの歌詞メッセージ、テクニカルなプレイながらもゆらぎを感じ、考えるスキマを与えてくれるサウンドが魅力的だ。石橋は自らが生み出した楽曲を、昭和初期の流行歌のように“お茶の間”で口ずさんで欲しいと願っている。ライブを体験すればわかるとおり、石橋のメッセージには一切ブレがなく、風化していない。日常や生活、政治は地続きだ。音楽のチカラを感じられるプロテストなラブソング。魂を焦がすメッセージを歌うことは突飛なことでは無く、当たり前のように世に流れていて欲しい音楽の調べだ。

(文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ/Twitter))

■リリース情報
『Neo Retro Music』
発売:1月28日(水)
価格:2,160円

<収録内容>
1.ヨロコビノウタを!
2.Rock'n Rose
3.駄馬のいななき
4.AFTER'45(英語ヴァージョン)
5.Got My Mojo Working(ライブヴァージョン)
6.Route 66(ライブヴァージョン)

■ライブ情報
『石橋凌ワンマンソロLIVE「Neo Retro Music 2015』
2015年2月21日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
2015年2月27日(金)北海道 ジャスマックプラザ ザナドゥ
2015年3月6日(金)大阪府 BIGCAT
2015年3月7日(土)福岡県 DRUM LOGOS
2015年3月20日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
※池畑潤二〈Ds〉、渡辺圭一〈B〉、藤井一彦〈G〉、伊東ミキオ〈Key〉、梅津和時〈Sax〉が集結。2/27(金)の札幌公演のみ藤井一彦&伊東ミキオによるアコースティック編成。
http://avex.jp/ishibashiryo/live/tour.php?id=1000279

http://avex.jp/ishibashiryo/
https://twitter.com/ryostaff
https://www.facebook.com/pages/石橋凌-Dear-My-Soulmate/155053374570895

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